0071 世界樹の雫
鉄くずが散乱していた宙域を脱し、俺は機体を慣性航行モードへ移行させた。
ようやく一息つけるな。
操縦席のフルスクリーンモニターに映り込むのは、豊富な水を湛えた青い星。
大陸の形は全然違うけど、こうして見るとなんだか地球を思い出してちょっとホッとする。
ハルトの後押しのおかげでスラスターパックの燃料もほぼ満タンのままだし、この相対速度なら問題なく大気圏までたどり着けるだろう。
説明書を読んだ限りでは、この機体のスペックなら単体でも大気圏の突入は十分に可能らしい。
実戦投入されずに済んで本当によかった。
とはいえ初めての操縦だし気は抜けない。
リゼラも親友の無事をその目で確認して、張り詰めていたものが緩んだのか、操縦席の後ろで静かに寝息を立てている。
大気圏突入時に頼ることになるかもしれないし、今は寝かせておこう。
それから二時間ほどかけて宇宙空間を駆け抜け、機体は母星の重力圏内に入った。
モニターに表示されたサポートAIの指示通りに機体を減速させ、大気圏へ突入する。
「シールド展開! スラスター逆噴射! 減速開始!」
大気圏突入後、すぐに世界樹の頂上が見えてきた。
太い幹が蚊取り線香のようにグルグルと渦を巻いて広場のようになっている。
ちょうどいい、あそこに着地させよう。
特にトラブルもなく、俺たちを乗せた機体は世界樹の頂上へ軽やかに着地した。
コクピットのハッチを開けると、操縦席にしがみついていた二人がホッと安堵の息を吐く。
外に出て新鮮な空気を目一杯吸い込むと、濃い緑の匂いが肺を満たした。
うーん、気持ちいいな。色々ありすぎて流石に疲れた。
「時間的にも頃合いね。霊薬として効果のある世界樹の雫は、夜明けの瞬間に頂上の葉から落ちた一滴だけらしいわ」
夜明けまでまだ少し時間がある。
俺たちは一番高い枝の先に付いた一際大きな葉っぱをじっと眺めて、そのときを静かに待った────。
アリアが戻ってきたのは、夜明けを待ち始めてから五分ほど経った頃だった。
「────ひゃっ!? ……アリア?」
「……しばらくこのままでいさせてくださいまし」
音もなくリゼラの背後に転移してきたアリアは、そのままリゼラの背中に顔を埋めた。
しばらくの間、アリアのすすり泣く声だけが響いた。
人を好きになるのに共に過ごした時間は関係ない。一瞬の内に一生分の恋をすることもあれば、数万年分の友情を結ぶことだってある。
「心配かけてごめんなさい。もう大丈夫ですわ」
やがてアリアが涙を拭い、ボロボロの顔を上げる。
すると今度はリゼラがその場に膝をついて親友の小さな身体を強く抱きしめた。
「…………ばか。どうしていつも一人で、勝手に手の届かないところへ行っちゃうのよ……っ!」
リゼラの頬を大粒の雫がポロポロと伝い落ちる。
「ごめんなさい。でも、これが最良の選択ですもの。後悔はありませんわ」
親友の肩を抱き返し、アリアは泣き笑いの顔で言った。
「信じる……っ。信じるわよ。そう決めたもの……」
アリアがどんな思いで、どういう選択をしたのか、俺はまだリゼラに伝えていなかった。
それでも親友が何か重大な決断をして、今までとは決定的に違う存在になったのだと肌で感じ取ったのだろう。
リゼラは溢れ出るものを堪えるように顔をくちゃくちゃにして、気が済むまでアリアの温もりを噛みしめていた。
どちらのものともつかない嗚咽が薄明の空に吸い込まれていく。
そろそろ日の出だ。
二人が落ち着いた頃合いを見計らい、俺はどうしても気になっていたことをアリアに尋ねた。
「ハルトは、最後になんて?」
「君に託す、と」
「……そっか」
その一言で、ハルトが封印の鍵を俺に移したのだと理解した。
