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刷り込みと地獄絵図、そして人生観

 刷り込み効果は恐ろしく、その理不尽な暴力を世界で最もふるっているのがテレビだと思います。

 私はもう10年以上、外食時に置いてあるもの以外は全然テレビは見ませんが、例えば


「ポン酢醤油は……」


 と言われたら「キッ〇ーマン」がさっと出てしまいます。

 私の意思とは無関係に、脳に刻み込まれてしまっている訳です。


 そして人間の性質を決める根本部分にとって、この刷り込み効果は大きいと思います。

 日本の文化圏では、地獄絵図と聞けば誰もが思い浮かぶ物が有ります。

 罪を犯して死んだ後の魂が地獄に落ち、恐ろしい顔で冠を被り、錫杖を持った閻魔大王の裁きを受けます。

 そしてその罪の重さに応じて、串刺しにされたり、体を刻まれたり、油の沸き立つ釜に放り込まれたりといったありとあらゆる責め苦を受けます。


 勿論、私は大人なので理性ではこれは空想だと分かっています。

 しかし知らずに刷り込まれた本能の奥底では、これを事実と受け取っているのではないか?

 偶然地獄絵図の古い絵画を見た時にそう思いました。

 この刷り込みが私の精神にもたらす効果は、自分の意思や理性に関わらず、以下の様な物では無いかと思いました。


・悪い事をする奴は愚か者だ。後で地獄の裁きを受ける。自分は賢く生きよう。

・悪人が酷い目に会ってもそれは当然で、可哀相とも思わない(例えメキシカンマフィア顔負けの拷問を受けていようとも)

・因果応報。人に悪い事をすれば、自分がその報いを受けるのが当然だ。逆に良い行いをすればそれはいずれ自分に返って来る。


 自分から見てびっくりするくらい浅はかな言動を平気でしたり、悪事を平気で行う人間はこういった刷り込みが無いのではないかと思いました。

 自分と違う存在を理解すると言うのは本当に難しい事です。

 確かにもし私の頭の中に、地獄絵図の刷り込みが無ければ、人を騙して利益を得る事になんの後ろめたさも感じず、むしろ賢いと自画自賛したかも知れません。

 そして苛烈な仕置きを受ける罪人を見て純粋な心で、「うわっ、見てられない。可哀相」と思ったかも知れません。

 人生観がころっと変わっていたかも知れません。


 他にも割とよく言われるのが、中国では悪い事をして人を騙しても、国土が広いから逃げてしまえばリセットされて責めを受けない。

 ……という刷り込みを成長の過程で受け、逆に日本人は国土が狭いので逃亡など出来ず、悪い事をして人に迷惑を掛ければ、まっとうな理由が無ければ報いを受けるのは避けられない。

 ……という刷り込みを受ける。

 その結果が国民性に現れてくる。


 私は正直な所、親が毒親だった為、成長過程での主な教師は本やテレビ等の外部メディアでした。

 そして物語は大抵の場合、勧善懲悪がベースとなっていますし、私もそういう物語を書きます。

 その方が美しいですからね。

 汚いものをそのまま汚く書いたって仕方が無いし、理想を描きたいです。

 ある意味道義的に見て理想的な優等生かも知れません。


 でも私は私が認識出来てない多くの部分で、実は刷り込みによって自分を縛る枷を数多く身に着けて、縛られた状態で生きてきたのかも知れません。


 逃げちゃってもいいんですよ。

 人を押しのけたっていいんです。

 上の人間が一件正当な論理で叱責してこようが、支離滅裂に反抗したっていいんです。


 勿論最低限守られるべき物はあり、それが無ければ人類はおろか、犬猫だって生命を残せません。

 でも世界は私が無意識に思っているよりはるかに自由です。


 勿論、人の本質を捻じ曲げる刷り込みも、それによって変異する人生観・世界感も、時と場合によっては利点となり必要にもなります。

 本質を捻じ曲げて、命をなげうって戦わなければならない時だってあります。

 情け容赦の無い、世界一の残虐さを発揮して、社会を狂わす悪を討伐しなければならない時だってあるし、それが無ければ社会の安定した高度な文明は築けません。

 滅私奉公、それを美徳とする人生観を持つ人が沢山いたから、その勢力は強大となったんです。

 遊び惚けて緩み、暴政を働く平氏に対し、質素な生活を行って自分の身を引き締めて鍛錬し、戦った源氏が勝利します。

 自分達の利害を外に放り投げて、キチガイになって吉良上野介を討伐した人が居たから、ふざけた遊び心で人を無駄に弄んで喜ぶいじめ体質の連中に対する牽制となったのです。


 でもそういった刷り込みで凝り固まった私を驚かせて、違う物を示すのが魔法銃士ルーサーの物語で言う所のミツールでしょうね。

 そう言ったまるで違う人間を描くと言うのは、作者自身がまるで違う刷り込みで育った人間を理解しなければならないと言う事で、途轍もなく難しい事です。

 特徴的な表面の言動を真似る事は出来ますが、本質を理解して描ける作者なんてほとんど居ないでしょう。


 地球上のほとんどの生命が雄と雌、全然別な物同士を交配しなければいずれ均質化から弱体化して滅びます。

 物語の英雄は自分の生まれ育った境遇と全然違う世界を冒険しなければ成長出来ません。

 一人で同じ環境で生き続ければへんな癖がついたまま凝り固まってしまいますし、その状態で一億年も生き続けられたら害悪です。

 だから短い寿命でとっとと立ち去れって事なんでしょうね。


 などと、昨日夜遅くまで仕事してたせいで逆につかれて早寝早起きしてしまったので一話、書いてしまいました。

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