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点景「テツと奥魔会」

数週間前。


テツは内心ウキウキで、いつもの居酒屋に入った。


奥羽魔道具同好会おううまどうぐどうこうかい

略して、奥魔会おうまかい


魔道具を愛する東北の転生者たちが、年齢、職業の垣根を越えて集まった、同好の士の集まりである。


定期的に集まり、好きな職人の話をしたり、独自の魔道具分類理論を論じたり、新たに入手した魔道具を見せ合ったりする。


二週に一度の「おとなの魔会」は、何のことはない。

魔道具を肴に酒を飲む集まりだ。


――今日は俺の日だ。


テツは、胸元に忍ばせている新しい魔道具――センサーに意識を向ける。


採取師の大先輩であるハコネさんが、戦闘特化の試験に合格したら格安で譲ってくれると言ってくれてから、七年。


ようやく手に入れたのだ。


「よく頑張ったな」


ハコネさんは笑っていたけれど、絶対に損をしている。

それでも約束通り、破格の値段で譲ってくれた。


このセンサーは、俺の勲章なんだ。


――みんな、羨ましがるだろうなあ。


あえて無表情を装い、大きな個室のふすまを開ける。


「あああ、テツ殿! 待ってましたぞ!」

「例のセンサー、手に入れたって本当か?」

「見せてくれ、頼む。死ぬまでに一度、実物を見たかったんじゃ」


――これこれ。


――この反応を待ってたんだよ。


――気持ちいい……。


「まあ、みなさん。待って、待って。まずは一杯飲ませてくださいよ」


冷静を装い、席に着いてビールを注文する。


「テツ殿、焦らさないでくだされ」

「性能は? 性能はどうなんだ。オーバーホールしたのかよ」

「てっちゃん、早ようしろ。じじい、死んでしまうぞ」


「ふっ。仕方ないですねえ」


テツは胸元から、自慢のセンサーを取り出した。


おおぉ、と室内に感嘆の声が上がる。


見せて。

見せて。

触らせて。


そう騒ぐ仲間たちに、テツは「どうぞ」と手渡した。


俺も、私も、ワシも。


わちゃわちゃしている仲間たちを、テツは冷静を装って横目で見ながら、ビールを飲む。


――分かる。


――分かるよ、みんな。


――羨ましいよね。


――苦労して手に入れた甲斐があったよ。



その時だった。


ふすまが、パーンと開いた。


振り向く魔道具オタクたち。


そこには、半年前に見習いから商人になったルリルリ先輩――あだ名――が、大きなリュックを背負って立っていた。


「ただいま九州から戻りました! 皆さん、これ見てください!」


ルリルリ先輩は、リュックから大事そうに包みを取り出した。


「二代目シグマ先生の幻の処女作、シグマ二式の静穏――音響遮断装置――です!」


なんだって。


誰かが叫んだ。


次の瞬間、魔道具オタクたちがルリルリ先輩のもとへ殺到する。


「本物か!?」

「シグマ二式ですって、嘘でしょう!?」

「シグ二の静穏って、現存してたのかよ!」

「ルリルリ殿、はやく動かしてくだされ!」


ありがとうな。

そう言って、老人がテツにセンサーをそっと返した。

そして、いそいそとルリルリ先輩の輪に加わっていく。


テツは、両手を握りしめた。


ルリルリ先輩。


なんで。


なんで、今日戻ってきたんだよ。

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