俺が望めばエルフたちは誰もが真実の歴史を知ることができるようになる。
真実を墓場まで持って行くか、それともすべてを打ち明けるか。それも含めて託すと、そう言ってくれたのだ。
「日の出だ……」
ぽつりと声を上げたアーシュラの方を向くと、緩やかに弧を描く水平線の向こう側から太陽が顔を出した。
鮮やかなオレンジの光が、地上に垂れ込めていた夜の闇を拭い去っていく。
すると枝葉の隙間から薄緑の粒子がキラキラと溢れ出し、頂点の葉へと集まり始めた。
「来るわよ!」
「分かってる!」
リゼラと二人、葉っぱの下で白銀の剣と漆黒の杖を交差させて掲げ、その瞬間を待つ。
薄緑の粒子は葉脈を通って葉先へ集まり、濃縮された神秘の力が弾かれるように────落ちた。
雫を受けた剣と杖が強い光を放つ。
『リゼラ! ヒロト! 聞こえるか!』
『リゼラちゃん!』
何よりも聞きたかった声。
喜びと期待に胸を躍らせ目を開けるが────そこに二人の姿はない。
神秘の光に包まれた白銀の剣と漆黒の杖が俺たちの前に浮いているだけだ。
『まさか自力で闘気を習得するとは。頑張ったな、ヒロト』
「師匠!? そんな、どうして!?」
『どうやらこれは呪いではないみたいね。もっと複雑で根源的な、恐ろしく強い力。世界樹の雫の力で、今だけは意思を伝えられるようになったけど、それも長くは持たないわ』
「そんな!? 嫌よママ! せっかくまた話せるようになったのに!」
『あまり時間がない。一度しか言わないから二人ともよく聞きなさい。迷宮都市にいるゼロスという男を訪ねろ。彼ならきっと力になってくれるはずだ』
『ゼロスは私たちが冒険者だった頃の仲間よ。ちょーっとクセの強い人だけど、根はいい人だから』
『アリア様、アーシュラ殿、どうか二人を頼みます────』
剣と杖を包んでいた光が薄れゆき、そのまま糸が切れたようにカランと地面に落ちた。
「待って! 待ってよパパ! ママ!」
リゼラが呼びかけても返事はない。
どうやら世界樹の雫が起こした一瞬の奇跡だったようだ。
「……待ってよ。大嫌いなんて言って、ごめんなさい。ごめん、なさい……っ」
物言わぬ剣に戻ってしまった師匠を胸に抱き、リゼラが唇を噛み締め肩を震わせる。
魔法都市が燃えたあの日、リゼラは実の父親と喧嘩別れになったきりだ。そのことをずっと後悔してたんだな。
「……ゼロス。大錬金術師ゼロス・バルトホークですわね」
「それならオレでも知ってんぞ。勇者マサヨシと一緒に戦った六英雄の一人だろ。けどゼロスは人族だったはずだよな? 同姓同名の別人じゃねぇのか?」
「いいえ。確か今も自ら錬成した長寿の霊薬で延命しておられたはずですわ」
「じゃあ六〇〇歳は超えてるのか。化物かよ」
懐かしい名前が呼び水となって、魂に刻まれたハルトの記憶が俺の脳裏に流れ込む。
────あれから六〇〇年。
僕にとっては昨日のことのようでも、人族の君からすれば途方もない時間だっただろうに。
それでも君はちっとも変わっていないようだ。ちょっとだけ安心した。
「……行きましょう。迷宮都市に」
剣と杖を抱いたまま涙を拭い、リゼラが俺たちの顔を見渡す。
師匠ゆずりの蒼い瞳には、なんとしても二人を元に戻してみせるという強い意思が宿っている。
二人は決して死んだわけじゃない。元に戻せる可能性も示された。
くよくよしてる暇は無い。
「へっ、迷宮都市か。レベル戻すにゃうってつけじゃねぇか」
「大冒険の予感がしますわね!」
俺たちはそれぞれ顔を見合わせ頷き合う。
次の目的地は決まったな。
「ところでアレ、どうすんだ?」
と、アーシュラが人型兵器を指差して言った。
そんな邪魔そうな顔しないでよ。あんなにカッコいいのに。
