主様にならないなら
お久しぶりです。お盆はゆっくりと過ごせましたので更新させて頂きます。
場面はネスクサイドに戻ります。
『これで………終わりだ!!!』
牙に電流を乗せて、最後の竜のうなじに噛み付いた。100から先を数えるのをやめた辺りから段々と魔力の使い方が分かってきた。
魔力から生み出した電流は相手の魔力を阻害し、竜が持つ再生の力を瓦解させる事が出来る。
思いっきり竜のうなじを嚙み千切る。うなじを嚙み千切られ息絶えた竜は端から黒い塵となって消滅していく。
「すっごいすっごい!あれを全部倒しちゃうなんて、流石私の主様です!!」
『次は………お前だ!グリモア!!』
黒い塵になって消えて行く竜の残骸の間を駆け抜けた。尋常では無い速さは光が走ったようにしか見えない。
油断していたグリモアは驚いた顔をしている。
グリモアをそのまま押し倒し、両手を前足で押さえつける。
押し倒した拍子に『黒い本』はグリモアの手から離れて地面に転がっている。
これであの黒い本からの召喚は出来ない。
「ふふふっ、女の子を押し倒してこんな事をするなんていけない人ですねぇ、主様」
『こうでもしないとお前はあのまま召喚し続けるだろ。さあ、グリモア。ソフィを返せ!』
「あれを愛称呼びですか。私にも愛称を下さいませんか?主様」
『くっ、こいつ………』
茶化すばかりのグリモアではソフィアを助ける糸口がまるで分からない。
ジルから見せてもらった記憶からソフィアとグリモアは同一人物の筈だ。
あの事から魔力は違うが身体はソフィア。ならば、身体のどこかにソフィアの魔力があるだろうと、当たりを付けていたのだが、その痕跡はまるで見当たらない。
「もう一度、きちんとお伝えしますがあれはもう存在しません。私という存在が解き放たれた事であれの人格は完全に消滅しました。」
残酷な程冷たい眼をするグリモア。それは今までに見せていた表情よりも本当の事を言っている。
『お前はソフィアをあれと呼ぶ。何故そこまでお前はソフィアを嫌う。』
「ええ、私はあれが嫌いです。根暗で嫌な事があるとすぐに引きこもるあれは昔から見ていて苛つきます。本来であればあれは本を失った時点で消滅していた存在。それを私が助け上げたのに、私を押し込め全てを忘れて私が欲しい物を全て持っていく!あれが消滅して清々しました。」
『なんだ………急に』
黒い魔力が集まったかと思うと、押さえていた前足を押し返していく。
そして、出来た隙間からするりと抜け出した。
「どうしても私の主様になって頂けないのですかネスク様?」
『………ああ、俺はお前の主とやらにはならない。俺はソフィの相棒だ』
「そう………ですか。なら――――こんな世界壊してしまいましょう。来て下さい〈禁忌魔法の本〉」
地面に転がっていた筈の黒い本がグリモアの手に瞬時に移動した。いや、召喚か?
「《今此処に終焉の扉を開く 死の枝 常世の川 全てを呑み込み 死よ具現化せよ》――――――【終焉の悪魔】」
黒い魔力が膨れたかと思うと、膨大な魔力は黒い本の中へと取り込まれてその本から霧のような何かが溢れ出してくる。
直感が何か反応しているこれは………。
咄嗟に自分とグリモアの周囲に結界を張った。瞬間、空間がずれ、亀裂音がピシピシとなった。
空間が割れ、中から覗いて見えた目と合った。
やぎのような角に薄気味悪い笑みを浮かべ肌黒いその姿は悪魔そのもの。
尖った爪を亀裂から出し、こちらに出て来ようと亀裂の穴を広げた。
『ひひひひ、おやおやこれは旨そうな魔力をお持ちで。これは喰らい甲斐がある。きひひひ』




