旅ログ in博多1 もつ鍋
「はーなんとかなったね!チェックイン」
「いきなり言われたときは焦りましたよ。なんとかなってよかった!」
「俺まで寝てたら乗り過ごしてたよな?折角特急券買ってたのに、2人とも爆睡だったじゃねえか」
「お疲れ様です〜。カメラ」
「おう。お疲れしてたおまえらの寝顔一応撮っといたけど。要らないなら消してくれ」
「………撮らないのもどうかと思いますが、撮られてたら撮られてたでゾワっとしました」
「どうすりゃいいんだよ!俺は!」
男女で部屋を分けて、部屋の前で一つやりとり。
ここに来るまでに特急券買ったはいいけど、チョッキ以外は爆睡してて、小倉の駅を乗り過ごしそうになっていた。
「あ、チョッキくん。メイクおとすのヤだから大浴場行くの、モツ鍋食べてからね」
「ん、んじゃまたあとで」
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野郎の面白くもない荷物置いて、軽く休憩するターンは割愛。別に普通だ。
荷物置いて、備えつけの緑茶のんで集合時間を待つだけ。疲れてはいるので女子部屋に凸とかはない。
女子部屋
「先輩!おつっかれ!様でした!」
「マナちゃんこそ〜!動画どう、良い感じ?」
「確認しますね〜」
気を使って写してない時間もあるが4時間以上データがあったので、5倍速。
3割くらいチョッキ先輩のウンチクターンなのでキャルキャル喋っていて面白い。
ざっと流した感じだと、チョッキ先輩の仕事は完璧。
すごいな。あの人。本人の前では言ってあげないけど。
仕方がないが透明人間がキャルキャル喋る編集を加えてあげよう。
と、無駄な編集を脳内タスクリストにいれる。
「あの人、煩悩ないんですか?男が喜びそうなカット全然撮ってないんです」
「うっそ!舐め回すようなアングルのシーンゼロ?」
「勿体ないくらいに!」
「仕事人だねぇ。たぶんバイトかなんかでカメラマンの助手でもしてたんじゃないかな」
と他愛ないターンは変わらずだ。
「はー、しかしまあ暑いね!部屋着着替えちゃおう」
「カエ先輩の部屋着…、響きがエッチ。ネグリジェとかですか」
「オッサンか!アンタは。普通だよ!ふつう」
バンドティーに半パンだ。ハンチング帽付き。
オーバーサイズで半パンが隠れてて彼Tみたいでエッチと喉元まで出かかったがやめる。機嫌を損ねても良くないし。
マナもカエを見習って部屋着へ。
風呂入ったあとの浴衣も楽しみにしているので、カエよりも軽装。
ジャージの下にノースリーブTシャツ。
ダンスを習ってそうとか言われそうな動きやすい感じ。
「ほとんど夏だからオシャレもしんどいね!」
「ホントです。」
2人とも服好きなので、冬場みたいにアウターやブーツなどの重ね着ファッションが出来ないので惜しんでいる。
ちなみにさっきまでの旅行1日目コーデとしては、カエはスニーカー+スキニーを大きめのポンチョで隠すスタイル。
マナは薄手のパーカーにベルトを強調させたシンプルなジーンズのコーディネート。
「チョッキくんは……、一回古着屋とかで改造したほうがいいね。」
「なんで男って黒に染まるんでしょうね。服って個性出せる良いモノなのに」
「似合わない〜!とか僕には難しいです〜とか、じゃないんだよね!」
「さっすが!もっと言って良いですか?場所をわきまえて好きなものを着るのがファッションと思うんです。」
「ね。学校内で1番長いスカート履いて、場所云々に同意するのはアレかとおもうけど」
「カエ先輩はカエ先輩ですし!オンリーワンですよ?大丈夫です」
何が大丈夫なのか全くわからないが、後輩のヨイショに適当に同意しておく。
備え付けの時計の音がわかるくらいの静寂。
疲労がきた。寝てしまいたい。
