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封神千希「俺は新人対魔剣士」  作者: アリエス
一章

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17/22

四「初任務と一族」

そのすぐ側で、ツカサは両手を重ねる。

片方の手で指を組むように絡め、そのまま前へとぐっと押し出している。


「つえー奴だといいな!」


少し離れた位置で、リンもまた、カエデとジンの方へ向き、

静かに体を動かしている、内側の感覚を整えるような最小限の調整。


——


カエデとジンの間だけ、わずかに空気が変わる。

向き合ったまま、二人の視線が合う。


距離は、ほとんど踏み込めば触れるほど——

カエデはそのまま自然に一歩分、間合いを詰めている。

背の高さがある分、視線はわずかに上から落ちる形になる。


対してジンは、ほんの少しだけ顎を上げる形で受けた。

ジンは一度だけ息を整え、意識を引き寄せる。

余計なものを削ぎ落とすように、ただ目の前へと集中する。


(……)


カエデは一切の揺れを見せない。ただ静かに、それを受け止めている。

(……)


わずかな沈黙のあと——


「……これが、今のこの都の魔力の痕跡の状態です」


声は低くも高くもない。


その瞬間、ジンの内側へと“情報”が流れ込んだ。


「はい……」


ジンは反射的に返す。


(さっき見た景色に色がついて、俺の中にでてくる......)


視界ではない。思考の奥から、感じられる感覚。

街の上に重なる気の流れ。濃淡、滞り、わずかな歪み、匂い、思い。

それらが、一瞬で理解できる形で。


そして、カエデにも、ジンの内を巡る流れがそのまま流れ込んでいた。


——その最中。


すっと、カエデの別の意識がジンに差し込まれる。

(ジンさん、先程からなにかと、意識を交わしているようですが、もしあなたが魔に傾くことになれば、あなたはこの対魔一族にはいられない、それを忘れないように)


一切の揺らぎのない、静かな言葉。


ジンの呼吸が、わずかに止まる。


(えっ、な、なにかと交わしている!?、ま、まさか、なんのこと......)


思考が跳ね、ジンの視線が揺れる。

カエデの視線は変わらない。まるで今のやり取りなど存在しなかったかのように——


自然に、次へと移る。

「任務中に確認が、また必要なら、いつでも呼び出してください、もちろんツカサも」


言葉はそのまま、流れも崩れない。


ジンは反射的に背筋を伸ばし、短く強く返す。

「はいっ!」


その横で、ツカサも腕を組み。

「おう!」


(な、なんだ......かわして……い、いつでも呼び出す……)


ジンの思考は、なにかを掴もうと、交錯し続けている。


マサキは一歩先に出て、出口の方を手で示しながら口を開く。

「それでは、こちらからまた」


カエデが短く頷く。

「ええ」


そして、カエデは間を置かず、静かに言葉を重ねる。

視線は三人を順に捉え、すでに説明へと入っている。

「それでは、二手に分かれる前に改めて説明しますが、

 今回の任務の主目的は、魔族の討伐です。

 そのためにまず、魔力痕跡のある場所と、

 報告のあった地点が重なる箇所から当たり、 

 それらで何かの手がかりを掴むことを優先します。

 ただし、それらが誘導や偽装である可能性もありますので、

 その点も含めて見ていきます。

 基本的に、力の強い魔族ほど容易にはこの人界へは侵入できません。 

 仮に侵入していたとしても、相当な制限を受けているはず。

 ですので、この都での活動も、直接的な形ではなく、

 何かしらの媒介や別の手段を介している可能性が高いでしょう。

 その後は、他の魔力痕跡のある地点も順に確認していき、

 状況によっては、その段階を待たずに、里からの増援を判断いたします」


リンはわずかに顎を引いて応じる。

「重なりを当たり、偽装判断、状況次第で増援……はい」


ツカサは、片手の拳を反対の手で押さえ、ぐっと手首に力を込める。

「おう!楽しみだな!」


╫ ▚ ▒ ╫ ▚ ▞ 〓 ╫ 。


(こ、これのことか!?)


