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偉大なるもの  

江戸時代の言葉で、しゃべるでござる。


ライオンとネズミが、ひそひそ話をしていたで、ござる。


ネズミが、言ったでござる。


「この世界で、一番偉いものは、ライオン様です。」


「その通りだ。この世界で、一番偉いのは、ライオン様だあ。」


「でも、人間はちょっと、やっかいですね。」


「あいつらは、弱虫なくせに、鉄砲だの、自動車など、持っている。ずるい奴らだ。卑怯者だあ。あいつらは生き物の風上におけん。」


「そうですよねえ。そうですよねえ。人間ほど、弱虫なものはいませんよねえ。」



<<人間を支配するもの>>


トウガラシが言ったでござる。


「トウガラシは、世界一辛いたべものである。われわれは、世界最高、最強の食べ物である。」


ライオンが言ったでござる。


「草のくせに、生意気なことを言うな。恥をかくぞ。」


「では、ライオン様、とうがらしを、一かじりしてごらんなさい。美味しいから。」


おそるおそる、カジカジ


「げえー、げえー。死ぬー。死ぬー。こんなものが存在することは許されない。」


「あはははー。ね、私たちほど、最高、最強の植物はいないのさあ。」


「じゃあ、お前たちは、どうやって繫栄するのさあ。すぐに、邪魔者扱いになって、死に絶えてしまうぞ。」


「残念でした。ところが、人間が、私たちを死ぬほど愛しているのさあ。私たちは、金よりも高価で、冒険野郎が、命がけで、守って、増やしてくれたのさあ。人間が、われわれに出会ってから、トウガラシは、大繁栄しているのさあ。我らが、人間を支配したのだ。人間がいる限り、我らは永遠不滅だあ。」



<<人間を支配するもの>>


カイコが言ったでござる。


「カイコの作る生糸は、世界一美しい糸でござる。いや、宇宙一美しい糸でござる。我らに勝るものはない。」


ライオンが言ったでござる。


「お前らのようなイモ虫が、えばるんじゃない。おまえらなんぞ、鳥の餌ぐらいにしかならない。」


「きゃー。鳥怖い。鳥怖いよー。アゲハチョウの芋虫は、100匹に1匹、200匹に1匹、しか生き残れないんだ。しかし、カイコはすごい。100粒の卵が、100匹のイモ虫になるんだ。その上、餌も食べ放題。

すごいぞ、人間が、毎日、毎日、餌をくれんだあ。」


ライオンが言ったでござる。


「なにを生意気なことを言っている。お前らの命も、繭を作って、茹でられて死んでしまうじゃないか。」


「自然の中にあっても、ほとんどのカイコは、鳥に食べられてしまうのだ。しかし、人間は、我々を絶やすことなく繁栄させているのだ。一粒の卵も、芋虫を無駄なく育つのだ。絹は、金よりも高価なのだ。人間は、どんなことがあっても、われわれカイコを大切にし続けるのだ。まるで、われらの奴隷のごとくにな。」




<<人間を支配するもの>>


稲が言ったでござる。


「稲が作るコメは、世界一優れた食べ物である。保存も効くし、栄養価もたかい。これほど、食べ物は存在しない。」


ライオンが言ったでござる。


「お前らは、ただの草だ。ただの水草だあ。雑草だあ。ただの雑草だあ。」


「そうなんだ。人間に出会うまでは、タダの草、雑草だったのさあ。僕たち稲は、生きるのがたいへんなんだ。小さい時は、たくさんの水が必要なんだ。僕たちが、育つ環境は、とてもすくないんだ。その上、僕たちより、元気な草、雑草も多いんだ。そんな中で、生き延びるのは、ほぼ、不可能。ほそほそと生きているだけだったんだ。それなの人間は、僕たちが育つように、田んぼをつくり、雑草を取り除く、手間暇掛けて、育てるんだ。われらの奴隷のように。」


ライオンが言ったでござる。


「人間を奴隷のように、こき使う。そんなことがあるわけがない。人間は、とんでもない卑怯者なんだぞ。」


「でも、人間は、僕たちのために、奴隷のように働いているのさ。人間に出会わなかったら、こんなに繁栄をとげることもなかっただろうなあ。」





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