0110.a 天空の大会談
──エスぺリサ王国 首都オーラン──
雲一つない晴れ空に映し出されたアマーリアの虚像は、ゆったりとした動きで大地を見渡した後、神妙な面持ちで口を開いた。
普段の彼女を良く知る者が見れば、その目がどこか虚ろであると気付けたかもしれない。
『今、私は神の御力により全世界の人々へ向け語り掛けています』
第一声で相手の思惑を察したラルフは「やられた」と奥歯を強く噛み締める。
よもや自分がやったことをそっくりそのままやり返されるとは。
とにかく今は一秒を争う場面だ。
通信妖精が棲み処にしている飾り壺へ飛びついたラルフは、中で欠伸をしていた妖精をむんずと掴むと、大声で通信先を告げた。
「陸軍通信部に繋げてくれ! 大至急だ!」
数秒とかからず通信妖精の身体が光を放ち、あちら側の慌ただしい喧騒がラルフの耳に届く。
「私だ! 空の様子は確認しているな!?」
『はっ! 現在、相手方の使用している魔力波帯を特定中であります』
「素早い対応感謝する! それと“例のモノ”をすぐに私の執務室まで持ってきてくれ!」
『了解であります!』
ラルフが指示を出している合間にも、空の上に居座るアマーリアは屋内にいる者たちにも表に出てくるよう呼びかけていた。
やがて世界中の人々が空の異変に気付いた頃、彼女は口を開いた。
『これから私が語ることは神に誓ってすべて真実です。ショッキングな内容ではありますが、どうか心して聞いてください』
そう前置きし、アマーリアは淡々とした口調でつい先程起きたばかりのフェーブの自爆テロについて語り始める。
『つい先程、エスぺリサ王国の内陸部にある大都市フェーブで、聖神教の教会を狙った自爆テロが発生しました』
エスぺリサ王国。
その国名を聞き、空を見上げていた者たちの多くは、つい数ヶ月前の出来事を思い浮かべた。
世界中の魔導ラジオをジャックして放送された、王子による暴露劇。
あれ以降、世界中で聖神教に対する不信感が強まり、宗教的な弾圧を受けていた地域ではそれまでの反動のように暴動やテロも起きている。
『かの国では我々に対する怒りが今も渦巻いています。フェーブ市内の教会は、かの国で肩身の狭い思いをしていた信徒たちの最後の聖域となっていました』
道行く人々は足を止め、空に浮かぶ美貌を熱心な眼差しで見上げている。
するとアマーリアの姿が霞のように消え、自爆テロのあったフェーブの町並みが空に映し出された。
無残にも吹き飛んだ教会と、その前で泣き崩れる人々の悲痛な叫びが大空に木霊する。
『今日も教会には多くの信徒たちが集い、週末の祈りを捧げていました。そんな罪のない人々の命がつい先程、無残にも奪われたのです!』
涙さえ浮かべて語る彼女の姿は、誰の目にも悲劇のヒロインのようであり、神聖で、善なるものであるかのように映った。
これは人という生き物の奇妙な習性だが、人は美しいモノを見たとき、無条件でそれが善いものであると思い込んでしまう。
つい先程起きたばかりのテロの真実など、大衆にとっては知りようの無いことだ。
白昼堂々、大空に現れた美貌の法王。
その口から衝撃的な事件の速報が語られれば、続く二の句もそのまま大衆の中で真実となってしまう。
『そう、奪われたのです! 誰が、何のために、こんな惨いことを! 皆さんも当然疑問に思うことでしょう』
人々に投げかけるようにアマーリアが首を巡らせる。
『つい先日エスぺリサ王国で起きたことを振り返ってみてください。かの国から信徒の多くを追い出したのは、果たして誰であったでしょうか』
全世界の人々が固唾を呑んで空を見上げる中、美貌の法王はついにその名を口にした。
『ラルフ・ガルドア・エスぺリサ。暴力を以て王位を奪い取った、かの邪知暴虐の王こそ、今回の自爆テロを指示した犯人なのです!』
