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封神千希「俺は新人対魔剣士」  作者: アリエス
一章

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18/20

四、弍-前「価値」

その場に残ったのは、ツカサとジン、そして新たに加わったケイの三人。


ケイは場の空気を確かめるように、わずかに視線を巡らせ、軽い足取りで一歩前へ出る。

探るように間を置き、だが明るさを崩さずに口を開いた。

「じゃあ、僕たちはどこから周ります?」


ツカサは腕を組み、視線はすでに通りの奥へ流れていてる。

「そうだなー」


その横で——


ジンはわずかに視線を落としていた。


(か、かまうなって……かまっても別に……)


「おい、ジン!」


前から飛んできた声に、ジンの体がびくっと反応する。


「あっ、はい……!」


ツカサはすでにジンの方へ体を向けて、視線を定めている。

「じゃあ、まずどうする?」


「えっ、どうするって!?」


反射的に返すジン。


ケイは一歩分距離を保ったまま、二人のやり取りを静かに見ている。


ツカサの口元がわずかに緩む。そのまま、間を置かずに言葉を続ける。

「お前、話聞いてたのか?」


「えっ、あっ……」


言葉が詰まる。


(聞いてなかった……)


ジンの視線がほんの一瞬だけ逸れる。


ツカサは一度だけ短く息を抜くと、すぐに前へ視線を戻す。

「カエデ達は北の東の方から、俺たちは、南と西の方からだろ」


そう言いながら、向けた顔はそのままに、視線だけをジンへと移す。


ケイもその後ろにつき、その二人の様子を変わらず見ている。


ツカサの言葉を受けて、ジンは一瞬だけ間を置き、

とりあえず合わせるように、ぎこちなく笑みを作る。

「ああ、そうでした?えーとじゃあ、どうします?」


ツカサは一瞬だけ視線を落とし、間を置いてからジンを見る。

「俺苦手なんだよなー、こういうの、任せるわ!」


ジンのわずかに泳いでいた目が、急に定まる。


「えっ、俺がですか!?」


思わず声が上ずる。


三人のやり取りに、通りすがりの視線がときおり向けられる。


ツカサはもう前を向いている、 躊躇はない。

「ほら、さっさと行くぞ」


そのツカサの様子を見て、ジンは慌てて腰装ようそうから地図を取り出す。

視線を落とし、紙面をなぞる。


カエデから送られた情報が、頭の中で重なる。

さらに、自分自身で見た気の流れとの、位置を照らし合わせていく。


「えっ、えっとじゃあ、ここから行きます?」


差し出すように持ち上げた地図へ、ツカサがそのまま踏み込むように一歩寄る。

肩先の距離がぐっと詰まる。

覗き込む勢いのまま、じわりとジンの肩がツカサの腕に押し込まれる。


(ち、ちかっ……)


一瞬だけジンの意識がそちらに引かれるが、

ツカサはまるで気にした様子もなく、地図へ視線を落とす。


一瞬だけ目を細めて——すぐに口元が動く。

「おっ、よさそうだな!行くか!」


「いや、でも、ここって、カエデさん達と、被らないですかね?」


ジンは少しの慎重さを残し、確認するように言葉を置いた。


「まー大丈夫だろ」

ツカサは軽く腕を組み直し、そのまま空へ視線を流す。


「そ、そうですよね!」


ジンの表情がぱっと明るくなる。

自分を納得させるように一度頷き、そのままツカサへ返した。


その横で——

ケイは、指し示された場所をじっと見ていた。

わずかに視線が止まる。


「あっ、そこ……」


ジンがすぐにケイに顔を向ける。

「えっ?、どうしました?」


ケイは一瞬だけ言葉を探すように間を置き、考えるように目を細め。

「い、いやなんでも……」


「えっ?......」


間を埋めるように、ケイはジンを見て軽く頷いた。

「大丈夫です!」


「そ、そうすか……」


ジンはそう返事をすると、ケイからゆっくりと視線を外す。


(な、なにが……)


ツカサはそんな空気を気にも留めず、すでに歩き出している。

二人も遅れて続く。


——


襄桜じょうおうの宮城、城壁を背に、三人は市街の中へと入っていく。

人の流れが一気に濃くなり、声と足音が重なり合う。

行き交う人々の視線はどこか遠く、互いを捉えきらないまま、ただ前だけを見据えて流れていく。


その中で、ジンは無意識にもう一度だけ地図へ視線を移した。


通りを進みながら、ジンはふと足を緩める。

視線が街の上へと上がる、空気の流れを追うように。

手にした地図と、頭の中の情報を重ねる。


「あっ、このあたりですね、少し上の方に、あの上から見た気もありますし」


そう言いながら、ジンは視線を上げたまま、空の一点に指を向ける。


ツカサもその視線の先を追うように、軽く顔を上げた、どこか探るように。

「ああ、確かに見えるな」


少し後ろを歩いていたケイが、ぱっと顔を上げる。

「えっ、本当すか!?」


ジンは一度だけケイの方へ顔を向け、すぐにツカサへと移す。

「じゃあ、とりあえず、あの見える気を中心にして、この辺りを見ていきましょう」


返事を待つように、短い間が流れる。


そして——

ツカサはふと、通りの脇へと視線を流した。

立ち並ぶ店、その奥から漂う匂いに、ほんのわずかに興味を引かれる。

「あー、腹減ったな、とりあえず飯、行かね?」


一瞬の間。

そして、ジンの声が揺れて出る。

「え?......い、いや、駄目ですよ!......」


戸惑いながらも、少し強い口調。


ツカサは少しだけ目を開けた。

「なんで?」


ジンの表情が、そこで一度止まる。


ジンはわずかに震わせながら口を動かす。

「い、いやなんでって.......」


そう言いながら、自分でも引っかかる。


なんでだ?……


通りの喧騒が、その間をすり抜けていった。


通りの流れに紛れて歩いていた、その先——

わずかに空気が乱れている。

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