「もちろんオーランに持って行くよ。陛下に相談して新型機を開発してもらうんだ!」
「却下!」
「えーっ!? なんで!?」
「なんでもクソもあるか! まだ親父の謎だって解いてねぇのに帰れるかよ!」
腕組みして、ぷいと顔を逸らすアーシュラ。
確かにあんな今生の別れみたいな空気で旅立っておいて、二ヵ月も経たない内に帰ったら恥ずかしいのは分かるけども。
「でもここから迷宮都市へ向かうには、どの道オーランを経由しないと船がありませんわよ?」
「ぬぐっ……」
どうにもならない現実を突き付けられ、アーシュラが閉口する。
ほらやっぱり。どうあってもオーランには戻らないといけないんじゃないか。
「諦めて孤児院に顔出せばいいじゃない。みんな喜ぶわよ」
「んなダセェ真似できっか! 船が出るまでオレは港から一歩も動かねぇぞ! 絶対にだ!」
ああは言ってるけど、多分すぐにバレて町中大騒ぎになるな。
あっという間に囲まれて孤児院に連行されていく姿が目に浮かぶ。
「じゃあオーラン経由で迷宮都市を目指すってことでいいわね」
「異議なーし!」
「……クソッ。調子狂うぜ」
「ではオーランに着くまでこの子はわたくしが預かっておきますわね」
と、アリアが指を鳴らすと、ロボットが彼女の影の中にずぶずぶと沈み込んでいく。
大丈夫とは分かっていても、やっぱり少し寂しく感じてしまう。
「あ、待ってやっぱり最後にもうちょっとだけ触らせて! あ、消えちゃう!? あっ、あっあ、あぁ……。き、消えちゃった……」
四つん這いになってついさっきまでロボットがあった場所を手で探るが、固い木の感触が返ってきただけだった。
あれ、なんでだろう。涙が。
「ご、ごめんなさい! 泣かせるつもりは! ほら、出そうと思えばいつでも取り出せますから安心なさって! ね!?」
「ごめん、なんか急に込み上げてきちゃって……っ」
「よしよし、大丈夫よ。ほら泣かない泣かない」
リゼラにそっと頭を撫でられ、俺は慌てて目元を拭った。
くっ、恥ずかしい……っ。
「ほら、そろそろ地上へ戻らないと。みんなついてきて」
頃合いを見て、まるで何事も無かったかのようにリゼラが広場の縁に向かって歩いていく。
こういう時、変にからかったりしてこないのはリゼラの美点だと思う。
「ついてきてって、どうするの?」
「そんなの、飛び降りるに決まってるじゃない」
「「は?」」
俺とアーシュラの声が重なった。
ここから? 嘘でしょ? 地上までどれだけ距離があると思ってるんだ。
「大丈夫よ。魔法でふんわり軟着地させてあげるから。早く帰らないとまたピピが拗ねちゃうわ」
「さ、行きますわよ! あい きゃん ふらーい! ですわー!」
「「うわ────っ!!!?」」
アリアに手を引かれ一瞬で空の上に連れて行かれた俺たちは、そのまま重力に引かれて地上へ真っ逆さまに落ちていった。
◇
──冒険者ギルド エルフェリア支部──
超高空からの自由落下で空の青さを嫌というほど堪能した俺たちは、地上に着くやその足でギルドへ向かった。
元々は行方不明になったアリアを捜索するという名目で世界樹へ入ったわけだし、俺たちには説明の義務がある。
ギルドに着くとすぐに個室に通され、俺たちは世界樹で起きたことをギルドマスターに説明した。
魔人の右腕の行方については特に詳しく聞かれたが、アリアがすべて包み隠さず打ち明けると、ギルドマスターはどうしたものかと眉間を揉んで項垂れてしまった。
「……事情は分かった。報告感謝する。俺は今からこの件を議会へ報告に向かう。お前たちはもう帰っていいぞ。疲れているだろう」
ギルドマスターの方がよっぽど疲れた顔をしていたが、それを言い出せる空気ではなかった。
