0089 闇の聖域
──ダンジョン下層(side美乃梨)──
もうどれだけ歩いただろうか。
緩やかな下り坂を進むほど、嫌な感覚が強まっていく。
あれから美乃梨の体調は悪くなる一方だった。
頭痛、吐き気、眩暈。
それらを無理に押し殺して、一歩一歩、足を前に進める。
まるで見えない手に内臓を撫で回されているようだった。
見えざる手が大腸から小腸、胃、食道を這い上がり、ついには脳へ────。
「ぐっ……」
とうとう耐えきれなくなり、苦悶の声を上げて美乃梨が膝を付く。
息が苦しい。
ダンジョンの最奥に近づくほど空気の粘度が増している。まるで水中を歩いているようだ。
「大丈夫か?」
「……行きましょう。もうすぐです」
ゼロスの気遣いを片手で制し、どうにか呼吸を整え、美乃梨がヨロヨロと立ち上がる。
より頭痛の強まる方へ。より吐き気を催す方へ。
嫌な感覚を頼りに道を選び進んでいくと、やがて二人の前に壁が立ちふさがる。
一見、行き止まりのようだが……。
「この先か」
「はい」
ゼロスが尋ねると、美乃梨が小さく頷く。
すると、強化外骨格が壁に向かって探査音波を放った。
『────スキャン完了。壁ノ向コウ側ハ、空洞デス。破壊シマスカ?』
「やれ」
耳元で響くサボットの声にゼロスがゴーサインを出す。
するとゼロスの背中に生えた二本のサブアームが「ぐん!」と持ち上がり、両肩の上で固定された。
サブアームが保持するライフル型魔導照準器、その銃口に光が集まり────。
轟ッ!!!!
吐き出された極光がダンジョンの岩壁を赤熱させ、隠された空間へと続く大穴を穿つ。
穴を潜り抜けると岩壁の洞窟から景色は一変し、白く塗り固められた壁が奥へと続いていた。
天井には魔導灯が等間隔に設置され、微かに光沢を帯びた薄緑色の床は歩くと独特の吸着感がある。
「あのクソハゲめ。ワシのアイデアをパクりおったな」
「パクったって、何がです?」
気晴らしに美乃梨が話しかけると、ゼロスは不機嫌顔で煙草に火を点け、歩きながら話し始めた。
「ダンジョン内ではごく近しい並行世界との境界が曖昧になっておってな。そのせいで異界化したダンジョンではどれだけ魔物を倒しても数が減らんのじゃ」
「そうなんですか?」
「うむ。つまり【魔物が倒された世界線A】と【魔物が倒されなかった世界線B】が同時に存在するわけじゃ。鉱物資源や自生する植物も同様じゃの。ゆえに異界化したダンジョンからは半永久的に資源を獲得することができる」
美乃梨の素直な反応に気をよくしたのか、学者の顔つきになったゼロスは咥えた煙草を上下に揺らして講義を続ける。
「詳しい原理までは知らずとも、ダンジョン内で魔物が突然何も無い空間から出現することは冒険者なら誰もが知る常識の一つじゃ。普通の感性の持ち主なら、そんな危険地帯に隠れ家を作ろうなどとは思いつきもしないじゃろう」
「そういえば、ここだけ魔物がいないですよね」
「空間中に存在する魔素のゆらぎ幅を五〇Zs以下にすれば、そこだけ魔物の出現しない安全地帯を作り出せるからのう。空間魔素濃度を調整することで時間の流れる速度も思うままじゃ」
「そっか。それで……」
研究の進みが異様に早かったワケを知り、美乃梨は深刻な面持ちで視線を落とす。
ここでは地上の何十倍、何百倍という速度で時間が流れていく。
自分がモタモタしている間にどれだけの人々が邪悪な実験の犠牲になったのか。
それを思うと、胸が痛んだ。
無人の廊下を真っすぐに進むと、やがて二人の行く手に見上げるほど巨大な鉄扉が立ち塞がる。
扉の横には認証装置が付いており、専用のカードキーが無ければ開かない仕組みのようだ。
「……結局誰とも会いませんでしたね」
「ワシらを誘い込むための罠かもしれん。気を付けて進むぞ」
ゼロスの言葉に頷き返し、扉の前に立った美乃梨が拳を構える。
◇
──迷宮都市 地下闘技場 特別観覧席──
警備担当に侵入者を捕えるよう指示を出して半刻余り。
いつまで経っても何の報告も上がってこないことにデリングは苛立ち始めていた。
「ええい! 警備は何をやっているのだ!!!!」
「それが先程から部下と連絡が取れず……」
通信用の魔導具を握りしめ、警備主任が歯切れ悪く答えた。
警備主任の手から通信魔導具をひったくりデリングがあれこれと試してみるが、やはり返ってくるのは雑音ばかりだ。
「警報システムはどうなっている!?」
「それが先程から反応が消えてしまい……。故障でしょうか?」
「ええいこんなときに限って!」
そこまで口に出して、デリングはある一つの可能性に思い当たる。
ゼロス・バルトホーク。六〇〇年前に袂を分かったあの忌々しい男が魔人計画について何か嗅ぎつけたのだとしたら────?
