19話ー目覚め
「ん……あれ、私…?」
ラピスが目を覚ますと、そこは懐かしいギルドの自室だった。
柔らかなベットを軋ませ、ゆっくりとその身を起こす。
「!っう…」
振動が腹部に響き、ラピスは顔を歪めた。
だがそこにあるはずの傷跡はない。
(また、迷惑をかけちゃったな)
ラピスは深くため息をついた。そして、首飾りを握る。
「お母様、私…また制御できなかった。………お母様がいてくれれば、よかったのにな」
とても小さな声で、ラピスは呟いた。
過去の出来事は、どうやっても変えられない。
それが分かっていても、思わずにはいられなかった。
‘もしも’なんて幻想に逃げたって、無意味だと言うことはとうの昔に分かりきっているというのに。
もうこの世界にチカラを持つ者は自分しか存在しないという事実が、ラピスにとってどんなに重いかを知る者はいない。
天から与えられた『宿命』は、ラピスを生かす理由だった。
ドアをノックする音が部屋に響いた。
「…誰?」
ドアの方に目を向け問いかけると、そこから出てきたのはブランシェだった。
「目が覚めたのね……。よかったわ」
「マスター、私」
「あなたの傷を治したのはミアよ。今は依頼でいないけど、今度お礼を伝えたほうがいいわ」
ブランシェはにっこりと笑っているが、その目だけは笑っていない。
(……まずい、かも)
ラピスは知っている。
ブランシェの目が笑っていないときは、とても怒っているときだと。
あの後、結局ブランシェに叱られたラピスはぐったりとしていた。
ブランシェは普段が優しいぶん、怒るととにかくまずい。
相手が何度謝ろうと、耳を貸さなくなってしまう。
「大丈夫か?マスターの怒鳴り声がこっちまで聞こえてたぞ」
いつのまにか近くにいたカイルに向け、青ざめながらふるふると首を振るラピス。
そんなラピスに、周囲は生暖かい視線を向けていた。