「後で集合って言ったけど、暇だからチョッキくんにかまいに行ってくる。ロビーで会おう!」
「いきなりですね。疲労も限界なので行ってきてください。予約この時間ですよね」
合槌で交代。
勝手に男は割愛とか言ってサボってる奴のターンだ。
「茶ぁすすっとるやん!」
「ふつうだろ。ビジネスホテルなんぞそれしかすることねえし」
「あまりにも普通すぎて。大声だしてみた」
ケータイイジイジ。お茶を啜っている一つ上。
何にも無さすぎる。
「ラブなコメディ要素。足してみない?」
とりあえず何も考えずに提案。セクハラのない乾いた男へのご褒美というやつだ。
「労いな。ほれ」
ガン無視はマイナス。
だが、チョッキくんから一つプレゼント。さっきの門司港の商業施設の袋を一つ。
マグカップだ。お湯入れたら絵柄が浮くタイプの。
門司港のはね橋が下がってるのから上がっていく。
「………男のロマンだね」
「文句あるなら返せよ?部室の湯呑みにするから」
「おー!ラブコメの波動!やるね、チョッキくん。ツ・ン・デ・レさん」
「イジるなら返せよ!」
「やです〜、私が思い出として部室の湯呑みにするんです」
別にガン無視されたわけでは無さそうだ。
セクハラでのラブコメを予想していたカエとしては、チョッキ株が少し上がる。
「そろそろ鍋食べに行こっか」
2人きりだと、ラブコメマシで鍋食べる前からお腹いっぱいになりそうだ。
「またカメラ持たされるのか?俺」
「なんもきいてなーい!」
そろそろロビーに向かうとマナに連絡
お互いの部屋の前にてばったりマナと合流。
めちゃくちゃ目で何ですか?この空気とチョッキに訴える。
照れもあり、チョッキは見ていないフリ。
渡したお土産を戻しに行くとカエが少し自室へ。
「ただのグダグダご飯旅行がラブコメになってどうするんですか!!!!!!」
「メタいな!おまえ!!」
「もう知りませんからね、百合っ百合のてえてえ夜の浴場シーンでカエ先輩メロメロにしますから!」
「ならないよ。メロメロに。気持ちが嬉しかっただけでセンスは無難でアレだなって思ったし」
戻ってきたカエはマナに釘を刺しておく。
ちょっと浮かれすぎた。
「さあ気を取り直して、いざ。もつ鍋へ」
博多の街並みはほとんどはザ・都会。
広い駅構内もあったし、歩いているところもコンクリートジャングル。
それでも、三人はもうすぐ食べるもつ鍋へ期待を膨らませ歩いていた。
「実は俺、もつ鍋はじめて食べるんだよな」
「バイトマンなら鍋も関わったことあるんじゃないです」
「しゃぶしゃぶとかの店は多いけど、もつ鍋は近所になかった」
「そっかー!もうね、期待してていいよ」
「ていうと?」
「モツがプリンと甘くて、かみごたえもしっかりあって〜、で、程よいお汁のピリ辛の風味がよく合ってて」
「今回行くのもピリ辛系ですか?先輩」
「朝・昼とあっさりだったでしょ。チョッキくんに寄り添おうと思ってガツンと行くよ」
「期待しとくか。そっからは行ってからのお楽しみにさせてくれ」
「いいよ〜、というか、カメラオフなんだね」
「雑音編集するのも面倒ですし。そろそろ食べ物系をずっとブイログ風も寂しいので私にだけお店教えてもらっていいですか?撮影許可とりたいです」
「いいよ〜、メッセージで送っておくね」
またカメラ係は確定だろうなとチョッキは思う。
撮影とかの気遣いは大変なんだろうなと思いながら、街の風景を楽しむ。
「お、一幸舎。」「知ってる店?」
「ラーメン好きならわりかし有名だと思うぞ。」
「明日の朝行く」
「良いな。腹壊したりとか大丈夫か?」
「そこに美味いモノがあるなら食べるでしょ。旅行だぜ。チョッキくん」
「それもそうか」
その後もマナの電話がおわるまであーだこーだ喋りながらビル群を進んで行く。
