10話ー噂の彼女
『1年のAクラスに刀使いの天才がいる』
学園内にその噂が流れ出すのに、時間はかからなかった。
事の発端は、二日前に行われたSクラスとAクラスの合同訓練。
結果としてAクラスは負けたが、Sクラスに勝った生徒は7人もいた。
その中でも一瞬で相手を沈めたのは2人。
1人はジン・スノウウェル。
彼は中等部の頃からこの学園にはいっていたため、その実力は有名であった。
周囲からは何故Sクラスではないのか、と言われ続けているほどだ。
その理由は、「必要であるはずの冷静さを持っていない」という簡単なものだが。
2人目はこの春に入学した女子生徒。名は______
「ラピスッ、おはよ!」
「えっと…おはよう?」
いきなり抱きついてきたリィルに、ラピスは驚きを隠せない。
「なんで疑問系なの、ラピス?」
「機嫌いいな、と思って」
「当たり前よ!私もラピスもAクラスに勝てたんだもの」
「そんなにすごいことなの?……たったあれだけなのに」
"普通"の基準自体がリィルたち生徒と違うラピスにとって、それはほんのささいな事でしかなかった。
_____普通なら、下克上を果たすという快挙なのだが。
高等部から入った生徒が内部生である生徒に勝つこと自体、ほとんどないのだ。
なのにあの合同訓練ではSクラスに勝った7人のうち、4人が外部生。
今年のAクラスは例年に比べ、異常なのだ。
ラピスとリィルが廊下を歩いているだけで、周囲の生徒たちはざわめく。
(そんなに、珍しいのかな?)
自分に視線が集まっていることに、ラピスは落ち着けない。
「_____あれが、‘生き残りの姫’か…」
黒衣を纏った人物は、そう呟くと闇の中に消えていった