「まずい! すぐに子どもたちを最深部へ向かわせろ! 私もすぐに向かう!」
「あ、え? 最深部!? 全員ですか!?」
「もたもたするな!」
「た、直ちに!」
実年齢からは想像もつかない機敏さで席を立ったデリングに続き、警備主任も慌ただしく動き出した。
◇
──迷宮都市 地下???層 最深部(side美乃梨)──
静寂に包まれていた空間に、突如、激しい異音が鳴り響く。
分厚い金属の塊を破城槌で殴りつけたような音だ。
一回、二回、三回と、音は何度も響き、その度に厚さ二メートルにもなる金属扉がひしゃげていく。
やがて扉が吹き飛び、漆黒の竜怪人と老錬金術師が閉ざされていた闇の聖域へと足を踏み入れる。
「ここは……」
闇の中に、巨大な卵が安置されている。
ふらふらと誘われるように美乃梨が卵の前に立つと、卵は一際強い輝きを放ち、その光で部屋の全貌が明らかになった。
まず目に飛び込んできたのは、壁や天井をびっしりと埋め尽くすカプセルの群れ。
それらはまるで、木の葉の裏に産み付けられた虫の卵のように見えた。
すべてのカプセルは部屋の中央に置かれた機械卵と細いパイプで繋がっており、どうやらこの部屋そのものが一つの巨大な装置であるらしい。
美乃梨とゼロスがカプセルの一つへと近づいていく。
すると中に浮かんでいたモノと一瞬だけ目が合った。
「っ!」
美乃梨が息を飲む。
薄緑色の液体で満たされたカプセルの中に浮かんでいたのは、まだ小さな赤子だった。
しかしその手足は異様なほどに小さく、頭だけ妙に大きい。
その姿は、まるで受精して間もない胎児をそのまま拡大したようである。
「なんと惨いことを……ッ」
部屋全体を見渡し、装置の正体に気付いたゼロスが奥歯を強く噛み締める。
「ゼロスさん、これは……」
「おそらく生体魔力の抽出装置だ。魂の器として最低限機能する肉体を用意し、脳に電気刺激を与えることで生体魔力を人為的に取り出しておるのだろう」
カプセルから伸びるパイプを目で追い、ゼロスが部屋の中心に鎮座する巨大な卵型の機械へ視線を向ける。
「そうして抽出された生体魔力はあの卵へ送られ、物質化される。その際に任意の情報を書き加えれば、自然界に存在しない強力な魔物の魔石も作り放題というわけだ」
ゼロスの瞳に怒りの色が浮かぶ。
禍々しい装置の正体を知り、美乃梨は溢れそうになったものをぐっと堪える。
ここに来るまで感じていた耐え難い嫌悪感の正体はこれだったのだ。
「人の身体に移植するのが目的なら、同じく人の魔力から作った魔石の方が拒絶反応も少なかろう。────なぁ? デリング」
「頭が回るのは相変わらずのようだな」
機械卵を睨みつけたまま、ゼロスが肩越しに問いかけると、部屋の出入口から声が響いた。
力づくで破られた部屋の出入口に立っていたのは、蛇顔の青年。
見た目はまるで違くとも、その目に宿る狂気はかつてと微塵も変わらない。
「顔を変えているだろうとは思っておったが、よもやあのリカルド・ヴァイパーとはな」
「ククク……ッ。随分と老いたなゼロスよ」
薄い唇をニヤリと笑みの形に歪め、デリングがゼロスから視線を外す。
まるで虫でも観察するような視線を向けられ美乃梨が僅かに後ずさると、デリングは「ほう」と興味深げに声を漏らした。
「逃げ出したときと姿が異なっているな。すぐに暴れ出す様子もない。どんな手品を使った」
「誰が教えるか、このデコハゲめ! 見た目は誤魔化せても中身はジジイのようだな! ここからでも貴様の口臭がニオってくるわ!」