言われた通り仮説ギルドを出ると、今度はその足でカシギ家の屋敷へ向かう。
カシギ家はエイミーから連なる直系の子孫だ。彼らにはハルトの死を知る権利がある。
◇
──カシギ家 別邸──
屋敷に着くとエハトゥさんとエリドさんは留守のようだった。
なんとなくいつも屋敷にいるような気がしていたけど、二人とも政府の要人なんだからアポ無しで会えるはずもない。
二人がいつ頃帰りそうかと女中さんに尋ねると、夜には帰るだろうとのこと。
なんだかんだ今回も徹夜になってしまったので、それまで仮眠を取って待つことにした。
夕方に目を覚まし、それからしばらくして二人が帰ってくると、俺は奥の間へと通される。
そこで俺はハルトの死を二人に告げた────。
「────そんな。ハルト兄様が……」
俺の話を聞いたエハトゥさんは酷くショックを受け、そのまま泣き崩れてしまった。
永遠に歳を取らないハルトはカシギ家の人々に兄と慕われ、ご意見番として代々の当主たちの補佐を務めていた。
精神的支柱を失った彼らの悲しみは、きっと俺が思うよりもずっと深く重いだろう。
そんな彼らに歴史の真実を伝えるべきか。
ハルトは知ったところで新たな火種になるだけだと考え、あえて彼らに真実を伝えてこなかった。
だけど俺はどうしてもそうは思えない。
今、世界は激動の時代を迎えようとしている。それは俺自身がこれまでの旅路で感じてきたことだ。
もし今後エルフたちが存亡の危機に直面したとき、過去の真実を知っているかどうかで取れる対応も変わってくるはず。
「それと、お二人にはもう一つお伝えしなければならないことがあります。……ハルトが封印し続けてきた歴史の真実。魔族の成り立ちについてです」
俺は二人に歴史の真実と、青月の裏側に今も魔帝国の魔族たちがいることを打ち明けた。
そしていつかエルフたちが過去を乗り越え、月にいる魔族たちと和解したとき、寿命の呪いは世界樹によって解かれるだろうということも。
与えられただけの安寧を享受するのは、真の平和とは言わない。
そんなものは誰かの悪意で簡単に壊されてしまう。
雛鳥はいつかは巣立たないといけない。
二人は俺の話に口を挟まず、最後まで黙って聞いてくれた。
「……ハルト兄様がお隠しになられるはずだ」
すべてを聞き終えたエリドさんは、やはりというか酷く狼狽した様子だった。
それでも彼は平静でいようと努力して、話を聞く姿勢をまだ保ってくれている。
息子のエハトゥさんは動揺が顔に出てしまっているが、それでもギリギリのところで耐えていた。
やはり、この二人なら大丈夫だろう。
「一〇〇年後の今日。すべてのエルフたちは真実の歴史に触れられるようになります。そうなるよう、俺が記憶の精霊との契約を更新しました」
確信を得た俺は、エルフ族の未来をこの二人に託すことにした。
これはフリードレアの政治を担っていく二人への宿題でもある。
エルフからすれば一〇〇年なんてあっという間だろう。それでも人々の意識を変えるには十分な時間だ。
相当頑張らないといけないだろうけど、それくらいやってもらわないと。
────あなた達が何も知らないまま滅びていくなんて、そんなの俺は許さない。
「……その日に向けて準備せよと、勇者様はそう仰るのですね」
「エルフと魔族が和解する日はいつか必ず訪れる。それはエイミーの願いでもあり、俺自身もそう望みます」
どうにか口を開いたエハトゥさんに頷き返し、俺は思うままを告げた。
「……できるでしょうか。我々に」
「大丈夫。ハルトがこんなにも愛したあなた達なら、きっとできます」
新たな呪いを、憎しみの連鎖を生み出さないためには、今を生きる人々が常に考え続けて、最後の一線を踏み越えないよう思い留まるしか方法は無い。
