ルドとクロの相談話
ルドと二人で話をするために俺達の割り当てられた部屋へ行き、互いにベットサイドへ座ったところでルドが話を切り出した。
「おい。これからどうする?追っての事も考えなきゃいけねぇが、俺達に掛けられた魔法も解きたいし、犯人も捜さなきゃいかんし…俺達が逃げた後の現状も知りたいしなー」
俺達は騎士団の特殊部隊に所属していて、クロは副隊長で俺は副隊長補佐を務めている。
特殊部隊とは、魔物討伐から国家規模の事件捜査まで、状況に応じて臨機応変に対応する騎士団屈指の精鋭部隊だ。
事の発端は、国内で相次ぐ誘拐事件と奴隷斡旋組織の摘発調査中に、とある高位貴族が関与している可能性が浮上した。
確証を得るために慎重に捜査していたが…気付いた時には、まんまと罠にはめられていた。
クロと二人で内密に調査してるさなか、問題が起きたのは騎士団の宿舎にある自室だった。
その日、仕事を終えてクロの自室にて、二人で酒を飲みながらたわいもない話をしていた。
――パリンッ!! 突然、窓ガラスが割れた。
何かが投げ込まれたようだ。
咄嗟にクロをかばったが室内は白い煙が充満して息苦しさと全身に鋭い痛みを感じた。
その直後に刺客が現れた。痛みを押し殺して戦おうとするが、体が上手く動かない。どうにか倒したが…俺達は姿を変えられていた。小さな子供の姿に…
こんな魔法は聞いたことが無いし、当然焦った。仲間の元へ助けを求めに行こうとしたが、次々と俺達を襲ってきた。
仲間達にも変な魔法が掛けられ操られているようだ。
俺達は一先ず人目につかないように逃げ出すことにしたのだが、周りからは敵意を向けられるようになっていた。
そうやって追手から逃げてる途中に川に落ち、流された先で出会った変な女、確か…名前が…ナナだった。
挙動不審で何やら怪しい感じだった。
ただの頭の弱い女にしか見えなかったが、見た事も無い魔法や道具を持っているのに、その凄さが分かっていない。
聞けば記憶が混乱しているとか……嘘くさいが、信じている事にしておいた。
「なぁ、俺達の事情を話して、この魔法を解いてもらえないかな?不思議な魔法を使うし……以外にも簡単に解いてもらえそうじゃねぇ?」
「確かに…勇者や聖女の使っていた文字もわかるし、不思議な魔法も使う…素性のしれない俺達にも良くしてくれるしな…だが、それでいいのか?巻き込むような事にならないか?」
「もう、関わってしまってんだから、あれこれ考えるよりも、戻れる可能性を試した方がいいんじゃないか?」
ルドの言うことは正しい。
俺たちは元の場所へ戻らなければならない。やるべきこともあるし、背負っている責任もある。
それは理解している。
理解しているのだが――なぜだろう。
胸の奥に小さな引っ掛かりが残っていた。
これからのことを考えなければならないはずなのに、今の状況をどこか楽しんでいる自分がいるのだ。
最初にあいつと出会った時は、常識の欠片もない変な女だと思った。
突然わけの分からないことを言い出し、突拍子もない行動ばかりする。正直、面倒な奴だとさえ思っていた。
だが――。
見たことも聞いたこともない能力を目の当たりにした時、俺は驚愕した。
そして同時に、高揚していた。
未知の魔法。 常識を覆す知識。
次から次へと飛び出してくる規格外の力。
警戒すべき存在のはずなのに、気付けば興味の方が勝っていた。
隠しダンジョンの事だってそうだ。
本音を言えば、今すぐにでも確かめてみたい。それは歴史を揺るがすほどの発見だ。
だが、俺たちには戻らなければならない場所がある。
帰りを待つ者たちがいて、果たすべき任務がある。
それなのに――。
胸の奥では、もう少しだけこの奇妙な日々が続けばいいと考えている自分がいた。
その事実が、何より俺を戸惑わせていた。
だが、
「そうだな…ルドの言う通り、元に戻る可能性を試した方が良さそうだ。今後どうするかは、俺達が元に戻った時に改めて考えよう」
こうして、二人に掛けられた魔法について相談することにした。