『クタバレ! 口臭ウンコ野郎!』
「ええい黙れ! 口が臭いのはお前も同じだろう! このヤニカスジジイがッ!!!!」
ゼロスとサボットの子どもじみた煽りにデリングが怒鳴り返す。
言う方も大概だが、それにキレて言い返す方も割としょうもない。
「あなたの邪悪な野望もここまでです! これ以上誰も犠牲になんてさせない!」
ゼロスに任せていてはちっとも話が進まない。
美乃梨が二人の間に割り込むと、デリングは今度こそ驚いたように目を見開いた。
「素晴らしい! 変身しても会話できるだけの理性を残しているのか! ……ふむ。どうやらそのベルトに秘密がありそうだな」
デリングが右手を掲げると、少年少女たちがずらりと出入り口を塞ぐ。
下は五歳くらいから上は高校生くらいまで。年齢にはバラつきがあったが、皆一様に身体の一部が魔物化していた。
「紹介しよう! 私の自慢の子どもたちだ!」
両腕を大きく広げたデリングの表情は、言葉通り優秀な我が子を自慢する父親のようであった。
子どもたちもデリングを──リカルドを慕っているのか、全員が誇らしげ顔をしている。
愛と呼ぶにはあまりにも歪んだそれを見せつけられ、ゼロスの表情が俄かに険しさを増す。
「表の善人面は被検体を集めるための演技か! このクズめ!」
「人聞きの悪いことを言う。この子らは全員、稀有な才能をもって生まれた特別な子どもたちだ。それを私が見出し、新人類として生まれ変わらせたのだよ!」
この六〇〇年、デリングとて魔人化の研究ばかりしていたわけではない。
ときには別のアプローチで人類の進化を促す方法を探り、多くの知見を積み重ねてきた。
そうした実験を行うにあたり、リカルド・ヴァイパーという表の顔は実に役に立ったものである。
なにせ人道支援に力を入れる聖者の経営する病院だ。
被検体は自分たちの方から集まってきてくれる。
「肉親からも見捨てられ、生きることに絶望していた者たちを助け、生きる意味を与えること。それのどこが悪だと言うのだ」
「よくもいけしゃあしゃあと! 貴様の邪悪なマッチポンプをワシが知らぬとでも思ったか!」
何のことやらとデリングがわざとらしく肩を竦める。
これ以上の問答は不毛。
ゼロスは卵型の機械に照準を定め、躊躇なく爪鉄を引いた。
発動は一瞬。
放たれた大炎弾は狙い違わず標的に直撃し、巨大な火柱が立ち昇る。
「チィッ! やはりそう簡単にはいかぬか!」
────が、無傷。
火炎が弾けるように掻き消えると、薄青い輝きに守られた悪意の卵が依然としてそこにあった。
「一番重要なモノを何の守りもなく放置しておくわけがあるまい」
短気な弟弟子の行動を鼻で嗤い、握りしめていた杖のスイッチをデリングが押す。
すると美乃梨たちの背後にあった卵型の装置が床下へと収納されていく。
「よく聞け子どもたち! あの二人は私の大事なモノを壊そうとする大悪党だ! お前たちの力で悪を倒し、正義を成すのだ!」
デリングの言葉に子どもたちの殺気が膨れ上がる。
その視線はまるで身を突き刺す槍のようで、今まで向けられたどんな感情よりも暴力的だった。
どこまでも純粋な敵意の発露。
会話すら成り立たぬ完全な断絶を悟り、美乃梨が僅かにたじろぐ。
次の瞬間、子どもたちが解き放たれた矢のように襲い掛かってきた。
即座に音波攻撃で反撃に出ようとした美乃梨だったが、部屋の壁に埋め込まれた無数のカプセルが目に留まり、寸前で思いとどまる。
カプセルの中には大勢の赤子たちがいる。
広範囲に影響を及ぼす音波攻撃は使えない。
────殺セ!!!!
