協力関係
そこに居たのは、あの時助けた少年であった。
「え〜と。一体なんのことかな?」
「とぼけなくていいですよ。僕は貴方の味方ですから」
味方と言われ動揺するも、確固たる証拠が無かった。
「あの動画を撮ったのは、僕です。あの時偶々居合わせたんですよ」
「味方と言うのなら何をしてくれるんだ?いや、、これはあくまで俺がそいつであった場合だけど」
「まぁ、その感じでいきましょうか。僕は貴方にリーダーになって欲しいんです。この弱者が淘汰される世界の」
「リーダーってそんな。ただあれの何がそんなに皆の心を掴んだんだ?」
「この世は平等であるべきだ。それは性別や人種全ての垣根を超えて。けど現実は違う。ブスだったりバカだったり、他の人より劣るだけで、排除される。平等というのは、一定を基準を満たした人だけだ。それはなんだか、、うーん一言で言えばキモくないか?」
竹田は黙ってしまった。彼の言う弱者には竹田自身も当てはまっていることは自分でも十分理解しているからである。だが、それが一概に殺人とどう関わってくるかが疑問であった。
「なら、その強者とやらを全員殺すのか?」
「確かに、ネットではそんなことを言っては人も居ますね。けど、僕は違います。僕が目指していることはアピールすることです。弱者の人権を」
「そのためには、同じ思想を持った人で統一する必要がある。僕に協力してくれますか?」
竹田は少し悩んだ後、すぅと息を吸い込み決心したように頷いた。
「分かった。協力しよう」
「それはよかった。ならこれが僕の連絡先です。次向かう時は教えてください。動画を撮りますから」
そういうと、その少年は家を後にした。竹田にとって協力者というのは悪い話ではなかった。SNSを見ても賛同してくれている人たちも多くいる。
ただ、逆にいえば自分が目立つことは否めないのである。
小形が出張に向かっている最中、高山は内勤調査をしていた。普段なら面倒なこの仕事であるが、膨大な情報を前にしては、この手間は必要なことであった。
「高山さん。少しいいですか?」
「どうしたんすか?」
高山に声をかけたのは他部署の城であった。この事件の捜査のため、多くの人員が捜査に当てられている。
「少しこれを見てください」
城が見せたのは6NETという匿名掲示板であった。この掲示板には様々な投稿がされており、爆破予告などをする人もいるため、警察も時折その投稿を監視することもあった。
「これは今回の事件についてっすよね」
「はい。それで気になる点がありまして」
城によれば、この投稿で一番多い人が殺されており、次に襲撃される対象がわかるかもしれないということである。
「で、次はどこが襲撃されるんすか?」
「今日の午後13時に実行すると犯人と思しき書き込みがありました。建山工場の工場長、建山園です」
「なら向かうしかないっすね」
高山と城、そして城の部下登川を連れて建山工場に向かうことにした。
「高山さん。工場は閉めてもらって、避難してもらっています」
「わかりました。調査するっすよ」
時刻は丁度正午を回ったあたり、三人は工場の中に待機し、待ち伏せすることにした。
工場の中を見渡したとしても特に異常が見られることはなく、ただいつも通りのようであった。
そうこうしていると時刻はまもなく13時を指そうとしていた。事務所で監視カメラを見るも何も映っておらず、異変も見られることはなかった。
「デマだったのでしょうか」
「そうっすね」
二人が安堵したその時であった。パンパンと二つの銃声が後ろから響き合った。その音に反応し、高山と城は咄嗟に机の後ろに身を隠した。
「登川!」
撃たれたのは登川であった。そして事務所の入口には覆面を被った者が銃をこちらに構えていた。
あの投稿は事実であった。高山と城は相手の出方を伺う。特に高山はあの動画を見ていたため警戒をしていた。こちらが仕掛ければ逆に負ける可能性が高い。
「城さん、応援を呼んでください」
「わかった」
城は無線で応援を呼ぶ。だが、向こうからの返事はなかった。
「繋がりません」
高山は一つの可能性を思いついた。もしかしたら電波障害を起こす機械を所持している可能性だ。現場付近の防犯カメラの故障、今回の無線封鎖、全て辻褄が合う。
「二人で仕留めないといけないっす。ほんとなら拘束したいっすけど、今はそんなこと言ってられないっす」
向こうも机の裏に隠れているのか、お互い様子を伺っている状況であった。
「さぁ、降参するなら今のうちっすよ」
向こうからの応答がなかったため、高山は左、城は右側から囲い込むように進んでいく。
机二つ分進んだ頃、城の進んでいる右側からパンと一つ発砲音が鳴った。
ドサリと倒れる音が聞こえる。高山はそっと物陰から確認すると、それは城であった。
状況は一対一となってしまった。高山は物陰に隠れながら相手の場所を伺う。
高山は後ろから殺気を感じ咄嗟に身構える。後ろから覆面を被った者が拳を繰り出しており、高山は吹き飛ばされる。幸いにも左腕が折れただけであった。
高山は銃を構える。その照準はその者を捉えていた。
「君の目的はなんすか?」
ハァハァと息を吐きながら高山は問いかける。
「それは、、、正義。貴方達は正義ではありませんので」
「それはこっちのセリフっすよ」
パンと一つの銃声と共に、弾丸が発射された。それは確かにその者に当たったはずであった。しかしながら血が一つも出ない。まるで豆鉄砲を喰らったようであった。
「なにそれ、ずるいっすよ」