『それは聞き捨てなりませんな。法王猊下』
直後、アマーリアの虚像の横にラルフの姿が浮かび上がった。
王宮の執務室にいるラルフの眼前には、滑り込むようなタイミングで広域通信魔導具を持ってきた陸軍通信兵の姿がある。
先のクーデター実行時に使用した広域音声発信装置が予想以上の効果を発揮したため、映像も発信できる改良型の開発が密かに進められていたのだ。
『私の声に聞き覚えのある者も多いとは思うが、改めて自己紹介させていただこう。私がエスぺリサ王国、現国王、ラルフ・ガルドア・エスぺリサである』
最初は雑音交じりだった音声も次第にクリアになっていく。
陸軍通信部隊が聖法国側の魔力波帯を特定し、相手の魔力に相乗りする形でラルフの顔と声を全世界の空に届けたのだ。
美貌の法王と並べても見劣りしない美丈夫の登場に誰もが混乱する中、ラルフは即興で台詞を組み立てながら口を開く。
『さて、自己紹介も済んだところで改めて言わせていただく。法王猊下の仰ることはまったくの事実無根である』
私が自爆テロを指示したなどという事実は一切存在しない。
そうキッパリと言い切った上で、ラルフは海の神と聖なる神、二柱の神に誓いを立てた。
『み、皆さん惑わされないでください! この男は嘘を吐いています!』
予想外の事態に一瞬戸惑いを見せたアマーリアだったが、新たな台本を渡されたのかすぐさま持ち直して反撃を始める。
『では私の言葉が嘘であると今ここで証明していただこう』
『私に与えられた神託のスキル。これこそが嘘の証明です。神は仰いました。あなたこそが世界に害を成す人類の敵、覇王であると!』
『覇王とは、また随分と厳めしいですな。いかにも年若い新人冒険者が秘密の日記帳にしたためていそうな肩書きだ』
ラルフの正面、執務室の出入り口を警護していた兵士たちの鼻笑いが僅かに音声に入り込む。
ラルフの例えがあまりにも的確すぎたせいだ。
『話を逸らさないでください! とにかく、神があなたを敵と仰った以上、我が国は相応の手段を取らざるを得ません』
『そう事を急がれるな。見たところ、以前お会いした時と比べて随分とお顔の色が悪いように見受けられる』
まるで世間話でもするかのような調子で、ラルフがアマーリアの顔を覗き込む。
二つの映像は別々に映し出されたものであり、実際に二人が対面で話し合っているわけではない。
にも関わらず、ラルフは己の立ち位置と視線を調整することで、空の上に映し出された自分の虚像がアマーリアの顔を覗き込んでいるように見せたのだ。
効果は覿面だった。
相手の顔を見て話すラルフと、どこか視線のズレたアマーリア。
それはまるで、疚しいところがあるために視線を逸しているかのように人々の目に映った。
『おおなんということだ! 似たようなことがつい先頃にも我が国であったばかりではないか! 猊下は何者かに心を乱されているに違いない!』
『そ、そんなことはありません! 皆さん! この男の言葉に耳を貸してはなりません!』
天空ショーの勘所を掴んだラルフは、まずは落ち着いて私の話を聞いてほしいと、自分を見上げている人々に視線を巡らせる。
『此度のフェーブでの一件だが、これは世界的な犯罪組織、多頭蛇の陰謀によるものである』
『お黙りなさい!』
『先の王位継承については私自身、いささか強引なものであったと反省している。信じる神は違えど、そのことで臣民が傷つくのは私としても本意ではない』
その上でラルフはフェーブの教会についても陸軍の精鋭たちを送り警備に当たらせていたことを打ち明けた。
『夢見花、という魔物を知っているだろうか。これは森林系ダンジョンの奥深くに生息する魔物で、人間を含む多くの生物を眠らせる花粉を持っている』
