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君だけが俺をユイと呼ぶ  作者: shiyushiyu


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40/54

第40話 過去

「もう関わらないでくれよ」

 小学生の頃に親友だと思っていた人に言われた言葉だ。

「ちょっと待てよ。何で!」

「落合って、何考えてるかわかんねぇんだよな」

「はぁ? どういう意味だよ」

「何て言うか、答えを分かってるのに教えてくれない感じ?」

「いや。それは上手く伝えられないだけで」

「いっつも俺たちのこと見下してるだろ?」

 余計なことを言わないでいただけなのに、それが見下しているように見えるのか……


 でも本当のことを言っても怒るんだろ?


 人付き合いってめんどいな……


 だからだろうな。

 高校に入ってから最初に、人付き合いから避けていると思っていた朝倉が、クラスで一番目立つ存在に声をかけたりかけられたりしていて……


 気になって。

 声をかけて。

 気がついたら、俺もめんどくさい人付き合いをしていた。


 朝倉ってすごいな……


 ●


「転校?」

「あぁ。俺は俳優になりたいんだ。その夢を追いかけたいと思ってる」

「都内に行くなら離れ離れになっちゃうね……」

「何だかんだ佐々木とは小学生の頃からの付き合いだからな」

「幼稚園からだよ」

「そうだったか?」

「だいちゃんとは、高校も一緒だと思ってたのに残念」

「離れても連絡は取れるから」

 そう言って、私の好きな人は私に連絡先を教えてくれた。

 私は、高校も一緒だと思っていたから告白を先延ばしにしてたのに……



 いや。違う……


 私は先に進もうとしてなかっただけで、だいちゃんはどんどん先に進んでたんだ……


 朝倉はすごいな……


 ちゃんと気持ちを伝えてるんだから。


 だからこそ。

 かおるちゃんにもしっかりと気持ちを伝えてほしいって思う。


 私と同じ思いをしてほしくないから……


 ●


「気持ちわるーい」

「近寄るなよ」

「塩田菌が移るぞー」


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 幼い頃から引っ込み思案だった私は、いっつもクラスのいじめられっ子だった。


 なるべく目立たないように。

 敵を作らないように。

 自分の意見は押し殺して、周りに同調していた。


「塩田って何でそんなにうじうじしてるんだよ」

 小学生の頃、幼なじみに言われた言葉だ。

 私だって、好きでうじうじしてるわけじゃないのに。

「え? そんなにうじうじしてるように見える?」

「みんなキモいってさ」

 ホント。心ない一言を平気で言う……

 幼なじみですら、私のことを空気だと思っていて、クラスからハブられるのを防ぐために私を利用している。

「俺も同じ意見だから。もう一緒には帰らない」

 あぁ……やっぱりね……


 そんな私を救ってくれたのは、朝倉くんだった。


 高校でも、目立たず友達も作らず空気のような存在だった私。

 そんな私を見つけてくれたのが朝倉くん。


 今のままでいいと言ってくれた。

 私に友達と居場所をくれた。


 私の王子様……


 ●


 はるくんは、私が転校した時にはもうクラスの人気者だった。


 親の事情で転校を繰り返す私に、友達なんかできるはずもなく。


 更にはうちは普通よりもお金がある家だった。


 私に近づく人は、お金目当ての人しかいなかった。


 私も別に気にしなかった。


 けど、クラスで目立つはるくんは、私にはとても輝いて見えた。


 眩しい存在ではあったけど、ただそれだけ。


 それが大切な存在になったのは、クラスのプリントを私の家に届けてくれたから。


 何てことないことだけど、何の見返りもなくそういうことをする人がいることが、幼い頃の私には衝撃的だった。


 それからは、気がつけばはるくんを目で追いかけるようになり、はるくんは私の全てになっていった……


「はる様……私ははる様のためなら何でもできるわ……自分を殺すことだって」


 だから私ははる様と河村くんの目の前で腕を切った……


 ●


「はるくん!」

「吉岡?」

「私の気持ちに気づいているよね?」

「俺の気持ちも知ってるよな?」

「コンって人のこと? はるくんは、私を一般人にしたのよ? その責任を取ってちょうだい」

「俺も吉岡もずっと一般人だろ?」

「私はずっと特別な存在よ?」

「そうか。特別でも何でも俺はコンだけだから」

「そう……私は覚悟してるわよ?」

「カッター? 俺を脅す気か?」

「最後よ。私の気持ちに応えて」

「悪いけど無理だ」

「そう……さよなら……」


 私は分かっていた。

 はる様なら絶対に私を選ばないことを。


 だからこそ、私ははる様のことを好きになったのに……


「吉岡! 吉岡ー!」

 私ははる様の目の前で、自らの手首を切った。


 数日間、私は生死を彷徨ったらしい。


 私がいない世界は、無意味だと思った河村くんは、はる様の目の前で首を切ったらしい。


「吉岡……しげが……しげが……」

 泣きながら私が寝ているベッドで、はる様が呟く。

 私が目を覚ましたのに、気がついていない様子だった。


「はるくん……私と結婚して……」

「バカを言うな……けど……それで許されるならそうすべきかもな……」


 その翌日、はる様は引っ越してしまった……


 私との約束をそこに置いたまま……


 ●


「ユイー! 見てここー!」

「すっげー! こんな場所があったのかよー」

「ここさ。コンとユイだけの秘密の場所にしようよ!」

「いいな! 秘密基地だな!」

「かっこいいー!」


 私とユイは長い間を、この秘密基地で過ごした。


 雨の日も風の日も晴れの日も雪の日も……


 ここには、私とユイの全てがあった――

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