14話ー“私”を知る、唯一の人
白を基調とした家具の置かれている、ギルドの一室。
そこに、ラピスとブランシェはいた。
二人はテーブルを挟み、向かい合って座っている。
「『望むはこの場と周囲との隔絶 遮断』」
ブランシェが唱えると同時に、部屋全体が透明な膜に覆われた。
「さ、これで大丈夫よ。ラピスはもちろん知ってるわよね?魔族が学園を襲ったこと」
その言葉に、ラピスは強く頷く。
「うん。詳しくは知らないけど」
「まぁ、生徒にはなるべく知らせたくはなかったでしょうから。ラピスがあまり知らないのも無理はないわ。…あと、今日伝えようと思ったのは私達ギルドマスターと、帝国の上層部しか知らないことよ」
「やっぱりあっちは気づいてるの?……“私”に」
ラピスははっきりとした声で、ブランシェに問いかけた。
それに対して、ブランシェは意を決したようにラピスを見つめ、答える。
「____“シェイリルの姫は何処にいる”って、教師を脅しながら尋ねたと。リクがここに来ていたのは、それを伝えるため」
ラピスの手は、小さく震えていた。
だがそれは、『怯え』ではなく、確かな『怒り』と『憎しみ』で構築されたものだった。
『愛しい故郷』と『家族』を壊され、独り残された少女のその感情を、誰が知ることができたのだろうか?
『尊敬する師』と出会ったにも関わらず、紡がれるはずだった『幸せ』を自分の手で絶たされた少女を、『本当の意味』で救える者はいるのだろうか?
『宿命』と『喪ったモノ』を背負い生きる少女に、その心に触れる者など、存在しないのだろうか?
今、少女の前にある『幸せ』。
それが他人には当たり前であっても、少女にとっては『かけがえのないモノ』であるという事実が変わることなど、永遠に訪れないのだろう。
(私は…今度こそ、この『幸せ』を守ってみせる……!!)
『喪うくらいなら、いらない』と、何度も思った。
それでもヒトの手を取ってしまうのは、『孤独』こそが絶望だと知ってしまったから。
それでも守ろうと足掻くのは、ぬくもりの尊さを知っているから。
それでも生きるのは、『自分にしか果たせない宿命』を背負う義務があるから。
『死』を何もせずに受け入れることなど、決して赦されない。
孤独に生きている少女を突き動かしているのは、たったそれだけだった。
そして今、握り込まれている華奢な拳には紅い血が滲んでいた。