オーランの街角で空を見上げていた冒険者が「禁制品じゃねぇか」と訳知り顔で呟いた。
すぐにラルフの口からも、少しでも吸い込めば屈強な冒険者と言えどひとたまりもない劇薬であることと、そのため冒険者ギルドがこれを禁制品に指定していることが語られる。
『それが何だというのですか。関係の無い話で煙に巻こうとするのはおやめなさい!』
『大いに関係あるとも。なにせ今回の自爆テロに先立ち、この夢見花の花粉が教会周辺にばら撒かれたのだから!』
禁制品とはダンジョンの外に持ち出すことすら許されない品のことだと、先の説明を補強し、ラルフはさらに続けた。
『我が国の法でも夢見花の花粉は所持しているだけで極刑が課せられる。売って金に換えることもできないモノであるし、持っているだけ損な品だ。普通の冒険者であれば持ち出そうなどとは考えもしないだろう』
確かに。そりゃそうだ。
空を見上げていた観衆たちの中から次々とそんな声が上がった。
艶のあるバス・バリトンで紡がれる理路整然とした反論は、それを聞いていた人々の心を徐々に惹きつけ、観衆の注目はラルフへと集まる。
すっかり場のペースを支配したラルフは、いよいよ事態の核心へと迫っていく。
『ならば、そんな品を持ち出すとすれば誰であろうか。それは非合法の品を扱う日陰の者たちに相違ないだろう』
新たな敵の存在を強く仄めかし、ラルフが再びアマーリアへ視線を向ける。
依然として美貌の法王の視線は何もない虚空を向いたままだ。
『猊下はすでにご存じと思うが、私が王になる前夜、ここオーランで聖神騎士団による多頭蛇の一斉摘発が行われた。その際、奴らの拠点から夢見花の花粉が大量に見つかっている。これは果たして偶然の一致だろうか?』
『そ、そのとき騎士団が押収した花粉をあなた方がこっそり盗んで自作自演のために使ったのではないですか!?』
『押収品に関しては多頭蛇の帳簿と照らし合わせ、冒険者ギルド立ち合いのもと、すべて焼却処分されている』
ラルフが指を鳴らすと、冒険者ギルドの印が押された実際の書類が空に映し出される。
執務机の引き出しに入っていた書類を通信妖精がカメラの前で広げたのだ。
『無論、当日現場に立ち入った者は全員が教会で真偽判定を受けている。そのことについては貴国にも公式な記録が残っているはずだが?』
教会で真偽判定を受けたということは、聖なる神の前で身の潔白が証明されたということである。
そこにケチをつければ自らの神を否定してしまうことになるため、アマーリアは口を噤むしかなかった。
『今一度言おう。今回の件は多頭蛇の仕業だ!』
『……あくまで己の罪をお認めにならないと。そう仰るのですね』
話の筋を強引に戻そうとするアマーリアを無視して、ラルフはさらに声のボリュームを上げてまくし立てる。
『多頭蛇の犯罪行為の数々は枚挙に暇がない! 殺人、強盗、強姦、人さらいに人身売買、違法薬物の密売に、利益を目的として戦争の火種を生み出したりもする。今回のようにな!』
『みなさん! 聞いてはなりません! どうか私を信じて!』
『嫌な言い方だが、戦争とはいつの時代も莫大な金がかかるものだ。武器の調達から始まり、兵士を増員すればその衣食住にも金がかかる!』
タイミングよく、ジャラジャラと硬貨が撒き散らされたような音が響く。
ラルフの姿を撮影していた兵士が助けになればと思い、懐から取り出した財布をひっくり返したのだ。
『戦争など国からすれば大赤字だが、それらの物資を売る側からすればこれほど大きな儲けのチャンスもない。多頭蛇は歴史の闇に潜み、そうして戦争の火種を生み出しては人々の対立を煽り、双方の陣営に武器を売って莫大な利益を上げてきた!』
