46 対人……対策する?
人と会うことに不安を感じる私たち。
まぁ…不安の意味合いは、若干違うのだけれど。
クロとルドは追手から逃げている。
それに、二人に掛けられていた呪いは『返品』したけれど、犯人が誰だか分からないのが現状である。
今頃は、老衰でよぼよぼになっているとは思うけれど、確認する術が無い。
私の方は……まだ何が問題になるのか、いまいち理解できていない。
さて、どうしたもんか……
――そういえば。
認識疎外の機能が付いたローブがインベントリに入っていたはずだ。
あれを使えば、人目を避けながら移動できるから、大丈夫なのでは?
私はインベントリを開き、中を探る。
「あ、あった!」
取り出したのは、どちらも深い黒色をしたフード付きのローブ。
一着は動きやすそうなひざ丈で、もう一着は足首近くまで覆うロング丈だ。
どちらも装飾はほとんどなく、一見するとごく普通の旅人用ローブにしか見えない。
私は二着を広げながら、二人へ向き直った。
「一応、疎外認識機能の付いたローブが二着あるけれど? 使う?」
敵に追われている二人が使う方がいいよね。
二人はローブを見て、揃って目を丸くしていた。
「そんなもんまで持ってるのかよ!」
「疎外認識の魔法であっても、魔法レベルが高い奴には見破られる可能性は高い」
心配する二人に対して、私はにっこり笑って人差し指を立てる。
「大丈夫だよ? 疎外レベルも選べるし、ぼんやり~絶対気付かれない!ってレベルまで設定できるから! ついでに、絶対防御と温度調整及びサイズ自動調整も付いているよ!」
二人は呆れているが気にしない事にする。
持ってる物は使わないとね! 私は得意げに胸を張る。
「あと、絶対状態保護の壊れない汚れない、いつでも新品状態維持と無くしても勝手に戻ってくる
機能もついてるの! 一応、私専用だけど、任意で貸し出し。まぁ、武器と同じ機能って感じかな」
「……お前……本当に何でもありだな! それって、国宝級だぞ!!」
「他人の前でホイホイ物を出すなよ!? インベントリの存在も絶対に知られるな!」
私は苦笑しながら両手を軽く上げた。
「二人の前だけにするから大丈夫だよ。 ある物は使わないとね! まずは試してみよう」
そう言って、私は二着のローブを差し出す。
二人はそれぞれローブへ視線を落とし、しばらく見比べていた。
「俺はこっちがいい」と、ひざ丈のローブを手にしたルド。
ルドは軽く羽織ると、その場で腕を回したり足を動かしたりして着心地を確かめる。
「ひざ丈の方が武器も抜きやすいし、動きやすいからな」
ルドはそう言いながら、腰に下げた武器(包丁)へ軽く手を添える。
包丁――いや、今は立派な武器として使っているそれ――を考えて選んだらしい。
ローブの裾が邪魔にならず、動きやすそうで実に機能的である。
「おぉ~!」
思わず感嘆の声が漏れた。「手練れの冒険者みたいで似合ってる!」
一方のクロは、足首近くまで覆うロングローブをまとい、フードを目深にかぶる。
顔がほとんど見えなくなったせいで、どう見ても怪しさ満載である。
だが、不思議なことに長身のクロが着ると、その怪しさすら様になっていた。
旅慣れた実力者のような雰囲気が漂い、妙に格好いい。
「うん、怪しいけど似合ってる!」長身のクロに良く似合っていた。
私は二つのローブを見つめながら、心の中で呟く。
(『任意貸し出し』)
その瞬間、目の前に見慣れた半透明のボードがふわりと現れた。
『ローブを貸し出しますか?』
ひざ丈ローブ → ルド
ロングローブ → クロ
【 YES 】 【 NO 】
私は迷うことなく【YES】ぽちっと指先で押す。
『貸し出しを完了しました』
『所有権は貸主に帰属します』
『返却は貸主、または借主の意思でいつでも可能です』
「貸出完了っと!」
目の前の二人は何もない空間に向かって指を動かしている私を、不思議そうな顔で見つめていた。
「……今、何をしていた?」
「ローブの貸し出しの手続きしてたの。認識疎外レベルを意識すると設定できると思うから試してみて?」
「認識疎外レベル?」ルドが首を傾げた次の瞬間――
「「……!」」
二人は同時に目を見開く。
どうやらローブの機能を意識した途端、頭の中へ直接情報が流れ込んできたようだ。
「……設定項目がある。」
クロが驚きを隠せない様子で呟く。
「本当だ。……だが、設定調整が細かすぎる!! はんぱねぇぇぇぇ」
ルドは驚きと興奮でキラキラと輝いている。
「……ここまで自由度の高い魔道具など聞いたことがない。」
クロの低く呟いたその声には、隠しきれない驚きが滲んでいた。
私はそんな二人を見て、満足そうに頷く。
「便利だよね!」