素直な俺の気持ちを伝えると、二人の表情が少しだけ穏やかなものへと変わったのが分かった。
「分かりました。連邦大議長として、この身に受け継がれたカシギの血と八百万の精霊に誓いましょう。平和に向けて、我々はいかなる努力も惜しまぬと」
「私も誓います! 同じ過ちは決して繰り返しません!」
俺の言葉を受け取り、エリドさんとエハトゥさんはそれぞれの言葉で誓いを立ててくれた。
瞳を通じて二人の前向きな心が伝わってくる。
どうやら俺の想いは正しく伝わったらしい。よかった。
「エリドさん、手を」
彼が差し出した手を握り、俺は記憶の精霊に強く願った。
すると俺からエリドさんへ何かが流れてゆき、彼も何かを感じ取ったのかハッと目を見開く。
「こ、これは」
「エリドさんが認めた人も真実の歴史を見ることができるよう、記憶の精霊との契約を一部移しました。どうか先程の言葉を忘れないでください」
もう彼らを守る不老不死の英雄はいない。
ハルトは良くも悪くも過保護すぎたんだ。
エルフたちが滅びを免れるかどうかは、これからの彼らの努力次第。そうあるべきだと俺は思う。
「変わられましたな。昨日までとはまるで別人のようだ。面構えが違う」
まるで孫の成長に驚くお爺さんみたく、エリドさんが双眸を崩す。
「そ、そうですか? ……まぁ、俺も色々と学ばされましたから」
宇宙でハルトと通じあったあのとき、俺は彼の三万年に及ぶ人生を追体験した。
変わったというなら、それはきっとハルトのおかげだろう。俺の言葉にエリドさんは納得したように頷いた。
「ハルト兄様の葬儀は後日、国を挙げて行います。その際はヒロト殿から国民へ向けて是非一言頂きたいのですが……」
「すみません。実は俺たち明日にはここを発とうと思ってて」
「そんな!? つい先日来られたばかりなのに……」
俺が明日エルフェリアを出発すると告げると、エハトゥさんがしゅんと肩を落とす。
彼の方がずっと年上のはずなのに、俺よりも幼く見えるのがなんだかおかしくて思わず笑ってしまった。
「すみません。でも、別れはもう済ませましたから」
正直、この地に留まって彼らの行く末を見届けたいという思いはある。
だけどこれ以上ここに留まっていたら、きっと先へ進む気力が失せてしまう。
そう思えるくらいこのお屋敷の空気は懐かしくて、居心地がよかった。
それに俺はハルトが次の生へ向けて旅立ったことをもう知っている。
彼に恋したアリアが導いて送り出してくれたんだ。未練なんて欠片も残さず逝けただろう。
だから今は立ち止まらず先に進むべきなんだ。
「そうですか……。分かりました! では今宵は宴にしましょう! あなた方は救国の勇者なのですから、それくらいはさせてください!」
「それはよい考えだ。ハルト兄様もきっとそれを望まれるだろう」
エハトゥさんの提案にエリドさんも笑顔で頷き、すぐに宴の準備で屋敷中が慌ただしくなる。
そうしてあれよという間に準備は整い、その日の晩。
「────それでは僭越ながら乾杯の音頭を取らせていただきます。救国の勇者、その旅の行く末に幸多からんことを願って! 乾杯!」
「「「「「かんぱーい!」」」」」
発案者であるエハトゥさんの音頭を皮切りに、盛大な宴が始まった。
屋敷の使用人たちや、その親類縁者までもを呼んでの大宴会である。
襖の取り払われた大広間には見た目にも美しい伝統料理の数々が並び、どこか懐かしい味に心も腹も満たされた。
余興として民族楽器の演奏に合わせた舞踊や、エルフ流の落語なんかも披露され、俺たちはエルフェリアで過ごす最後の夜を大いに楽しんだのだった。