共通の敵、それも聖神教の教義からしても悪と断言できる存在が示されたことで、今や多くの者たちがどちらの言葉を信じてよいか迷い始めていた。
いよいよ大詰めとばかり、ラルフは勇ましい口調で人々へ呼びかける。
『今回の教会を狙った自爆テロの影には多頭蛇が潜んでいる! 奴らは罪のない市民の命を奪い、我々の対立を煽り、そこに付け込んで武器を売り儲けようとしている!』
事ここに至り、もはや放送の主役はラルフへと移っていた。
反論の声が無いのをいいことに、ラルフの弁舌は止まらない。
『みんなどうか奴らの企みに騙されないでほしい! やれば必ずやり返されるのだ! そしてその矛先が向くのは、今この空を見上げている君たち自身や、君たちが愛する家族かもしれない!』
人魔大戦で多くの国々が滅びたことで、戦争の火種となり得る諸問題も、その多くは物理的に消滅した。
だが六〇〇年という歳月は、新興国の間で新たな火種を生むには十分な期間でもある。
この一〇〇年、地上から争いの火が絶えた日はない。
今日もどこかで人と人が争い、誰かの命が失われている。
戦争の記憶が新しい者たちは、再び戦火に巻き込まれる自分や家族の姿を思い浮かべ、身震いした。
平和な国に生きる者たちも、多くの者が真剣な眼差しでラルフの顔を見つめている。
『私は戦争など望んでいない! 当然だろう! やれば必ずやり返されるのだから! 誰が好き好んで愛する家族を、恋人を、隣人たちを、無残で無意味な死に追いやろうなどと思うものか! 人類の敵などアンデッドと魔物だけで十分だ!』
その言葉は間違いなく、今空を見上げている人々の総意であった。
今この瞬間、ラルフはすべての人々の代弁者だった。
『この空を見上げているすべての人々よ! どうか考えることをやめないでくれ! どうすれば自分や愛する人々が傷つかずに済むか、そのことを常に頭の片隅に置いて欲しいのだ』
すべての人々が平和を望めば、世界はきっと今よりも良いものになるはず。
ラルフは最後にそう締めくくり、先程から開いた口の塞がらないアマーリアへ視線を向ける。
『先の迷宮都市での大崩落では、我が国出身の者たちも大勢犠牲となった。当然、理不尽な暴虐を振るった聖盾天使に対して、怒りも恨みもある』
『……っ!』
『だが、だからといって怒りのまま武器を振り上げれば、それ以上に多くの悲しみが生まれることになる。私としても、それは本意ではない』
『え、あ……』
『ついては先日の迷宮都市での件も交えて、貴国とは正式に話し合いの場を儲けたいと思う。猊下も同意してくださいますな?』
『……ウホ』
『うむ! 猊下の同意もいただけたことであるし、この場はこれでお開きとしよう。諸君らも突然空を騒がせてしまいすまなかった。どうか各々の日常へと戻ってくれたまえ。以上、通信終わり』
それを最後にラルフの姿が空から消え、アマーリアも少しオロオロしながらも一礼して姿を消した。
この日の出来事は後に『天空の大会談』と呼ばれ、後世まで語り継がれていくこととなる。
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「────ふぅ……。どうにか丸く収められたな」
生放送を終えたラルフが襟元を緩めて苦笑すると、機材を持っていた通信兵と部屋の外に立っていた護衛の兵士から拍手が送られた。
「お見事でした。しかしいつ多頭蛇が黒幕であるとお気づきに?」
「いや、完全にアドリブだ。多頭蛇云々というのも、すでに判明している事実の穴を憶測で埋めたに過ぎん」
「そ、そうなのですか!?」
「はっはっは。これが外れていたら私は世界一の大嘘吐きとして未来永劫語り継がれてしまうな」
顎が外れんばかりに驚く兵士たちを前に、ラルフは愉快そうに顎を撫でて大笑いする。
