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日々の生活に疲れた45歳が異世界で若返り、第二の人生をまったり満喫する♪はずっだったが、色々ほっとけない!   作者: 夢叶


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48 冒険者になる?


獣人の国で冒険者になるのは私には難しいらしい。

出来なくはないが……訳あり女になるか、笑い者になるか……


両方だと思う。

さて、どうするか……


冒険者になれれば、身分証も手に入るし、仕事も受けられる。生活するには一番手っ取り早い。

でも、人族というだけで笑われるような場所へ、自分から飛び込んでいくのも気が重い。


「別に笑われるくらいなら平気だけど……面倒事は嫌なんだよねぇ」


「お前の場合、笑われて終わるとは思えねぇけどな」


ルドがぼそりと呟く。


「……どういう意味?」


「お前、絶対何かやらかすだろ」


クロまで真顔で頷いた。

失礼な二人である。

だが、やらかして余計な注目は集めたくない。


「なら、冒険者以外の方法で身分を作る?」


「あるにはあるが……基本は商人か職人だな。あとは誰かの身元保証を受ける方法もある」


クロが思い出すように答える。


「なるほど……」


商人もいいかもしれない。


マイハウスへ戻れば、ハンドメイドもできる。クローゼットや収納には、布や糸、革細工の材料、工具まで揃っていた。

好きなものを作って売る――そんな暮らしも悪くない。


選択肢がないわけではない。


焦って冒険者になる必要もないのかもしれない。

まずは町へ入り、この国がどんな場所なのか、自分の目で見て、自分の耳で聞く。

その上で、これからどう生きていくのかを決めればいい。


「うん。急ぐ必要なんてないよね」


そう呟くと、不思議と肩の力が抜けた。


商人もいいかもしれない。マイハウスに行けばハンドメイドも出来るし、材料も色々あったしな……好きなもの作って売るってのもありだね。

焦って冒険者になる必要もないのかもしれない。

まずは町へ入り、この国がどんな場所なのか、自分の目で確かめてからどうするか決めよう。


考えてみると、寝る場所も食べる物も困らない。

マイハウスという反則級の拠点がある以上、生活に追われて焦る必要はどこにもないのだ。


「設定はどうするんだ? 冒険者になりたい人族の嬢ちゃんと、護衛兼指南役の俺ら――ってことでいいか?」


「嬢ちゃんって……私18歳! ここでは18歳は大人でしょ!?」


思わず抗議すると、二人は顔を見合わせ、そろって可哀想なものを見るような視線を私へ向けてきた。

何とも言えない、言葉を選んでいるような表情で――


「お前……どう見ても未成年にしか……」


ルドが気まずそうに呟く。

じとーっと睨みつけると、ルドは慌てて手を振った。

私が睨むと「い、いや! 見た目っていうか……その……身長が低いっていうか……」


「……」


この野郎……なんてデリカシーのない奴なんだ。

ちらりとクロを見ると、口元を押さえて肩を震わせて……笑ってる。

しかも必死に堪えているだけで、全然隠せていない。


私は二人をびしっと指差した。

「あんたらが無駄にでかいんでしょうが! 私は普通です! 人族として普通なの!!」


私は思わず声を張り上げる。

ルドもクロも獣人だけあって、百九十センチ近い長身だ。

そんな二人と比べらたら、小柄に見えるのは当然である。


「いや、普通って言われてもなぁ……俺の知っている人族より……」


「もういいから黙って! 私は冒険者に憧れて旅をしている! 二人は指南役兼護衛! これでいいよね!?」


半ば強引に話を打ち切る。

こう見えても、元は四十五歳なんだから!

今は18歳になってるけど、感覚的に年下から嬢ちゃんなんて呼ばれるのは嫌すぎる。


……とはいえ。

渋くて包容力のあるイケメンなおじ様になら、「嬢ちゃん」と呼ばれても悪くない。

いや、むしろ少し照れながら「はい」と返事をしてしまうかもしれない。


……いけない、いけない。

つい、どうでもいい妄想に意識が飛んでしまった。


「まぁ……今のところ、それが妥当だろう。しかし、町に着いても俺達は素性を隠したい。どうにか資金を作る手立てを考えなければ」


クロはすぐに現実的な話へと戻す。


「あっ、それなら大丈夫! 一通りお金は持ってるから!」


私は自信満々に胸を張る。

神様がインベントリの中に、この世界のお金を一通り用意してくれていたのだ。しばらく生活するくらいなら困ることはないだろう。


「だが…」


クロはなおも渋い表情を崩さない。

私は別に気にしないんだけどなぁ……。

律儀というか、真面目というか……こういうところは本当に融通が利かない。


「いずれ返してくれればいいんだし。それに、宿に泊まらなくてもテントがあるでしょ? 食べ物にも困らないし、案外お金を使う機会なんてないかもしれないよ?」


「どんどん借りが貯まっていく……世話になり過ぎている。こんな状況では仕方ないのかもしれないが…」


その表情には、申し訳なさと悔しさが滲んでいる。

私は少し驚いた。 そこまで気にすることなのかな……?

確かに、森で絵会ってから色々お世話したけれど、それ以上に二人から色々なことを教えてもらっている。


「そんなに気にしなくてもいいんじゃない?」


「……」


「私だって、二人に助けてもらってるんだから。一方的に貸してるつもりなんてないよ」


そう伝えると、クロは何か言いたそうに口を開きかけた。

けれど、その前に――


「今の状況じゃしょうがねえ。いずれ借りは返すからよろしく!」


ルドが明るい声で割って入る。

その軽い言葉に空気が少しだけ緩んだ。


……本当にルドはこういうところが上手い。

深刻になりすぎそうな時に、自然と場を明るくしてくれる。

私は思わず笑ってしまう。 

クロも小さく息を吐き、諦めたように肩の力を抜いた。


「……お前は本当に楽観的だな」


「褒め言葉として受け取っとくぜ」


いつもの調子で笑うルド。

そんなやり取りを見ていると、自然と頬が緩んだ。

この異世界で最初に出会ったのが、この二人で本当に良かった。


もし森で一人だったら――


きっと今頃、何を信じて、どう進めばいいのかも分からず、途方に暮れていたはずだ。

だから、町に着いた後、さよならする事を考えると少し寂しく感じる。




たった数日一緒にいただけなのに。




いつの間にか、この二人がいることが当たり前になっていた。







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