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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
4章 奈落の底編
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二人と二つの力‹想い›

お久しぶりです!

一ヶ月近く開いちゃいましたが、更新します。

前回はミレドメインでしたが、今回はグィンダルとエリュトロンメインです!

 激しい爆発と共に眩しい光が交互に繰り返される。


 エリュトロンが炎弾をミレドへと投げつけた。投げつけた炎の弾は空気中の酸素を吸ってだるま式に大きくなり、小柄なミレドの体の何倍にも大きく膨れ上がる。

 だが、ミレドは避けることはせず、ただ虚ろな目で片手を炎弾に向かって差し出す。

 ミレドの掌から渦を巻いて一筋の光線が放たれた。ミレドの得意な吐息(ブレス)である。

 放たれた光線は炎の弾に触れると同時に爆ぜ、その光が周囲に放出される。


「相変わらずミレド様の吐息(ブレス)は無茶苦茶ですねぇ。普通、吐息(ブレス)って()から出すものでしょ?

何で掌から出るんですかね?」


「あの御方だから出来ることです。無駄口を叩いていないで集中しなさい!竜化したとはいえ、あの方からすれば私達はただの石ころのような物。少しの油断が私達の最期になりますよ!!」


 軽口を叩くグィンダルに厳しい言葉を投げつけた後、ミレドの周りを回るように動いて、連続で炎弾を撃つ。

 八方から放たれた炎弾が完全にミレドの逃げ場を無くした。


「グィンダル!!」

「言われずとも分かってますって!!!」


 グィンダルが魔法を詠唱する。


「『咲き乱れるは 我が刃の矢 定石を無視した矢は 必中となりて 我が敵を貫け』」


 詠唱が終わると、上空には無数の矢が展開される。その一本一本が『風の矢』であり、その矢に射抜かれた者は体の内側から切り刻まれる内部破壊を起こさせる魔法の矢。

 番えられた無数の矢が上空でミレドに狙い定める。


「耐えれる物なら、耐えてみてくださいよミレド様!!

―――――【吹き荒べ(テンペスタ)】!!!」


 グィンダルが魔法名を唱えると、狙いを定めた風の矢が一斉に打ち放たれた。エリュトロンがミレドを囲ったタイミングに合わせてあらかじめ練って、この状況を見越して発動させていた。


 上空からは『風の矢の雨』、地上からは『火球弾の猛攻』がミレドへ迫る。檻のように囲い込まれた。だがミレドは何の反応もすることなく、2つの魔法が炸裂した。


「まだです!!ありったけを叩きこみますよ!」


「了解!!」


 残った魔力を練り直し、追撃となる魔法を連続で打ち放つ。度重なる魔法で地面は抉れ、砂埃が舞う。

 砂中に巨大な黒い影が差す。そんな影がキラッと一瞬だけ光った。

 危機感を覚えたエリュトロンが叫ぶ。


「合わせなさい!!!」


 大きく息を吸い込み魔力を溜めた。グィンダルも同様に口の中に魔力を溜める。そして、溜まり切ったタイミングで魔力と息を二人同時に思いっきり吐き出した。


「「はああああっ!!!」」


 口の中から溜め込んだ高密度の魔力――――吐息(ブレス)を繰り出す。

 竜族が最も得意とする魔力を用いた技だ。

 グィンダルが吐き出した吐息(ブレス)とエリュトロンの吐息(ブレス)が合わさり、ミレドへと向かう。

 それと同時刻。煙の中、一瞬光った箇所から巨大な吐息(ブレス)がグィンダルとエリュトロン目掛けて飛び出した。

 二つの吐息(ブレス)が激しくぶつかる。


 ぶつかり合った吐息(ブレス)は周りを巻き込んで爆発を引き起こした。


「ぞ、くちょー。死んでますか?」


「ご安心を……ちゃんと生きています。魔力をごっそり持っていかれましたが………」


「ははは……俺はもう限界です……休んでいいですか」

「ダメです」


 ぴしゃりと言い放つエリュトロン。そんなエリュトロンにグィンダルが『冗談、冗談』と言う。

 軽口を叩けるぐらいの元気はあるようだが、やはり吐息(ブレス)一発を撃つには魔力が大量に必要の為、何発も連発は出来ない。出来て後一発が限界だ。


「これで止まってくれるわけ………ないですよね。」


 舞っていた黒煙が一気に晴れた先に絶望する事を禁じ得ない。

 巨大な龍が空を舞う。その体は純白の鱗に覆われ、体からは電気が流れ放電している。噂に聞くミレドが新たに手に入れた『聖雷龍』という物のようだ。

 あの形態になったミレドはあの巨体でありながら素早く動ける上に、通常状態の時よりさらに威力が増す。敵に回れば、大変厄介極まる。


「はは、は。マジですかい?俺らの真祖様、強さの桁が違い過ぎでしょ!?」


 引き攣った笑みを浮かべ、自嘲とも取れる笑いを浮かべるグィンダルに何か言いたいが同意せざるを得ない。

 忌まわしき邪龍との戦で弱体化したとは聞いているが、その弱体化した痕跡がどこにも見当たらない。


「あの女が何かした。―――と、考えてよろしいでしょう。」


 キッと睨みつけた先の森で木々が倒れ、爆発音が繰り広げられている。


「今更あのヤンデレ女にどうこう言っても後の祭りでしょ。あっちはメイちゃんに任せるしかありません。……あーあ、俺。戦う相手間違えたかな?

