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日々の生活に疲れた45歳が異世界で若返り、第二の人生をまったり満喫する♪はずっだったが、色々ほっとけない!   作者: 夢叶


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70 三人で留守番 何する?


食事が一段落したところで、クロが静かに口を開いた。


「とりあえず、明日の朝から隠密で村や集落の情報を集める。俺とルドで手分けして回ってくる」


「あぁ、そっちの方が早いしな」


ルドが空になった器を置きながら頷く。


「お前たちはここで待っていてくれ。野営地は、なるべく人目につかない場所に移しておく。万が一誰かが来ても、無理に相手をせず、やり過ごすんだ」


クロの言葉に、私は小さく頷いた。留守番ばかりで少し歯がゆいけれど、ここで無理に動いても足手まといになるだけだ。


「分かった。気をつけてね」


「あぁ」


 アギトも深く頭を下げる。


「……お手数をおかけします。どうか、よろしくお願いします」


「気にすんな。こっちも、ついでに調べときたいことがあるだけだ」


ルドがぶっきらぼうにそう言って、わざとらしく視線を逸らした。それが照れ隠しだと、もうすっかり分かっている。

焚火の炎が小さくなる頃、ロトはアギトの膝の上で、すうすうと寝息を立て始めていた。





翌朝、クロとルドは、まだ薄暗いうちに調査へと出かけていった。二人の背中が森の向こうに消えると、野営地には急に静けさが戻ってきた。鳥のさえずりと、焚火の残り火が小さく爆ぜる音だけが響く。


「さて……」

私は両手を腰に当てて、残った二人を見回した。


「何して時間を潰そうか」


アギトの怪我は、もうほとんど治っていて、動きにも支障はなさそうだ。

残された私たちは、顔を見合わせる。何か手伝おうにも、野営地の片付けはすでに済んでいるし、馬の世話も、朝のうちに終えてしまっていた。


(そういえば……)


ふと、あることを思い出す。道中でクロとルドが倒した鳥系の魔物が、全部で五羽。血抜きだけ済ませて、収納鞄に入れたままになっていたのだ。鳥と言っても、その大きさは、どれも大人一人分はある。


私はルドが置いていった収納鞄から、鳥の魔物を一羽ずつ取り出し、地面に敷いた布の上に並べていく。


「これだけの量、なかなか壮観ですね」


五羽並ぶと、アギトが思わず声を漏らした。


「羽をむしるの、お願いしてもいい? この羽、布団の材料にしたいの」


「布団……ですか」


「うん。ふかふかになるから」


今はまだ必要ないけれど、これから寒い冬になる。この地域はどれだけ寒くなるかは分からないけれど、作っておいて損はないだろう。

アギトは少し驚いた顔をしたものの、すぐに頷いてロトと並んで座り込んだ。


「ロト、羽は優しく、根元から抜くんだぞ」


「……うん」


二人が黙々と羽をむしり始める傍らで、私はマイハウスから持ち出した布を広げる。布団カバーは、二人の体格に合わせて少し大きめに。二枚重ねにして縁を縫い合わせ、羽毛が飛び出さないよう、目は細かく刻んでいく。生活魔法の補助のおかげで、針はするすると進み、二人が羽をむしっている間に、二枚のカバーが仕上がった。


けれど、羽の山はまだ半分ほど。中身を詰めるには、もう少し時間がかかりそうだ。


(……手持ち無沙汰になっちゃったな)


待っている間に、丸めて持ち運べる収納袋を作る。余った丈夫な布を裁ち、布団を丸めて入れられる、細長い袋を二つ縫い上げていく。口は紐で絞れるようにして、肩に掛けられる紐も付けておいた。


「……これは?」


アギトが手を止めて、不思議そうにこちらを覗き込む。


「布団を入れる袋。羽毛布団、そのままだとかさばるから」


「そんなのまで……」


感心したように呟くアギトの横で、ロトも羽をむしる手を止めて、じっとこちらを見つめていた。


「あとちょっとだね。むしった羽が溜まったら、クリーンをかけて詰めていくよ」


そう声をかけると、二人は再び羽をむしる作業に戻った。


やがて、最後の一羽の羽をむしり終えた。足元には、ふわふわとした羽の山がいくつもできている。


「お疲れさま。二人とも、手が真っ白だよ」


笑いながら声をかけると、ロトは自分の手のひらを見つめて、小さく目を丸くした。細かな羽毛が、指の間にまで入り込んでいる。


「じゃあ、仕上げをしようか。『クリーン』」


 羽の山に向けて魔法をかけると、汚れも匂いも抜けて、真っ白でふかふかの羽毛へと生まれ変わった。それを両手ですくい、先ほど縫い上げたカバーの中へ、少しずつ詰めていく。口を閉じ、均等に広げ、縫い目を丁寧に整えた。


「……できた」


二枚の羽毛布団が、ふっくらと膨らんで並んでいる。指で押すと、ふわりと沈み、すぐに元の形へ戻った。出来上がった布団を丸め、先ほど作った布団袋の中へ、しっかりと収めていく。口紐を絞って、肩に掛けられるように紐を調整した。


「はい、これ。二人の分」


袋を差し出すと、アギトは両手で受け取りながら、驚いたように目を見開いた。


「こんな立派なものを……本当に、いいのですか」


「うん。寒くなったら使ってね。夜は冷えるし、風邪をひいたら大変だから」


あっけらかんと言うと、アギトは少しの間、言葉を探すように袋を見つめていた。それから、深く、深く頭を下げる。


「……ありがとうございます。大切に使います」


その隣で、ロトが自分の袋をぎゅっと抱きしめていた。まだ言葉は少ない。それでも、小さな腕に込められた力が、何よりの返事だった。


羽をむしり終えた鳥のうち、一羽だけを残し、あとの四羽はルドの収納鞄へと戻しておいた。残した一羽は、夜ご飯のためのものだ。


「ひと仕事したし、ちょっと休憩しようか」


そう声をかけて、パンと果物を取り出す。ロトは果物を両手で持ち、かぶりつくように食べていた。羽をむしり続けて、よほどお腹が空いていたらしい。アギトも、パンを静かにちぎりながら口へ運んでいる。


少し休んだあと、私は立ち上がって袖をまくった。


「さて、次は夜ご飯の準備をしよう」


残した一羽を、地面に敷いた布の上へ置く。大人一人分はある大きさだ。さすがに少し気後れしていると、アギトが隣にしゃがみ込んだ。


「解体なら、私がやります。村にいた頃は、毎日のようにやっていましたから」


そう言って、アギトはナイフを手に取った。迷いのない手つきで刃を入れ、関節に沿って肉を切り分けていく。無駄のない動きに、思わず見入ってしまった。


「さすが……」


「いえ、これくらいしかできませんが……」


照れたように笑うアギトの横で、ロトも小さな手で切り分けた肉を受け取り、器に並べていた。

今夜のメニューは、チキンのトマト煮に決めている。ルドの収納鞄に移しておいた食材の中から、トマトと玉ねぎ、それにニンニク、人参とジャガイモを取り出した。鍋に油を引いて、ニンニクをゴロゴロと入れる。一口大に切った鶏肉の表面を焼きつけ香ばしい匂いが立ち上り、ロトが鼻をひくつかせた。


「……いいにおい」


「もうちょっと待ってね。ここからトマトを入れて、じっくり煮込むから」


刻んだトマトと野菜を加え、蓋をして火を弱める。あとは、時間が美味しくしてくれるのを待つだけだ。

鍋の中でことことと音を立てる煮込みを眺めながら、私は空を見上げた。





ルドとクロは、今頃どのあたりにいるのだろうか。








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