47 旅の設定を考えよう
しばらく三人で、認識疎外の設定をあれこれ試してみることにした。
強さを変えてみたり、効果範囲を調整してみたりと、思った以上に細かな設定ができる。
「これ、本当に便利だな……」
「これ、すげぇ高性能じゃねぇか!」
ルドとクロも感心しきりだ。
そして、いくつか試した結果、一番使い勝手が良さそうな設定が見つかった。
『人としては認識されるが、まったく印象に残らない』
という認識疎外だ。すれ違えば「ああ、人がいるな」とは思われる。
しかし、顔も特徴も記憶に残らず、少し目を離せば「どんな人だった?」と聞かれても思い出せない程度に存在感が薄くなるらしい。
「これなら、不審者扱いもされないし、知り合いとすれ違っても気付かれる心配はなさそうだね。」
クロも静かに頷く。
「ああ。姿を完全に消すより、こちらの方が自然だ。追っ手の目を誤魔化すには十分だろう。」
ルドも何度か試しながら満足そうに笑った。
設定を一通り確認し決め終えたところで、ふと疑問が浮かんだ。
「ねぇ。」
二人がこちらを見る。
「私たちって三人で旅をしてるって設定だけど……冒険者じゃないよね?」
「そうだな。」
「こんな森の中を歩いてたら、逆に怪しまれない?」
冒険者ではないのに森に居る。怪しさ満点である。何かしらの事情設定が必要ではないか?
ここにいても不自然ではない理由くらいは考えておいた方が良さそうだ。
「私が冒険者になるために修行しているとかは?」
これなら違和感はない気がする。
しかし、クロは首を横に振った。
「だが、この辺りは魔獣のレベルも高いから修行とは言えこんな所まで来る者は殆どいない」
「でも、俺たちが護衛を兼ねた指南役ってことにすりゃいいんじゃねぇか?」
ルドがぽんと手を叩く。
「こいつが冒険者を目指していて、俺たちは世話になってる知り合いに頼まれて同行してる。これならそこまで不自然じゃねぇ」
「なるほど!」
確かに、それなら三人で行動していても違和感は少ない。
「だが、人と遭遇するのは、もっと森の入り口付近が良いだろう。ここは上級冒険者でも苦戦することもある危険な場所だ」
「確かにな。こんな奥地で『冒険者の修行中です』なんて言っても、逆に怪しまれるだけだ。森の入口付近までは人目を避けて行動する。それが一番無難じゃねぇか?」
何だか、しっくりくる。
この設定なら、町へ入ってから冒険者登録をする流れも自然だ。
集めた魔獣の素材を売るにも、身分証があった方が何かと便利だろう。
「町に着いたら、冒険者登録ってできるかな? 私、身分証も持ってないし。集めた素材も売りたいんだよね」
ルドとクロは視線を交わし、揃って眉をひそめた。
二人ともすぐには答えず、どこか難しい表情で考え込んでいる。
……あれ?
私が冒険者になることに、何か問題でもあるのだろうか。
二人の反応が気になり、私は首を傾げた。
「お前は人族……だよな?」
ルドは言いにくそうに頭をかきながら続ける。
「ここは獣人の国だ。その……何て言うか、はっきり言うと、人族は弱いって思われてる。そんな人族が冒険者登録なんかしたら、笑われるのがオチだ。それどころか、『何か事情があるんじゃないか』って、余計な詮索をされるかもしれねぇ」
「……なるほど」
そうだった。
獣人たちは人族に対して、あまり良い印象を持っていないと言っていた。
そんな国で人族の私が冒険者登録をすれば、嫌でも目立ってしまう。
私が望んでいるのは、ひっそりと、平穏に暮らすこと。
余計な注目を浴びるような真似はしたくない。
どうする私・・・
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