↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君だけが俺をユイと呼ぶ  作者: shiyushiyu


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/54

第41話 好き

「全て?」

 俺は涙を流す白石に質問を投げかけた。

 全て。という曖昧なものでは納得できないからだ。

「全ては全てだよ」

 白石は俺の顔を真っすぐに見た。

 あぁ――

 この顔、

 俺は見覚えがある……

「ねぇユイ……」

 白石の頬に涙が零れ落ちる。

「ユイがコンとのことを忘れちゃったのは、コンのことが嫌いになっちゃったからなの?……」

 違う。

 それは絶対に違う。

 なぜだろう……

 口に出せないのは……


「ごめん。忘れて……」


 そう言う白石の頬はもう濡れていなかった。

 でもその表情はとても悲しそうで、寂しそうで、優しそうで――

 女神がいるならきっとこんな人だ――


 ●


 あれから白石のあの時の表情が頭から離れない。

 結局俺には、あそこに何があったのかは分からないままだ。

「白石のあの顔……絶対に幼い頃に見てるんだよなー」

「またそれかよ。ホント白石自慢が多いな朝倉は」

 落合に小突かれた。

「別に自慢してるわけじゃなくて、俺はたぶん、白石の寂しそうな顔とか悲しそうな顔とかが忘れられないんだ」

「はいはい。そういう顔をたくさん見てるってことね」

「というよりも。女々しいんだと思うな……」

「じゃあ残る問題もあと少しだな」

「残る問題?」

「いや。こっちの話し。とりあえず白石が同好会に戻ってきそうでよかったよ」

「塩田も白石に声かけてくれるって言ってたわ」

「お。ならもう戻ってきそうだな。はやくタイムカプセル埋めちゃおうぜ」

「あそこの神社でいいのか?」

「いいんじゃないか? 俺たちの原点だしな。冬になったら雪とか降って埋めるの大変になるぞー」

「もう冬だろ」

「冬と言えば、12月は白石の誕生日だからな?」

 落合に言われて思い出した。

 そうか……もう白石の誕生日なのか……

 昔は2人っきりで祝ってたのに、今年はみんなで祝うんだな。

 そう思った瞬間、なぜか胸がチクリと痛んだ。


 ●

 私はずっとはる様……いや。

 朝倉くんの人生の足を引っ張っていたんだね……

 自分の欲求を満たすために。

 いや。それも違う。

「私は認めたくなかっただけなんだよね……」

「それが分かっただけでも前進でしょ?」

 この女は最近いつも私の傍にいる。

 そして正論をズバっと言ってくる。

「佐々木ゆかり。この私に正面きってこういうこと言えるのは、アナタと朝倉くんだけよ」

「それならもう、私たちは友達ね」

 そう言ってこの女は私に笑顔を向けてくる。

「キミはいいよね」

 などと言ってくる。

「何がよ。フラれたのよ?」

「自分の気持ちを伝えられてるじゃん。私なんて伝えられてないからねー」

「それは、フラれてでも伝えた方がいいものなの?」

「当たり前じゃない! それにこういう言い方をしていいのかは分からないけど。フラれたって好きでいていいのよ?」

「アナタは私が知らないことをたくさん教えてくれるのね」

「私も教えてもらったしねー。それにしてもそうかー……。朝倉は目の前で親友がねぇ……そりゃ頭も痛くなるし思い出したくないだろうし、私たちなんかよりも大きな物を抱えていたんだね……」

「私ははるくん……朝倉くんに」

「はるくんでいいよ。自分の気持ちに嘘はついたらダメ」

「そうね。私ははるくんにとんでもない傷を負わせてしまったわ……これからどうすればいいの?」

「そうね。難しいことだけど、どうもしなくていいと思うわよ? 強いて言えば、昔のことで執着したりすることは辞めてあげたら?」

「離れなくていいの?」

「離れたいの?」

「離れたくない。けど、一緒にいちゃいけない気がしてる……」

「大丈夫大丈夫。離れたくないなら好きでいな。朝倉はそんなことで文句を言うような男じゃないわ。それに、朝倉自身もこのことを乗り越えたいって思ってるみたいだしね」

 そう言ってこの女は私のことを優しく抱きしめてくれた。

 まるで天使みたい……



 ●


「ユイがコンとのことを忘れちゃったのは、コンのことが嫌いになっちゃったからなの?……」


 この言葉がずっと頭から離れない。


「なんですぐに否定できなかったんだろ?」

 俺は絶対に白石のことを嫌いになんてならない。

 いや。すぐに否定できなかった答えは分かってる。

 俺は、怖かったんだ……

 過去の真実を知ることがどうしようもなく不安で怖くて……

 白石に嫌われそうで――

「そっか。俺……白石のことが好きだったんだ……」

 草原で遊んでいた時から今も変わらずに――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。