ネスク、現実へ
お久しぶりです。仕事、年末と色々あって年が開けちゃいました(^.^;
今年も書いていきますので、よろしくお願いしますm(__)m
誰も居なくなった図書の空間。カツカツと靴の音が鳴り響く。
使い慣れた席に座り、再びティーカップを空間から取り出して一口含んだ。
「ここで私一人になるのは一体いつぶりだろかな。さて、」
いつも、ここにいる時はもう一人―――あの子がいた。
女神の頼みで始まったあの子との関係は、自分がいなくなる時まで続いた。
今も無表情に近いが、僅かながら感情豊かになったあの子を見ていると、自然と彼には『期待』をするようになった。
「まあいい。これからは彼の時代さ。私の役目もこれで果たした。あとは………彼に任せるとしよう。」
考えていた事を一旦置いて、自分の手に目が向いた。
光の泡となって消えてゆく体。一時の力を封じ込めた欠片の力が効力を失いつつあるようだ。
「彼にもアレを渡せた。それをどう使うか彼次第。それは世界を救うのか、はたまた世界を破壊するのか。………彼はどう使うのか…………」
強大な力を手にし、身を滅ぼした者は数しれない。その力をどう使うのか。
強者にはそれを考える義務が発生する。
彼の性格からしてどう使うかなど予測できるが………。
「もしそうなったとしても、それは今を生きる友が何とかするだろう。さて、そろそろだな。」
急速に瓦解していく身体を他所に優雅にティータイムを楽しむ。かつて友との思い出が思い出され自然と口角が上がった。
「あ、そういえば今の彼の身体は……まあ何とかするだろう。」
未来を託した『先代守護者』は、力を託し静かに消えていった。
* * * * * * * * *
「はっ。ここは………」
記憶を辿る。
クーシェが居なくなった後、魔物狩りをして………その後は?
「あれ、ここ何処だ?」
記憶を辿っても、そこから先の記憶は無く、代わりに書庫での記憶だけが残っている。
「【光】」
手元に光魔法【光】を生み出し辺りを見渡す。どこかの遺跡のような構造。広い広間が広がり石畳の空間の中にいた。
「なんの施設だ?それより…早くあいつらの所に―――!?」
上を見上げると、無数の赤い目がひしめき合っていた。その光は、魔物の核。幾つもある無数の核が不気味に光る。
ゾクゾクとする背筋の寒気に体を動かした。
元いた場所が溶けた。
「くっ、【解析】!!!」
――――― 『ブラッドスライム』
魔物を取り込み、その血を啜るスライムの変異種。強力な酸を生み出す。推定ランクA+。
【解析】で解析された魔物ブラッドスライム。手元には荷物も武器も何もない。
かなりマズイ状況だが、自然と冷静だ。
「【構造具現化】」
【構造具現化】で色の無い剣を生み出す。一撃に重みを置いたこの魔法。いつもであればこれで良い。だが今は、手数が必要だ。
「もっと………もっとだ。もっと構造をイメージして―――――」
職人が鉄を火に焚べ、何度も何度もハンマーを叩いて構造を造っていく。
原型が生み出されると、それを研ぎ、鋭さを出して最高の一品を生み出す。
職人の魂が込もった一品は砕けず、斬る物だけを斬る。
「…………出来た。」
透明の剣は色が生まれ、次第に本物に生まれ変わった。
一気に頭上からブラッドスライムが落ちて来る。
ネスクはその剣を構える。バチッと、空気に電流が流れた。
「はあっ!!!」
雷を載せた剣を一払い。電流はブラッドスライムの粘液の身体を焼き切り、核へと電流が流れる。
流れた高電圧の雷はそのまま核を砕き、ブラッドスライムが雷で爆ぜた。
「うっ…………」
痛みが走った。いつもの代償だ。両手の包帯の隙間からゴツゴツした鱗が見える。
だがそんな事で怯んでは要られない。
一気に降りかかるブラッドスライムの群れを切り捨てて急いでその場を退いた。
大量のブラッドが地面に降り立つと一箇所へ集まって核が一つに。そして巨大な姿へと変化していく。
「さながら、ビッグブラッドスライムか。」
広い広間が狭苦しく感じる程巨大になったブラッドスライム。ぷるぷると波打つ赤い粘液はまるで生き物の血が動いている様だ。
体の粘液からぴゅっ、と触手にして襲い掛かって来た。
「【聖雷】」
魔力を電流へ変え、白く迸る稲妻を生み出す。剣にも生み出した雷を載せて襲い掛かる触手を切り捨てる。
そして、前へ。
本体に近づくに吊れてその触手の量は増してしまうがそれでも近付かない事には始まらない。
ある程度近づいた所で次なる一手を打つ。
「【雷網】」
触れた瞬間痺れて動けなくなる【雷網】を数回に分けてビッグブラッドスライムに放つ。痛覚が無いため痺れる効果は薄いだろうが、それで網で作られているため触手攻撃にはうってつけだ。
触手攻撃が一気に減った。
「ここだ。【構造具現化】『弓』!」
剣を弓に持ち替えて魔力の弓を引く。
――――光の矢・滅却光
ミレドの様に聖の力は使えないが、それでも、魔物が嫌う属性の魔法だ。
矢を番え、弓を最大まで引く。集中して核へ狙いを定める。
粘液の体が分厚い為どこまで通じるか分からないが、それでも今の最大火力を矢に載せて撃ち放つ。
パァーンという乾いた音と共に太陽光の様に眩しい光がビッグブラッドスライムに直撃した。
血のような粘液は光に焼かれ、蒸発して消えて行く。その光は核へと届き、核にヒビが入り、そして………。