「…はい!完全個室の中でならOKなんですね。ありがとうございます!」
「お」
「喜んでください!カメラ係続投です。」
「ちゃんと食わせてくれ。頼むから」
「グルメ番組みたいに一口二口食べたら、編集点作るから大丈夫です!シメを入れる瞬間とかはまたお願いするかもですけど」
ゆるーい会話が続く。
話しながら歩くと、少しメイン通りからはずれて、薄暗い雰囲気の中に古い暖簾。
「いいね。いいね。ここです!マナちゃん、チョッキくん」
「個室の中でならオッケーって言ってましたけど。あるんですかね?」
チョッキならまず候補から外すだろうと思う、これでまずかったら嘘だと思う年季の入った佇まい。
焼肉屋と兼ねてやっているみたいだ。換気扇越しに肉の焼ける匂いが食欲をそそる
大きくないカウンターに一口ガスコンロがあるタイプのお店。俺たちが通されたのは扉がある奥座敷のテーブル。
マナが撮影したいからと無理をいったので計らってくれたのだろう。
「緊張しますね、流石に」
「?」
「高校生が夜更かししてみんなでご飯ですよ」
可愛いこと言うな。この後輩。
学校に内緒でクラブとか行ってそうな見た目してるのに。
「なんですか!?ポカンと!!」
「いや、今までなかったのかと思ってな。」
「学校の先輩後輩の間柄では初ですよ?クラスの奴行かなかったですし」
「「あーー」」チョッキとカエ声を合わせて頷く。
「失礼なこと考えてますよね!?」
「そんなことはない。おまえの信じる俺を信じろ」
「じゃあ有罪で」
「そんな有罪のチョッキくんにはドリンク代出してもらおっかな」
「腑に落ちねえ」
全員分の飲み物を注文し、カエが本命の鍋と待っている間に馬刺しと馬肉ユッケを注文している。
「高校生なのに馬刺しってまた渋いですね。先輩」
と、後輩が写メを撮りながら
「有名なんだよ〜、主に熊本だけどね」
「アレだな。ここまで行くと飲み物をアルコール入りにしたい感じだな」
「高2、2回目さん!?未成年飲酒はやめとこ、チョッキくん」
「そうですよ。部活の活動祝いとして出てますし、TPOを考えましょ」
「………好奇心湧かねえの?」
「「興味だけ!!!!!!!!」」
らしい。当たり前だが。
チョッキのトンデモ発言のせいで2人の箸がとまった。
「んま!!すごいね、嫌な匂いもないし、かつ肉の甘みが濃厚だ」
生姜醤油と相性よく、ふわっと抜ける生姜の風味と馬肉特有の弾力が絶品だ。
「??これが普通じゃないんですか?」
「回数食べたことないけど、私たちの地元ではまあ食べれないよ。今まで食べてきた中でもダントツ」
ユッケの方はガッツリ混ぜてしっかりとタレと絡める。注文者の特権と言わんばかりにカエは大葉にくるんで食べる。
「…全部たべていい?」
「良いわけないじゃないですか!」
「大葉の特権あげたんだから分け合えよ」
卵の黄身とタレとの絡み具合がまた絶妙で、馬刺しとはまた違う食べた時の楽しさがカエの欲望を忠実にさせる。この小鉢一つじゃあまあ足りない。
食欲を掻き立てられて、どんどん来ていない鍋への期待のボルテージがあがっていく。
「お嬢ちゃん等、美味しそうに食べてくれるね。観光?」
「そうです!めちゃくちゃ美味しい」
鍋を持ったお店の人が声をかけてくれる。
山盛りのニラにキャベツ。
にんにく味噌仕立ての出汁。んでもって、よく見るマルチョウだけでなくコリコリやハチノスなどのホルモンまで入っている。
「すごーー」
「語彙力どっかいってますよ」
「やばくない?すごいよ」
「下の出汁が沸騰して野菜が浸かった頃が食べ頃だからな」
カエの死んだ語彙力と食欲にささる匂いで
「ご飯ください」と無意識にチョッキは言ってしまう。
「え、チョッキ先輩、シメはべつにたべますよ?」
「ワンバウンドして染み出した出汁とかレンゲで出汁すくってコメを溶かして食うと絶対美味いだろ!」
