37 本来の姿と……
無事に本来の姿に戻った二人だが、裸はまずい。裸族はいかん。
着替え…どうしよう…
異世界…あるある…聞いてみようかな?
「ねぇ、二人とも服が無いから…獣化ってできる? 出来るなら服が無くても大丈夫?なの…かな?」
ダメもとで聞いてみたけど、さすがに無理?
「確かに、このままではいられないしな」
「えっ!変身できるの!? 見てみたい!!」
「ちょっと待ってろ――もう、振り向いても大丈夫だぞ」
勢いよく振り向くと、そこにはプラチナシルバーの美しい毛並みを持ち、神秘的な赤紫の瞳の大きな犬?と、艶やかな茶色い毛並みで透き通るようなエメラルドグリーンの瞳をしているゴールデンレトリバーのような犬が二匹お行後良く座っていた。
「わぁー! か、かわいい… わんちゃん!」
思わず本音が口から洩れてしまった。
私が目を輝かせて見つめていると、二匹は耳をぴくぴくと動かして、どこか不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「犬じゃない!」
「ワンちゃん……だと……」
「ワンちゃんがしゃべった!」
可愛さの余りに思わず二匹に飛びついた。
「「なっーー!」」
茶色のワンちゃんは素早く身を翻して逃げられてしまったけれど…プラチナシルバーのワンちゃんは確保できた。
「一匹ゲットーーー!!」
さらさら、すべすべの毛並みで思わず首元に顔を突っ込んで、体中を撫でまわす。
「おい! やめろ! 離れろ!」
嫌がるワンちゃん……だが、逃がさない!片腕でガッチリと首を抜け出せないよう固定し、さらに撫でまわす。
すると、隣から大笑いしている声が聞こえた。
「わはははははーー。わんちゃん。ぷっ…くくっ…ぷぷっ! こいつ犬扱いされて撫でまわされてやんの!」
「ルド! 笑うな! 笑っていないで助けろ!」
茶色のワンちゃんは前足を地面の叩きながら、涙目で大爆笑している。
「貴様ぁーーー!」
クロの低い唸り声が聞こえる。
……?ワンちゃん?…………!!
私は逃げ出せないよう首元を腕で固定したまま顔を上げる。
本当に綺麗な犬だよねー…………違う。 クロだった。
…………でも。今はワンちゃんだから良いよね?
だって、触り心地が抜群なんだよ!
私は一人で納得して頷き、再び首元に顔を突っ込んだ。
「おい! いい加減にしろよ!」
抜け出そうと足掻くが、私は負けないように、ぎゅっと力を込めて抱きしめる。
「もう少しだけ。お願い!」
しばらくジタバタしていたけど、諦めたのか大人しくなった。
観念したのかな? いい子いい子と頭をわしゃわしゃ撫でまわす。
すると、ルドの大爆笑が部屋中に響き渡る。
「ぶははははっはははーー!! コイツ、クロを締め落としているぞーー!!」
ぎゃはぎゃはと笑っているが…………顔を上げてクロを確認すると、白目をむいてぐったりしていた。
「えっ? いやぁぁぁぁぁーーー! クロがーー!!」
私が驚いて手を放してしまったので、クロはそのまま倒れて床に頭を打ち付けた。
ゴッッ!
あっ…………ごめん…………
私は硬直し、ルドは床にのた打ち回って爆笑する。
「ひーひぃぃーーー!! とどめ刺しやがったぁー!! ウケるー!!」
呼吸困難になりながらも床をバンバン叩いて悶絶するルド犬…………
「ご、ごめん! わざとじゃないの! クロ! しっかりして!!」
慌てて駆け寄り揺さぶるが、返事は無く、白目を剝いたままである。
「やめろ…………ぷっ…あまり揺らすなよ……ぶはははっ!」
私はどうしたら良いか分からず――床に打ち付けた頭がこれ以上痛くならないよう、とりあえず膝枕をしてみた。
ルドは未だに、ひぃひぃ涙を流して床を転げ回っているが…………無視した。
そして数分後―― ピクリと耳が動いた。
「あっ! クロ大丈夫?」
ゆっくりと目を開けて、しばらくぼんやりしていたが、目を覚ましたクロは、私と目が合った途端…………ぶわっ! 急に全身の毛を逆立てて、勢いよく飛び起きた。
おっ。元気があるようで良かった。
「ごめんね? わざとではないのよ? 」
私が申し訳なさそうに謝る横で、ルドが吹き出した。
「ぶふっ! くくくっ……もう、やめてぇー」
再び笑い転げたルドを――クロは冷ややかな目線で見ている。
「………………ルド……いい加減にしろ!」
「だってよ……クロがこんな目に遭うのって…初めて見た……ぶっふっっ!」
青筋立てて怒っている様に見える……なんて表情豊かな犬達なんだろう。
私が微笑ましく二人?のやり取りを見ていると、クロは深いため息を吐いた。
「………………ルド、お前…しばらくは犬でいろ。俺が良いというまでな!」
「は?」
ルドが間抜けな声を上げた次の瞬間ーークロはいきなり獣化を解除した。
「ぎゃぁーーーーー!!」
おいっ!もろ見えだぞ!! いいのか! いいんだな!!
バッチリ見てしまった。―――そして目が合う
「何見てんだよ。……もう、獣化はしない」
不貞腐れたようにそう言って、堂々とした足取りで部屋へ向かっていく。
副眼。副眼。いいケツしてました。ありがとうございます!!
そう私が拝んでいると、ルドが慌てた様子でクロの元へ走っていく。
「あっ、やべぇーー ちょっ、待ってって! 悪かったよ!」
ルドは謝っているが――「うるさい!」と言って部屋に入るなり勢いよく扉を閉める。
ドアの外に取り残されたルドが悲痛な声を上げ叫んでいる。
「悪かったって! おいクロー! そう拗ねるなよー」
「うるさい! しばらくは黙って犬でいろ!」
「そんなーーーー!!」
二人のやり取りを聞いてちょっと反省する。でも、ワンちゃん可愛かったんだよ?
誰に言い訳するでもなく一人ごちる。
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