表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/60

ここのところきつかった理由

 また新たな後輩でした。

 送られてくる後輩はもうこれ以下は無いだろうと言う想像を常に超えて来ます。

 後輩と言う名の私に対する試練です。


 あまり細かい事を書くと身バレの可能性すらあるから書きませんが、ぶっちゃけ彼は中程度の知的障害があったと思います。

 IT派遣でシステムエンジニアに育てろと送られてくるわけです。

 彼は日本で育った純粋な日本人ですが、『ひょっとして外国人かな?』と思うくらい、物事を言葉で 説明出来ずに沈黙する事が良くありました。

 せいぜい中学高校レベルの英語力の私に、外国人に英語でマニアックで複雑な物事を翻訳サイトとか使わずに説明しろと言われた際のフリーズ状態に近いです。

 彼は日本語で説明された業務指示を理解出来ない事が良くありました。

 システム的な知識や経験が足りなくて理解出来ないのではありません。


「あれをこうして、これをこうして、それからここがこうなっていたらこうして」


 という時系列や条件を含んだ文章が恐らく理解出来てませんでした。


(今まで全く人としゃべらずに生きてきたのかな?)


 と疑うレベルです。

 何度説明をやり直しても、彼の理解のキャパシティを越えたことを何度聞かせ直した所で無駄でした。

 記憶が困難というより言っている事が解釈出来ないんだから覚える以前の問題です。

 時間の概念も彼は把握が困難でした。

 えっちらおっちら作業をしてて、このペースなら予定の時間が終わってしまう、その当たり前の未来が予想出来ませんでした。

 記憶にしてもそうで、彼の記憶容量はジョジョで例えるなら6部に出てくるスタンドのジェイルハウスロックの攻撃を受けた状態でした。


「あれをしてね」「これをしてね」「〇〇を監視してね」


 と指示をしたあと。


「それとこれはこうだからね」


 を言えば「あれをしてね」が忘却の彼方に飛びます。

 永久に何度も行った注意を言い続けても最後まで直りませんでした。

 そして私は最後まで、彼から喜怒哀楽などの人の情緒をあまり感じる事が出来ませんでした。

 あっ、そう言えば彼の仕事が全然間に合わずに力も及ばず、業務としては無関係な私を先輩だからと巻き添えに残業する事になった際は彼は私に対して苛立ちを表していた気がしますが。

 そうだね。誰も好きで残業なんてしたくないよ。

 帰りたいよね。


 他にも「マジかよ」と思うエピソードは色々ありますが、流石にそこまで細かい事は書けません。

 当然ですが自分も含めて周りに負荷をかけ続けていました。

 彼は今年いっぱいで居なくなったので、再び気力と体力の余力が多少は戻ります。


 彼と関わった事で、彼と同レベルどころかもっと重い知的障害の身内を抱えた人は世の中に多数存在してますが、その人たちがいかに大変かという事を少しだけ学びました。

 私は彼が切られて居なくなる未来は分かっていたから耐えられましたが、身内に抱えてたら逃げられないでしょう。

 もしも彼より重度であればその関係者や身内はこういう重い事実と戦い続けているはずです。


「彼が居なければ、自分はもっと自由で有意義な時間を過ごせていた」

「私が彼の為にどんなに苦しんでも、彼は私に同情したり哀れんだりしてくれない」

「私が彼にどんなに尽くしても、彼は感謝してくれない」

「私にとって彼は只の純粋な重荷だった。無ければ困るようなものは無い」

「彼と関わる事に意味は無い、完全に無意味な苦行であった」

「彼さえ居なければ、それは私にとっての救いとなる」


 当然、そんな薄情な考えなど否定したがるでしょう。

 それが人情というものです。

 彼に関しては会社は非情な決断をしましたが、申し訳ないが私は会社の決断を支持します。


 もしも彼を他のメンバーと一緒にどこかに派遣させようとすれば「二人共まとめて要らない」ともう一人を巻き添えにして迷惑をかけるでしょう。

 彼を支え続けられるような実力者の元に彼を任せ続ければ、会社は彼を守って有能な実力者を手放す選択をする事になります。

 なぜならその実力者は会社を辞めて別へ移れば苦しみと絶望から逃れられると気付き、合理的な判断を行うからです。

 そして営業は彼を色んなお客に推すたびに信頼を失う事になります。

 彼を押し付けた事が原因で、そのお客がもう二度と会社を信頼しなくなって拒否した場合、彼の為にその後何人も入り込めたはずの後輩がその客先に入れなくなるわけです。

 これらをトータルで考えれば、会社としては膨大な金額の損失となるわけです。


 なんにせよ、少しは執筆に割けるエネルギーが今後復活すると思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