雷狼
大変長らくお待ちしました。更新させて頂きます。
以前のゴブリン戦より意識がはっきりとある。
ついさっきまでの苦しみが嘘のように消え、羽のように体が軽い。
よく仕組みは分からないが、―――"邪魔だ"と考えるだけであの魔族が使っていたような魔力の壁を生み出せる。
――――― ピコン
通知のような音がなった後ステータスボードのような半透明の板が現れた。
『――――追憶の管理者より、情報の一部が上書きされました。』
ジルが消える最後に渡した物がそれだったのだろうか?
まあ、いい。今はそれより――――
『お前が、グリモア………で合っているか?』
ソフィアの姿をした紫の眼をを持つ少女。どういう訳か、『反転』を使った時の軍服のような衣装をしている。
「ええ、ええそうです!我が主様!!
私こと、『黒』の魔導書―――グリモワール。通称グリモア。主様にお会いできるこの日を古の時よりお待ちしておりました!!」
グリモアは、歓喜が溢れる嬉しそうな表情でお辞儀をした。
チラッと、白い巨大な龍へと視線を向けた。
姿はミレド――――なのだが、違和感がある。神々しい程の魔力が歪み今はおどろおどろしい黒い魔力が徐々に彼女の体全体へと移って行っている。
『Ghoooooooooo―――――――!!!』
再びミレドが咆哮を轟かした。
それはまるで『来るな』とでも言っているかのようだ。
「――――うるさいですね〜。我が主様に対して耳障りな音を出すとは、頭が高いですよ~。」
グリモアの掌に『黒い本』が現れた。
パラパラと捲れるページが一つのページで止まり、輝き出した。
一瞬、ピカッと光った後、黒い稲妻が上空からミレドに降り注いだ。
『なっ、止めろ!!』
ネスクは慣れない体で飛び出した。
何度も降り注ぐ雷と、直撃するミレドとの間に入る。いつものように【瞬雷】と同じように発動させた。
『―――魔法【纏雷狼】を展開します。』
書庫のアナウンスの後、不思議と最初から馴染むように白い雷が体中へと纏っていく。
雷を纏った狼に黒い稲妻が吸収されるようにミレドからネスクへと切り替わった。
その電撃はネスクにダメージを与えず、代わりに元となった魔力がネスクを満たした。
「ああぁぁ!また私は主様に!何ということを!!!」
ヒステリックに高い声で叫んだグリモアが黒い本を慌てて閉じた。
天災となって降り注いでいた雷は閉じると同時に霧散され、始めから何も無かったように消え去った。
『おい!ミレド!無事か返事しろ!』
地面に降りたネスクはミレドに声を掛けるもぐったりとしていて、反応が無い。
これは、―――――
『おい、グリモア。いや、グリモワール。答えろ。ミレドに何を混ぜた!?』
ミレドの体は明らかにおかしい。いつもは自身の聖魔力ですぐに傷が癒えるのだが、その兆候が無い。それに、濁った魔力。
それは、グリモアがミレドに何か異物を取り込ませた。そういう事だ。
『くっ、あやつは妾に………ごふっ』
口から血を吐いたミレド。その様子は息が絶え絶えで今にも死にそうな様子。
『ミレド!一体何が………』
「これですよ、こ・れ………」
グリモアに視線を戻すと、グリモアがあの黒い本を開いていた。パラパラとめくれるページの後、一つのページで止まると、その中から『他の鍵』が飛び出した。
どれも淀んだ魔力の塊で鍵の一部が欠けていたりする。
「本来、禁書庫の『鍵』は、一つの時間の流れに一本だけ。そこの龍に与えたのは別時間の書庫の『鍵』。その影です。そこの龍が絶望の果てに鍵を取り込んだ物。お味は如何でした?」
口端を吊り上げて笑うグリモアはさながら悪魔のようだ。
『くっ、また………。ネ、スクよ。妾が意識を取り戻した今のうちに………妾を殺してくれ』
『…………はっ?何、言ってんだお前……そんなのできる訳ねぇだろ!』
ミレドをこの手で殺す?
そんなの死んでも嫌だ。
『もはや……それ、しか………これを止める手は……無いのじゃ』
どんどん黒く変色していくミレドの瞳の色が金と紫で点滅している。紫の瞳になればまたグリモアの手の中に戻ってしまう。
『心をしっかり持て!!俺が……俺が絶対……助けてやる!!だから……心まで呑まれんじゃねぇ馬鹿野郎!!』
ミレドの体を囲うように結界わ張った。多少は変色を止められる筈。気休め程度にしかならないと思うが今はそれより先にグリモアからソフィアを開放することが先決だ。




