9話ー一瞬
(…早く、私の番にならないかな?)
刀を握り締めて、ラピスは思った。
というのも、この三日間ラピスは刀を使っていなかったからだ。
師に拾われてから8年間、刀を使わない日なんてなかった。
ギルドに入れてもらってからは毎日依頼に追われていたし、依頼も討伐のものがほとんどだった。
自分の半身といっても過言ではないものから離れていたのだ。
「次、ラピス・レインとアルフ・ベルティマー」
名を呼ばれると同時に、ラピスの瞳が爛々と輝いた。
_____微かな笑みを浮かべながら。
「ねぇ、君。ひとつ賭けをしないか?」
Sクラスの男子生徒___アルフがラピスに話しかけた。
「何をかけるの…?」
アルフをまっすぐに見つめ、ラピスは問い返す。
それは肯定のサイン。
アルフはニヤリと笑みを浮かべ、
「僕が勝ったら、君の刀を貰う。もし君が勝ったなら、僕の刀を君に。
どうだ?」
ラピスはコクリと頷いた。
「…でも、あなたの刀はいらない。私はこの刀があれば、それで十分」
明らかに相手に見下されているという事実に、ラピスはいらつきながらも答えた。
「…いいのか?レイン」
一部始終を見ていた教師に問われるが、ラピスは頷いただけだった。
教師は戸惑いながらも、試合開始の合図を送った。
______トンッ..ドサッ
一瞬の出来事に誰もが目を見開いた。
倒れたのは、Sクラスのアルフ。
刀を抜いてもいないラピスはつまらなそうにアルフを見下ろしていた。
あっけにとられ、その場にいた者たちはラピスを見つめた。
何をしたのかも、その者たちには見えていなかった。
その中で、呆然とする生徒がひとり。
ジン・スノウウェルだ。
(ただ、殴っただけだと…!?)
魔術で動体視力を上げていた彼だけは、見えていた。
____ラピスが鞘に納まったままの刀でアルフの首を殴りつけたのが。
(この人も所詮、口だけ)
終了の合図を受けたラピスは、踵を返した。




