22 テント・・・様
外では嵐みたいな豪雨が続いているみたいだが、部屋の中は静かで温かい。
呆然と立ち尽くルドとクロ。
頭を抱え込んで泣きそうになる私。
……どうしよう。
出会た時点からだいぶ怪しかったのに、今度はトンデモナイ・テントが出てきた。
言い逃れできる? これ。
我に返ったクロなんて完全に「何者だこいつ」って顔してるし。やばい。
私はじわじわ現実逃避したく…人をダメにするク○シ○ンへ視線を向ける。
……あれに飛び込みたい。 全てを忘れて埋まりたい。
――しかし何か言い訳考えなければ…
もしかしたら空間魔法もあるから意外と似たようなテントが存在する……かも?
うん。 きっとある。 多分。 ……知らんけど。
でも、ここで私が取り乱したら余計に怪しいから…
ここは平然と「テントってこんなものでしょ!」って強気に出てみるか?
きっと大丈夫。堂々としてれば案外いけるはず……
思いを決して!…ふんっと胸を張る私…
「テントってこんなものでしょ!」
言い切った。強気で。とにかく強気で!
するとルドが「えぇ……」って言って顔を強張らせるし、クロは無言のジト目で見ている。
やめて。 その目線と沈黙が痛い!
やがてクロが静かに口を開いた。「……いや、聞いたことない」
否定された!! そうですか!! 見た感じそんな気がしてました!
だがここで引いたら負けだ。負ける訳には……
私は引きつった笑顔のまま続ける。
「で、でもほら! 世の中には色んなテントがあるから!」
「色んなのを含めても見たことない」ルドも隣でうんうん頷いている。
強い。 クロ、容赦がないな。……このちびっこが!!
だが私は負ける訳にはいかない。
ここで引けば怪しまれる。押し切れ!
「世界は広いから――君たちがまだ知らなかっただけだよーまだまだ子供だしねー」
平然と上から目線で言ってやった。フン。これでどうだ!
ルドとクロはお互い見合って――またもやクロが深いため息をつく――
「はぁ…………そうかもしれない…………な。」
勝った。 私は心の中で拳を握る。
WINNNER――WA・TA・SHI・ 勝者ー奈々ー!!
どうやら逃げ切れた模様。よっしゃー!!!
私は内心大喜びしながら、表面上は余裕の笑みを浮かべた。
さすがに玄関で突っ立ったままというわけにもいかない。
けれど2人とも全身ずぶ濡れだ。このまま部屋へ上げれば…………部屋が汚れるし……
――はっ! こういう時こそ生活魔法の出番なのでは!?
ここで上手くやれれば、テントの怪しさも少しくらい挽回できるかもしれない!!
思い立った私は二人へ向かってぱっと手を合わせた。
「クリーンとドライの魔法かけてもいい?」
ルドとクロはきょとんとした顔で互いの姿を見下ろす。
そこでようやく、自分たちが全身ずぶ濡れだったことを思い出したらしい。
服は水を吸って重たそうだし、髪の先からはぽたぽたと雫が落ち続けている。
しかも二人とも、玄関に水たまりを量産中だ。
濡れた前髪を顔に張り付かせたまま、二人そろってこちらを見上げてくる。
「……そういや、魔法使えるんだったな……」
ルドが今さら思い出したように呟く。
遅い。気づくのが遅い。私も今しか思い付かなかったけど。
一方でクロは、じっと疑わしげな目を向けてきた。
「……大丈夫なのか?」
「何が!?」
「変なことにならないのか?」
怪しむクロの眼差し…………痛い。
「ただの生活魔法だよ!? 一般的な生活魔法!!」私は慌てて両手をぶんぶん振った。
なんでそんな変人を見るかのような目線が……ちょっと傷つくんだけど!
