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第8話「腹ペコ猫vsオタク事件・1」

ハルの商館がある街から、ホテルがある都市の駅へ戻ってきた。


午前中は重かったリュックも、お土産のうどんと出汁を渡してきたので、今は軽いものだ。


日は、とっくに暮れている。


駅前は、会社帰りのサラリーマンや、待ち合わせをしている若い集団などで人が多い。


ふと気づくと、昼ご飯を食べていなかった。

ようやく空腹を思い出す。


クロエからは、ホテルのレストランを好きなだけ使ってくれていいと言われている。

だが、せっかくの旅先だ。


何か気の利いた店がないか、少し歩いてみよう。

繁華街はどの辺りだろうか。


駅舎近くにある交番横に、街の地図が見える。

そちらへ向かおうとすると、誰かが近づいてくる気配がした。


「バ、バネッサ、さん」


――I LOVE MADO-GU


白いTシャツに、赤い文字でそう書いてある。


色の抜けたデニムパンツ。

ごついスニーカー。


視線を上げると、テツの顔があった。


「ご、ご無沙汰です」


テツは、パトラの相方である戦闘特化型の採取師だ。


普段は口数も少なく、仕事ぶりは真面目。

クロエ商会の若手の中では評価も高い。


前回の事件の際には、パトラと共にバネッサを手助けしてくれた仲である。


「テツさん、お久しぶりです。どうしました、こんな場所で」

「ずっと待ってました」

「は?」

「そろそろ戻るだろうと」

「きもっ」

「ち、違う」

「何が違うんです。女性の帰りを駅で待ち伏せとか」

「え?」

「え、じゃないですよ。なんなんですか」

「いや、そうではなくて。聞いてください」


テツは、駅前ロータリーの雑踏の中、いきなり九十度に腰を折った。


そして、叫んだ。


「お願いです! 俺を男にしてください!」

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