17話ー“よぎる”
※残酷描写ありです。
「あなた達が、学園を襲った魔族?」
「学園?オレ達は襲ったつもりはねぇけど?」
漆黒の髪をした男は嘲るようにそう答えた。
拳を強く握ったラピスに、男は笑みを浮かべる。
「これが“生き残りの姫”なぁ?何でまだ生きてたんだか。あの一族は皆殺しにしたんじゃなかったのか?」
「そう思っていたんですがねぇ、この娘がどうやって生き残ったのかは知りませんが…。獲物自ら殺されにくるとは、愚かなも」
キィンッ
刹那、ラピスの刀と紅髪の男のナイフが火花を散らす。
衝撃に身を任せ、二人は互いに後方へ跳んだ。
「話は最後まで聞くのが礼儀だと思いますよ?」
「………殺されるのはあなた達の方。私、あまり気が長くないの。それに私、魔族への礼儀なんて持ち合わせてない」
ラピスは殺気のこもった瞳で、男を睨んだ。
「俺を、忘れんじゃねぇよぉ!シェイリルぅ!!___ぐっ」
殴りかかってきた黒髪の男の鳩尾に、ラピスは回し蹴りを叩き込む。
疾風迅雷の勢いで、蒼銀が動いた。
刀が肉を引き裂く音が、嫌に大きく響く
返り血に濡れたラピスが刀を一振りし、それを鞘に納める
______ぼとり
黒髪の男の首があるべき場所から地面に落ちる。
転がったソレは、数秒も経たないうちに大きな血溜まりをつくった。
「流石、シェイリルの姫ですね」
紅髪の男が満足そうにラピスを見た。
仲間であるはずの男が絶命したというのに、全く動じない。
「っあなたは……何?」
「見れば分かるじゃないですか、魔族ですよ?」
ニタリと嗤う男にラピスは『恐怖』を感じ、一歩後ずさる。
「あなたは、普通の魔族じゃ、ない」
_____ゾクリ
「っがあぁ」
まるで何かに縛られたように体が動かせなくなったラピスを、激痛が襲った。
ドク・・・・ドク・・・
(何時ぶりだったっけ?こんな風になったの……?)
不思議と冷静になる。
ふと、過去の出来事が脳裏をよぎる。
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「なんで……?師匠」
自身の腹から溢れ出る血を見つめ、少女は血塗れた刀を握る師に問いかけた。
師からは何の反応もなく、その瞳も虚ろだ。
その姿も、徐々に異形へ変わりつつある。
黒く硬いウロコが肌を覆い、眼はもとの黒色から金色へと変色していた。
そこに師の面影は、もう残っていなかった。
(師匠、…師匠っ!!)
少女の首をめがけて、刀が振り下ろされる。
「いやああああぁぁぁぁぁ!!」
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(……ああ、そっか。あの時と、同じ)
ラピスは、自分の意識が薄くなっていくのを感じた。
「もう終わりですか。案外、呆気ないものです…ね?」
紅髪の男が一歩前へでたときだった。
ラピスがゆらり、と立ち上がったのだ。
その背には蒼白の光が集まってできた、翼が広げられていた。
「!?…これはっ」
_______カチンッ
刀が納められた音が、辺りに響いた。
ラピスは電源が切れてしまったかのように倒れ、もうその背には翼も無かった。
そこに残されたのは、ラピスと魔族であったモノの残骸だけだった。