「ドライははじめて使うけどクリーンは試したことあるから大丈夫!!」
「その説明に不安しかないのだが……」
ルドがものすごく微妙な顔で呟いく。
するとクロが怪訝な表情をして、さらに追撃してきた。
「………………お前…………大丈夫か?」 何が!? クロ辛辣!!
色んなことが想定外で焦ってテンパって大丈夫じゃないですよ!!!
頭の中がごちゃごちゃで、何もかもが今更な気がして…――もういいや!
私は半ばやけくそで…
「クリーン・ドライ!」
「はぁ!」 「ちょっ――」
二人の返事を待たず、有無を言わさず魔法発動である。
わりと淡い光が二人を包み込み――次の瞬間、びしょ濡れだった服や髪が一気に乾き、ぽたぽた落ちていた水滴も消えて泥汚れまで綺麗さっぱりなくなっている。
……まあ、服のボロボロ具合だけはどうにもならなかったけどね。
「……おお」
ルドが自分の服をぺたぺた触りながら目を丸くする。
一方クロはというと――
「…………勝手にかけた」唖然としていた。
私は満足げに腕を組む。きれいさっぱり!スッキリ!――余は満足じゃ!!
「ワッハハハハハ――! やったもん勝ちだよね!」
私は腰に手を当て、満足げに胸を張った。
「勝ちって何だ!?」
即座にルドのツッコミが飛んでくる。
「…………お前は…………はぁ…」
クロは深いため息を吐き、そのままがっくり肩を落とした。
なんかすごく疲れた顔をしている。 失礼な。
私は気にせずドヤ顔でふんぞり返る。「どう? 便利でしょ生活魔法」
「……まあ、すごいのは認める」
ルドは複雑そうな顔で頷いた。 ふふん。もっと褒めてもいいんだよ?
とりあえず家?テントの中を確認したいのでルドとクロにはソファーで休んでてもらおう。
「ここ玄関ね。靴は脱いで入って~」
先にブーツを脱いで家に入ると、ルドとクロは少し戸惑いながらも、おとなしく靴を脱ぐ。
「私は中を確認したいから二人はソファーでくつろいでいていいよ」
部屋の奥にあるソファーを指差すと、ルドとクロはそろってきょろきょろ辺りを見回した。
「何なんだこのテント? 家か? どうなってんだ?」
「……見たことのない変わった作りだな」
二人とも変なものを見る様な目つきで家の中を見回す。
「え?普通だよ普通!」
するとルドがじーっとこちらを見る。
「……お前の普通ってなんか違くねぇか?」
「うっ」
更にはクロまでもが…
「………記憶が曖昧って言ってなかったか?」
痛いところを突かれた。
「…………」
そうだった。 勢いで忘れてた。 ちびっ子達ちょっと頭良すぎじゃねぇ!?
君たち小学校低学年ぐらいだよね? 異世界の子供って…
私はすっと目を逸らした。
「細かいことは気にしない方向で!」
「気にするだろ普通……」
ルドのツッコミが重かった。
気を取り直して――2人をソファーに座らせた。とりあえず何か食べさせておけば大丈夫だろう。
キッチンへ向かいまずは冷蔵庫の確認――マイホーム同様、様々な食材入ってます。
ありがとうございます! チートテント!生活能力高い!
私はプリントお茶を取り出し、2人へ持って行く
「二人で食べてて。私は室内確認してくるから」
クロは私をじーっと見つめている……何か言いたいのか?
気になる視線を無視して、テーブルへプリンを置くと、ルドとクロが目を丸くした。
「なんだこれ!?」「…………」
「甘いやつ!甘くておいしいやつ!」雑な説明である。
ルドとクロはプリンをじーっと見つめた。ぷるっと揺れるプリンに視線釘付けになっている。
「……なんか揺れてねぇか?…」
「生き物ではないよな……?」
「違うから!?美味しい食べ物だよ!」
……うん。
とりあえず食べ物を渡しておけば、少しは大人しくしてくれるはず。
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