 負け戦しか見えないこっちより、あっちのキャットファイトに混ざりたかったですよ〜。」


「何を言っているのですか。あなた程度が混ざった所で千切って投げられるのが目に見えています。何せ、()()メイがあそこまで長期戦と化しているのですから。」


「ぞくちょー、俺に対して辛辣過ぎ!

 もう少し優しさ成分が欲しいです〜!」


「男に優しさを与えてどうします。私はそっち系の趣味はありません。」


 グィンダルが口を尖らせて拗ねる様子を横目に現状で最も適した解答を思案して巡らせる。

 だが、どれもこれもあの聖雷龍の状態のミレドには勝てる見込みが見出だせない。

 まるで、将棋の詰みの一歩手前のようだ。

 次の手をしくじれば、確実に負ける。



「ぞくちょー、竜化。あとどのくらい持ちます?」


「話しかけないで下さい。グィンダル、次の手を模索中です。気が散ります。」


「いいから答えて下さい族長!」


「一体何ですか?!」


 急に声を荒げたグィンダルに苛立ちを覚えながら、上空の龍化したミレドからグィンダルへと視線を戻した。

 するといつにも増して真剣な顔でグィンダルが見ていた。

 まるで決心したようなそんな表情に怒りの言葉も喉元まで来て引っ込んだ。


「そうですね。あと三十分。いえ、それよりももっと少ないですね。」


「そっか。なら、後は任せますよ!」


「は?貴方は一体何をいっているのですか?」


 急に笑顔を浮かべるグィンダルに滅多に見せない戸惑いが出てしまう。


「あっちが他属性を混ぜて強化したのなら、こっちも混ぜて強化してしまえばいいんですよ!」


「意味が分かりません。本当にどうしたのですか?気でも狂いましたか?」


「も〜、鈍いなぁ族長。だ・か・ら、俺の『権能』を族長に()()からそれを使って戦えってこと!」


 『権能』とはミレドが『竜族』を生み出した時に与えた物である。

――――― 火・風・水・土・光・闇


 生命を生み出す為に必要なこの六つの『権能』を『始まりの竜』と呼ばれる六頭の竜に与え、それぞれの竜の長が自身の子へ孫へと代々受け継がれている。

 竜化もその『権能』によって生まれた物である。


「正直、俺。竜化がもう解けちゃいそうなんで、今渡さないと多分、無理そうなんで………族長に託します。」


「グィンダル、貴方………。」


「大丈夫です!俺の力と族長の力。二つが合わさったら無敵ですよ!だから、ミレド様の事、任せますよ!!」


 にっかりと笑うグィンダルが心臓に手を当てた。手を当てた所から手のひらサイズの緑色の玉が取り出される。

 竜族の文字で『風』と書かれたその珠をエリュトロンへと差し出した。


「バシッとやって、ミレド様の目を、覚まさせて下さい!!」


「……あなたに言われるまでもありません。ですが、あなたの(おもい)。確かに、受け取りました。」


 『風』と書かれたその珠はエリュトロンの手に触れると、自然に溶けていった。

 そしてグィンダルの竜化が解除される。

 それと比例するようにエリュトロンの魔力が膨張する。

 背中の翼が大きく広がり、グィンダルの竜化した姿のような、けれどもエリュトロンの竜化した姿もある。二つの竜化した姿が混ざったような姿となった。


「………行きます!!」


 大きく羽ばたいたエリュトロンはぐんっと上昇する。

 『権能』一つのみの竜化時より、ぐんぐんと空へ舞い上がる。

 それはグィンダルの『権能』【風】のお陰である。

 龍化したミレドが再び吐息(ブレス)をエリュトロンに向かって撃ち放った。

 エリュトロンはそれをカミヒトエで回避する。


(………すごい。これがグィンダルが見ている世界なのか!)


 ミレドが何度も吐息(ブレス)を放つが全く当たらず、それどころか徐々に距離を詰めていく。

 そして、どんどん加速していくエリュトロンの動きにミレドは次第に捉えることが出来なくなる。

 気づいた時にはエリュトロンはミレドの真下。懐へと入っていた。


「ミレド様、そろそろお目覚めの時間です。」


 そう呟いたエリュトロンが右手に魔力を込める。エリュトロンの権能、『火』を纏った拳にグィンダルの権能『風』を混ぜ込む。最速・轟炎の拳がミレドの顎へ叩き込まれた。

 ミレドは堪らず地上へ落下していくのであった。

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