〝さらなる失意〟が必要だった
はたまた一葉で云えば我が貧しき身の上からの理想であった〝これだけで食べて行ける安定した職業作家〟に未だなれないということと、我が目指す〝魂と心と現実の一致〟に至らず仕舞いで終わることへの無念さでしょう。これを換言すれば魂の中の闇の領域を(陰)を消滅させ光で充たす…となりますが、まあしかし、これは…深遠なる宗教の分野に入り込むこととなり、またこれほど「口で云うは易けれど、行うは…」の最たる事柄はありませんので、ちょっと控えますが…何せ、お客様方に欠伸をされても困りますので。へへへ。まあ尤も、平たく云えば、そのう…何と云いますか、酷い云い方ですが一葉には〝さらなる失意〟が必要だったとなりますかね?つまりその…〝魂を光で充たす〟ためには、ですよ。えー、そこでその為の一考に具しますれば、これは既に樋口一葉文学史で知られたことですが、一葉は文友であった平田禿朴から愛想尽かしをされ軽蔑されてしまうというショッキングな出来事を体験しております。また小説「大つごもり」では…えー、こちらは主人公・お峰による窃盗事件を扱っているのですが、実はその…この類のことについて一葉は疑いを掛けられた節も散見されるのです。一葉の真の宝と云えばこれら文学仲間や歌塾・萩の舎における歌人仲間であったと見ます。それであるのにその生甲斐とも云うべき彼らとの関わりを損なうことは果して彼女、一葉にとってはどれほどの痛みであったでしょうか。暮らし行く金銭を得るためだったとは云え、かかる不本意な事態の出来によって人望を損ない(魂の?)理想境とも見ていた職業作家への指向も色褪せ、心も萎えてしまったことでしょう。これを順番に並べますと現実・魂・心となり、この3つがすべて崩壊しかねなかったのです。




