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封神千希「俺は新人対魔剣士」  作者: アリエス
一章

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16/22

三、伍「初任務前」

カエデが足を緩め、流れを切らずに言葉を落とす。

「それではここからは、二手に分かれて調べますが、マサキさん、よろしいですか?」


マサキは一瞬だけ考える。

視線が、カエデとリンへ——そしてツカサへと流れる。

「あっ、はい……二手に、ですね

 ......でしたら、それぞれにこちらから担当をつけます」


ジンはそのやり取りを、半分ほどしか追えていない。


(……まただ、あの音……声……?)


思考が、別の場所へ引かれる。


マサキは、後方へ声をかける。

「ケイ、来てくれ」


呼ばれた男が、軽い足取りで前へ出る。

「あっ、よろしくお願いしまっす!ケイですっ!」


カエデはそのまま間を置かず、振り分ける。

「ジンさんはツカサと。

 たとえ魔将が相手になっても、ツカサなら問題ありません」


ツカサの口角がわずかに上がる。

「おっ、ワクワクしたきたな!」


ジンの意識が遅れて引き戻される。


(え……あ、ツカサさんと……わ......)


╫█▚▞▓█〓█▒▓█▚▞█╫ ゜・:.。


……


その響きはジンの肩にかかっていた力を、どこか抜けさせた。


(お、俺は……)


カエデは続ける。

「私はリンと動きます」


リンは短く。

「……うん」


ジンの視線が少し宙に舞っている。


そのジンの様子に、リンの視線がわずかに止まる。


マサキはそのまま配置を組む。

「ではカエデさんとリンさんには、私が同行します」


そのまま間を埋めるように続ける。


「この辺りは区画ごとの動きや制限も多いので、私の方で案内と調整を」


カエデは歩みを崩さぬまま、マサキの方を向き。

「ええ、お願いいたします」


リンもマサキにわずかに目をやる。


マサキは小さく頷き、次へ。

「ケイは——」


わずかにツカサへ目をやる。

「ツカサさん達の方を頼む。あちらは機動力が高い、

 細かい案内と現地判断の補助に回ってくれ」


ケイは軽く笑って。

「了解っす!」


ツカサは肩の力を抜いたまま。

「よろしくな」


「光栄っす!」


その横で——

ジンの思考は、まだ別の場所に引かれていた。


(なにかを俺に言っている......)


リンの心念しねんがジンに飛ぶ。

(おい、集中しろ)


(はっ!?)


ジンの胸が動く。

視界が一気に戻り、遅れて周囲の音が流れ込んだ。


その直後——


カエデの声が、流れを変えずに落ちる。

「それと、ジンさん。今回の任務にあたり、

 この都の区画や通りは、どの程度頭に入っていらっしゃいますか?」


不意に振られ、ジンの思考が止まる。


「えっ?」


(……!?まずい……そういえば、そんな事、宗名そうめいの前に言われてたな……

 地図も持ってくるようにと……)


空気が、静かに流れる。


カエデはそのわずかな間だけで察する。

視線も表情も変えないまま、言葉を重ねた。

「そうですか。では、その様子だと地図もなさそうですね」


「……」


言葉が出ない。

責められているわけではない。事実だけだ。


——ちょうどその頃、石段を下りきる。

足元が平地へと変わる感触。


カエデは動きを止めないまま、腰の装具そうぐへと手を伸ばした。

無駄のない所作で、一枚の地図を取り出す。


「……これがおおまかな地図です。

 それに、先ほどマサキさんから渡された報告のあった所を記しておきました」


そのまま、自然に差し出される。


ジンは反射的に受け取る。


「あの、これには……」


何か言おうとするが——


カエデは流れを変えずに続ける。


「もし、また先ほどの魔力の痕跡、見られた場所の確認が必要ならば、私から送ります」


「あっ……」


ジンには、割り込む余白が見当たらない。


そのやり取りの横で——


ぽつりと、リンの声が落ちた。

「自尊心、承認、回避、防衛……」


淡々と、並べるように。


「うっ……」


ジンの肩がわずかに強張る。

視線と顔が、リンへと向く。少し強く。


リンが、わずかに顎をあげて、短く返す。

「ん?」


腕を組んだまま、視線だけでジンを押し返すように見据える。


ジンはその視線を受け、まなざしの底で力を留める。


「くっ......」


するとまた。


▚ ░ ▞ ░ ▚ ▞ ░ 〓 ...


ジンの意識の内側に、何かまた、ざらついた響きが走る。


(う、うん?......)


ジンの視線が一瞬だけ泳ぎ、体が少し浮く。


それを逃さず、リンはあらためてジンを見据えた。

ジンの波長に自らの波長の幅を合わせるように、意識を確実に重ねる。


だがその一方で、カエデは二人のやり取りには一切触れない。

視線も流れも崩さず、次の手順をそのまま続ける。

「それでは一度、私からジンさんに、今の城下の様子を魔力の痕跡も含めて送りましょう」


不意に名を呼ばれ、ジンの顔がわずかに跳ねる。


「あっ、は、はいっ」


カエデは一歩分だけ距離を詰める。

視線を正面から合わせ、静かに言葉を重ねる。


ジンの視界に、カエデの顔がまっすぐ入ってくる。逃げ場のない距離ではない。

だが、視線を逸らせばすぐに分かるほどの近さ。


自然と、視線が噛み合う。

カエデの目は揺れない。ただ静かに、ジンの焦点を受け止めている。

「ジンさん、私に顔を合わせ、集中してください」


「あっ、はい......」


ジンは顔を少し上げる。


(か、顔を、合わせる......)

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