「さあ、やらねばならんことが山積みだ! まずはヨーゼフ二等兵。君の足の速さのおかげで我が国は救われたぞ。後日改めて勲章を授与しよう」
「っ!!」
通信機器を持ってきた若い兵士は、軍に入ったばかりの自分の名前を王が知っていたことに驚き、目玉が溢れんばかりに目を見開く。
「意外、という顔だな」
「は、はい! いえ、その、光栄であります!」
「我が軍の兵士の顔と名前はすべて記憶している。今後も我が国のため尽くしてくれよ。今日は助かった。下がっていいぞ」
「はっ! 失礼します!」
今にも決壊してしまいそうな顔でヨーゼフ二等兵が敬礼し、部屋を後にする。
浮かれた足取りで去っていく新兵の背中を見やり、扉の前に立っていた警備兵が「ありゃ落ちたな」と苦笑を浮かべた。
ラルフが人たらしの王と呼ばれる所以である。
彼が若くして軍部を掌握できたのもこの才能あってのことだ。
やがてヨーゼフ二等兵の浮かれた足音が聞こえなくなった頃。ラルフは通信妖精の隠れている壺に向かって声をかけた。
「陸軍諜報部に繋いでくれ。次の一手について相談がある」
◇
──アリオーン聖法国 白星大聖宮──
白亜に輝く大聖宮の一角。
神に由来する品々の納められた宝物庫の扉が勢い良く開け放たれる。
肩を怒らせながら宝物庫に足を踏み入れたのは、まんまと思惑を挫かれたラーハルだ。
「ははは……っ。口の上手い男だ」
口では笑ってはいるものの、内心はまったく穏やかではなかった。
エスぺリサ王国の非道を世界中に訴えかけ、神の名の下に宣戦布告するつもりが、口先八丁で無理やり丸く収められてしまったのだから。
「ですが今更何を言いふらそうと遅いのですよ」
現在、大聖宮内の意見はエスぺリサ王国討つべしで一致している。
ラーハルは今日この日のために自身の派閥を拡大し、聖法国内での発言力を高めてきた。
そして最大の敵対派閥であったダウラス派は不死魔王討伐の任があるため現在国内にいない。
(────偶然生み出せた一匹が迷宮都市から持ち出されていたのは本当に幸運でした)
まるで神に愛されたかのような幸運を思い出し、得も言われぬ全能感に満たされたラーハルは込み上げた笑いを噛み殺す。
アマーリアに打ち込んだ蟲は研究段階で偶然生み出せた特別な一匹だった。
蟲はどんな異能にも感知されず、蟲を入れられた者は【印】を持つ者の命令に無条件に従うようになる。
そしてその洗脳は体内に蟲が残っている限りどんな手段でも解除できず、抵抗もできない。
おかげで今のアマーリアは、ラーハルが吹き込んだ嘘を天からの神託だと心の底から思いこんでいる。
(あの筋肉ダルマの性格から考えて、聖法国に帰還すれば高確率でアマーリアの精神的不調を訴えてくるはず)
そうなればいよいよ王手だと、ラーハルは歩きながら口の端を僅かに吊り上げる。
もしダウラスが難癖をつけてきたなら、アマーリア自身に異能による精神鑑定を受け入れると宣言させればいいのだから。
本人が心の底から真実と思いこんでいる事柄は、その発言が事実と異なっていても真と判定されてしまう。
これは異能による精神鑑定の抜け穴であり、蟲と組み合わせればどんな嘘も真実にできてしまうある種の裏技だった。
アマーリアの正常性が証明されれば、後は公の場でダウラスの発言を糾弾し、神の意に背く逆賊として処刑してしまえばいい。
ダウラスさえいなくなれば最大の敵対派閥は消滅し、ラーハルの意にそぐわぬ者はいなくなる。
「王と神、どちらが正しいかなど愚民でも分かること。神の偉大さを思い知るがいい! 汚らわしい亜人の王め!」
宝物殿の最奥。目当ての品を見つけたラーハルは、台座の上に飾られていた宝に手を伸ばす。
それは竜の革を金の紐で閉じた一本の巻物だった。