ジンは、さっきカエデに心念しねんで言われたことを考えていた。


(おい!)


そんなジンの内側にリンの声が響く。


(はっ!リ、リン!?)


ジンの意識が引き戻される。


流れは止まらないまま——


カエデはツカサ、ジン、リンへと目をやり。

「それでは、ツカサ達は、比較的少ない南と西の方から。

 私とリンは北の東から見ていきます」


マサキ達、カエデ達4人人は階段を降りきった場所から、

城壁内部の宮城側の外へと続く出口をくぐり抜けていく。

半ば外へ踏み出したところで、光と空気が流れ込み、視界が開けていく。


ツカサは即座に頷く。

「おう!」


リンもカエデに短く。

「……はい」


マサキは城壁の門へと歩を向け、そのままカエデたちを伴って、宮城の外側へと先導していく。


リンはそのまま視線は前に向けたまま、ジンへだけに心念しねんを送る。

(お前、やはりなにかと、接触してたな)


(なにかって、なに……)


ジンはリンに返す。


わずかに遅れながらも、カエデにも返す。


「……はいっ!」


リンの意識が、間を置かずに続く。

(......おそらく魔族の類だろ)


(ま、魔族の類?……なんで、わかるんだ……)


ジンはリンの背中に向けて意識だけを返す。


そして、マサキの先導に従い、カエデたちは宮城の内から城壁の門を抜け、

そのまま外へと歩みを進める。


カエデは視線をわずかに上げ、陽の位置を確かめるように空を仰ぐ。

「では、またあの陽が、この都に差し掛かった頃に、合流しましょう、 

 場所はそうですね……この南門前の広場にしましょう」


そう言いながら、カエデの視線は再びツカサ達に向く。

門前には絶えず人が行き交っている。

だがその流れは乱れず、一定の間隔と秩序を保っていた。


ツカサが軽く腕組みをして。

「よし、ここだな」


そのやり取りの横で、リンの意識はジンへと差し込まれる。


(魔族の間でよく使われる言葉の響きだ、あれは)


(響き……)


▚ ▞ ▚ ▞ 〓 


またジンの内側になにかが走る。


リンはカエデに短く頷く。

「……うん」


そのまま間を置かず、ジンにも続ける。


(とにかく、この声に一切かまうな)


(い、一切……)


( 一切だ……あとお前、その口の聞き方、呼び方も、

 普通になったな、許した覚えはないが)


ジンはカエデに言われた、この南門を見上げている。

「ここに集合……」


そしてリンに返す。


(リンの許しがいるのか!?)


カエデは流れを止めず、そのまま次へ繋ぐ。

「その時はまた、心念しねんを送り合いましょう」


ツカサが軽く頷く。


リンも同じように首を縦に振る——その横でジンにも。


(いるな)


ジンは一呼吸遅れてカエデに反応する。


「……はい!」


(えっ、本当!?)


(なんだ、本当って)


ジンとリンの心念しねんでのやりとは続く。


カエデが確認するように。

「それではいきます」


マサキが一歩前に出るように。

「では、よろしくお願いします!、ケイもそちらを、頼んだぞ」


すぐにケイが短く返す。

「はいっ!」


カエデはマサキに頷くと、そのまま踵を返し、迷いなく歩き出す。

リンも並ぶように続き、歩幅を合わせる。


人の流れの中へと入る直前——


(とにかく、さっきの声には付き合うな、口の聞き方、呼び方はまたあとでだ)


ジンは最後にだけ、短く押し込むように。


(うん……)


歩みも視線も前へ向けたまま、リンは意識だけを背後のジンに送る。


(いいな!?)


(……)


ジンはリンの背中越しに、その先を行くカエデの背を見据えたまま、

小さく頷くように意識を返す。


カエデとリンの背が、都の北東へと流され、襄桜じょうおうの市中へとまぎれていく。

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