──破壊ノ 愉悦ニ 身ヲ 委ネロ!
己ヲ 解キ放テ!!!!
(黙れッ!!!! お前なんか知らない! 邪魔しないで!)
竜の声を意思の力で抑え込み、美乃梨は拳を強く握り込む。
意識を外に向けると、いつの間に接近されたのか、目の前で角の生えた少年が段平を大上段に振りかぶっていた。
半身になって斬撃を躱した美乃梨は、音の塊をボクシンググローブのように拳に纏わせ正拳突きを放つ。
角持ちの少年が半歩下がり、段平で正拳をガードする。
すると次の瞬間、角持ちの少年は糸が切れた人形のようにガクンと倒れ込む。
ガードを貫通した振動が少年の脳を揺さぶったのだ。
続けて左右からサソリの尾を持つ少女たちが挟撃を仕掛けてくる。
顔が瓜二つなのでおそらくは双子だろう。
鋭く突き出された尻尾を美乃梨は低く屈んで躱し、胸の前でクロスさせた両手から指向性の音撃波を放つ。
「「がは……っ!?」」
激しい振動に脳を揺さぶられ、サソリの双子が同時に崩れ落ちる。
リゼラの攻撃をとっさに真似してみたものだが、その威力は絶大だった。
(これなら!)
確かな手応えを感じつつ、美乃梨は次に備えて拳を構えなおす。
早々に仲間が三人もやられたことで、後続の子どもたちは警戒して美乃梨から距離を取る。
僅かに生まれた膠着状態。
ふと、美乃梨の視界を何かが高速で横切っていく。
大きな翼と猛禽の脚を持つ五歳くらいの少女だ。
その瞬間、美乃梨の脳裏に誰かの記憶が流れ込む。
それはコオロギ怪人の魔石に刻まれた、とある父親の記憶だった。
『おとうさん!』
弾けるような少女の笑顔が過ったのは、ほんの一瞬。
(何、今の!? ────そうか、あの子がマーナ!)