「……食欲ありますね。」
「店員さーん!わたしも〜大盛りで」
「二つね。待っててな、出来る頃には持ってくる」
アレだけ食ったのにまだ食うかの目つきで、マナはつい先輩2人をジト目でみてしまう。
「マナちゃん、絶対美味いから。チョッキくんが言ってた食べ方で一口あげるね」
「ハイ…」
伝票をチラリ。
鍋は三人なのに四人前頼んでいた。
サブメニューも食べながらよく入るなと思いながら、2人にとられまいと馬刺しやユッケを食べる。
ちょうど馬刺しとかを食べ終わったタイミングで、鍋奉行をしているカエからゴーサインが出た。
少しクタクタになったキャベツやシナシナ感がさほど感じられないニラ。モツをすくって自分の取り皿へイン。
仕事をしているチョッキ先輩はともかく、ゴーサイン出したカエ先輩はご飯に出汁をかけて、レンゲにモツと一緒にかっこんで、唸っている。
食わせろと目で訴える先輩の目が痛い。
が、見ないふりをして、モツとキャベツを箸で掴み、口に入れる。
ガツンとにんにく出汁の辛みが来た後に、幸せを感じるゴロっと甘く弾力のあるモツの脂がそれをつつむ。
そんな味の輪郭を甘くなったキャベツが鍋の濃さを少しマイルドにしてくれる。
しばらく無言になる。ニラを多めで食べると女の自分では、キャベツとはまた違うニラの角だった味が違う風合いにしてくれる。
そろそろ可哀想なので、チョッキ先輩を解放してあげる。
「お前らな…。マナに至っては食レポ忘れてるし」
「あ、でも本気で美味しい時って黙りませんか?」
「もう1人黙ってる奴いるから分かるけど。」
「?チョッキくんなくなるよ」
「………」
ここからは女のことは気を使わない。
ハンデ分ガッツリ食うと心の中でチョッキは決心し、取り皿いっぱいに入れて豪快に頬張る。
……本当にコレ女セレクトかと疑問になるチョッキ好みのコッテリとした出汁のクセ。
予想通りご飯が合う。そして、一気に食える。
良い素材特有の野菜の甘すぎる感じではなく、出汁に合う野菜。
モツのゴロっと感と脂臭さのない鍋の味の両立。
完璧だとチョッキは思う。初めて食うけどこの味は店選ばないとないんだろうなと直感
三人が三人黙り込んでひたすら味に集中。
鍋の醍醐味はワイワイ盛り上がれる事だとマナは思っていたが、味に没頭している先輩2人の前では箸を進めるしかなかった。
そんなペースで食べるとあっという間に鍋は無くなる。
「ふう…、行っちゃう?焼肉」
「ハツとハラミ行きてえな」
「シメ!!うどんで行きましょう!」
カエはメニューを見直す。
端っこの方に魅力的な文字を発見する
『焼き肉煮込みうどん。鍋にする場合+一人前あたり1000円』
言葉はいらない目と指差しだけで、他の部員に確認をとる。もちろん三人前だ。
ここでお腹いっぱいって言ってたしとか変な気を使って、2とかにするとマナに一生恨まれそうだし。
鍋ごと一度下げられて、しばらく各々で味の余韻に浸る。
共有とかは無しだ。そうしていると確実にさっき入れたであろうハラミや赤みを中心とした肉と、十分ほぐれで美味しそうになったうどんが登場する。
もうマナも面倒が勝ったのか、撮影もなしに三人分取り分けて、麺を啜る。
三人とも声を揃えてうまっと呟く。
焼いた肉のおかげで、くどすぎないが脂のてりてりが残った出汁がうどんと絡んで絶品だ。
備え付けの七味唐辛子との相性も抜群。
ふわっと山椒の香りと肉のおかげで邪魔をしない唐辛子とのマッチがクセになる。
これもあっという間。
味の余韻を壊したくないので、休憩をして会計を済ませる。高校生の懐的には高かったが、最高だった。
堰を切ったようにお店を出てからホテルに帰るまでは味の共有をし、笑いながらひたすら話し続けた。