その一瞬ですべてが繋がった。
あの少女はコオロギ怪人が探していた娘で間違いない。親に見捨てられたなど、真っ赤な嘘だったのだ。
美乃梨の視線が空中を横切っていったマーナを追う。
少女の視線の先には悪童のような笑みを浮かべ縦横無尽に暴れ回る老爺の姿がある。
「どうしたガキども! その程度でワシを殺そうなどと片腹痛いわッ!!!!」
「「「「うわぁぁぁっ!?」」」」
子ども相手でも一切容赦なし。
サボットと連携したゼロスの動きは、まさしく八面六臂の鬼神そのものだった。
二丁のライフル型魔導照準器。その銃口が輝くたび、敵がまとめて吹き飛び、痺れ、凍りつく。
子どもたちも異能や飛び道具で反撃するが、それらの攻撃はすべてバリアに弾かれゼロスには届かない。
「しんじゃえっ!!!!」
怒りに顔を歪ませ、マーナが上空からゼロスの首を狙い爪を振り下ろす。
が、やはりバリアに弾かれ、魔導照準器が少女の中心を捉えた。
「ダメ────っ!!!!」
とっさに放たれた指向性の音撃が少女の翼に直撃。
音に意識を刈り取られたマーナが空中でぐらりと姿勢を崩し、間一髪、ゼロスの放った冷凍ビームが頭上を掠めていく。
足裏で炎を爆発させ大跳躍した美乃梨は、一足でマーナとの距離を縮めると空中で小さな身体を抱き留めた。
そのまま軽やかに着地した美乃梨は、床の上にそっと少女の身体を横たえさせ、手首を軽く握って脈を測る。
素人判断のため何とも言い難いが、ひとまず呼吸と脈拍は安定しているようだった。
「……っ。ごめんね」
マーナの柔らかな頬に触れようとして、止めた。
こんな刺々しい手では、この子の肌を傷つけてしまう。
こうなる前に助けてやれなかった後悔と、燃え盛る怒りを胸に美乃梨が立ち上がる。
諸悪の根源────蛇顔の青年医師は、次々と倒されていく子どもたちを前にしても眉一つ動かさない。
どこまでも冷徹な研究者の目で戦場を見渡し、メモ帳に記録さえ残している。
「ヨハンはまだ改良の余地がありそうだ。エルザはそろそろ頭打ちか? マーナは戦闘経験を積ませればあるいは。しかし凄まじい戦闘能力だ。あれを実用化できれば……む? どうした。早く戦え。もっとデータを取らせてくれ」
メモ帳から顔を上げ、美乃梨に続きを急かすデリング。
気づけば子どもたちに取り囲まれていた。
殺意の籠った視線に貫かれ、美乃梨が僅かに後ずさる。
これだけの数を同時に相手するとなれば、力加減を間違えて殺してしまうかもしれない。
しかし戦わねばこちらが殺されてしまう。
内なる殺戮衝動を抑え込むように美乃梨が拳を握りしめた────その時。
轟ッ!!!!
天上を貫いて極太の熱線が降り注ぎ、部屋全体を白く染め上げた。
強烈な閃光に目を焼かれ、怯んだ子どもたちが思わず防御姿勢をとる。
するとそこへ、天井に開いた大穴を通って奇妙な二人組がひらりと着地した。
一人は星空を切り出したような煌めく黒のドレスを纏った白髪の少女。
もう一人はファー付きの真っ赤な革ジャンを着こなす狼人族の女。
「あら、ちょっと出口がズレましたわね」
「どういう状況だこりゃ」
アーシュラが困惑顔で部屋をぐるりと見渡す。
周囲を取り囲んでいるのは身体の一部が魔物化した子どもたち。
その人垣の向こうには、かの有名なリカルド・ヴァイパーの姿も見える。
そんな子どもたちと戦っているのは竜怪人とゼロスの二人組。
竜怪人は地上で見たときよりも姿が禍々しく変化しており、どちらが悪者に見えるかと聞かれれば、ゼロスたちの方が断然悪役っぽい。
「子どもらはそこの蛇顔に騙されておる! 頼む加勢してくれ!」
アーシュラの疑問に答えるように、ゼロスが簡潔に状況を説明する。
なんとなく判断に困ったアーシュラが「どうするよ」と隣に視線を投げると、アリアは虚空から取り出した巨大なピコピコハンマーを肩に担ぎ「ふんす」と鼻を鳴らした。
「わたくし言いましたわよ。邪悪な本性がにじみ出ていると!」
魂を持つものが死ねば、誰もが例外なくアリアに導かれ冥界へ向かうことになる。
それは邪悪な実験で死んでしまった被検体たちも例外ではない。
冥の大精霊を前で聖人のふりは意味を成さないのだ。
「冥の大精霊サマは全部お見通しってワケか」
俄かに殺気立ち始めた子どもたちを前に、アーシュラも全身に紫電を纏わせ戦闘態勢に入る。
「よぉ、ガキンチョども。ちょっとビリっとするけど我慢しろよ!」
「楽しいお遊戯会の始まりですわ────っ!!!!」




