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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
4章 奈落の底編
324/347

堕ちた龍 前半

お待たせしました。更新します。

色々構想を練った末、断片的にはなっちゃいますが、ミレドがああなってしまう所までの追想をしていきます。

と言っても、二話ですけどねww


場面は、ネスクの復活を『諦めた』選択をした後です。

ミレドは龍の姿になってポーアとクーシェを置いて、ドルイドの森を後にしました。

 空を飛ぶ龍は次第に速度を落とし、地面に降り立った。

 地面に足が付くと、まず、最初に行ったのは『ヒト』の姿になる事だった。

――――もう、一緒に暮らす者は()()()()()()というのに。


 降り立ったここは聖域ではない。

 そのせいで()()()()するがそんな物関係ない。邪龍ヘヴラは既にこの世に存在しない。

 元々ヘヴラ討伐の為に作られた力なのだ。今となっては、この力の『役目』は終ったのだ。


「…………疲れたのじゃ。」


 岩肌だらけのこの場所は最も星空に近い場所で、"眠る場所"としては適した場所だ。

 背中を地面に預けて寝転んだ。視界いっぱいに満点の星空が広がる。瞬く星の光が寂しげにそこにある。

 段々と意識が遠のいて来た。

 元々千年前の傷が原因で体が衰弱していく傾向にあった。ヘヴラを倒すこと。そして傷を癒すために数百年は眠るようにしていたが、今回の目覚めはいつもより早い。

 それもこれも、ネスクが原因だったのだが、彼はもういない。

 私自身がこの手で…………。


 もう、考えるのはよそう…………。


 そこで意識を完全に手放した。



 * * * * * * * * * * *


 巨大な魔力反応。自然とその反応で目を覚ました。

 あれからどのくらい経過したのか分からないが、感じた魔力反応の巨大で禍々しさで目が覚めた。この反応を放っておけば、()()()()()

 反応の方角は『ヤグラシア共和国』。

 気になったミレドは立ち上がり、気づけば姿を元の龍形態へ戻っていた。

 昔からこの好奇心からは抗えない。翼を羽ばたかせ、地面から飛び立った。


 飛び立つとしばらくして、目的の場所に辿り着いた。

 街は火の海に包まれ、悲鳴があちこちから響く地獄のような様相だ。

 巨大な王城、そのすぐ近くに黒い瘴気に塗れた二つ目が光る巨大な何かがいた。

 どうやら城をせめているようだが、結界に阻まれて動けないようだ。


 そんなことを思っていると、ミレドの姿を見つけると、瞬時に触手にようなものを伸ばしてきた。

 翼を羽ばたかせ回避。だがやはり体が大きいため取りこぼした触手に被弾した。


『くっ!なんじゃこれは…………わらわの力を吸っておる?』


 ヒルの様に魔力を吸う触手を爪で切り裂き本体と分断した。分断された触手は聖の魔力によってすぐに消滅。

 本体は触手と感覚が繋がっているようでミレドの魔力を吸ったことで喜んでいるかのように表面が波打っている。

 あれは魔力を吸い上げ、餌にしている。あの周りに漂う瘴気は恐らく空気中の魔力が奪い取られたその"残りカス"なんだろう。

 だが、徐々に浸食して行っている。その様子はまるで――――――


『まるで邪龍の生き写しのようじゃな』


 味を占めた謎の生命体が一斉に触手を発射してきた。


『ええーい!!鬱陶しいのじゃ!これでも食らうがよいわ!!!!』


 発射される触手を回避しながら口の中に魔力を溜め、『吐息(ブレス)』発射した。ブレスは容易くその生物を貫き、右半分を消滅させた。

 それだけではまだ浅いようで、消し飛ばした右半分が徐々に再生して行っている。

 スライムの再生をイメージしていたのだが、よく見るとスライムのような粘着性のある水分ではなく、何かの肉だ。それが徐々に治っていく光景はグロテスクで気持ち悪い。


 ――――さっさと片を付けよう。


 そう、考えていると、突如、巨大生物の体が燃え始めた。炎はメラメラと燃え上がり、巨大生物を燃やす。


―――――ギギギギギギギ!!!!!!!


 大きな雄叫びを上げる巨大生物は、炎に包まれ、苦しげな雄叫びを上げた。

 巨大な魔物の足元。そこに小さな姿に気が付いた。

 額から血を流すクーシェ。そしてそのすぐ近くで子どもを庇うように立つポーアの二人。

 何故彼女達がここにいるのか知らないが、どうやらあれと戦っていたようだ。


『久しいな二人共』


 ミレドの感覚でいえば、一昨日昨日のような感覚なのだが、二人の様子からしてそれなりに時間が経過しているようだ。

 顔付きが逞しくなったポーア。背丈が以前より伸びたクーシェ。

 ざっとニ、三年ぐらいだろうか。


「お久しぶりですミレド様。今までどちらにいらしたのですか?あの後、とても心配しておりました。」


 カーテシーをするポーアの胸元には深緑の宝石。神器〈(スクートゥム)〉が炎を受けて輝いている。

 あの時の光景が脳裏を過ぎった。


――――― ブレスが雷獣と化したネスクの体を魔力の塵へと帰すあの時


 胸の奥底でドロドロとした何か。表現出来ない不快な何かが湧き上がって来る気がした。


「ミレド様?どうかなさいましたか?」


『いや、何でもないのじゃ。それよりクーシェ。おぬしは引け。そんな体でアレと渡り合えると思えぬ。さっきの火柱で魔力の消耗が激しくなっておるじゃろ?

ポーア、ぬしもクーシェと引くのじゃ。

あれは妾に任せよ!』


「こんな程度じゃ、ダメです!ネスク様は………あの人はこんな状況でも私達を守ってくれました!!……お願いします。ミレド様………私も一緒に戦わせて下さい!!」


 額の血を拭い、決意の籠もった目でクーシェがそう頼んで来た。彼女も成長している。そう思う。

 けど、またあの時の記憶が過ぎった。


「――――!!ミレド様!!!」


 一瞬考え混んだせいで反応が遅れた。

 あの謎の魔物の触手が一斉に襲い掛かってきた。自分だけならば回避して反撃が出来た。

 だが、触手の飛んでくる照射線上にはポーア、クーシェ、そして、助けたであろう者達がいた。

 ポーアが神器を起動させて、防御魔法を編もうとするもすぐそこまで迫っている触手には間にあわない。


(くっ!)


 覚悟を決めてその触手を()()受けた。



 * * * * * * * * * * * *


 混濁した意識の中で目が覚めた。


「おや?目が覚めて安心したよ。龍の君」


 知らない天井から視線を声のした方へ移した。

 金髪の男が鉄格子の向こうでこちらを見ていた。


「誰じゃおぬしは?」


「私はヘルデヴァラン・ドゥ・アストレラ。この国の貴族といえば、分かりますか?龍の君」


 状況が状況だけに呑み込めないが、まず聞きたい事がある。


「あの魔物はどうなった?一緒にいた者達は?」


「…………ふっ、ふふふふ。いや、これは失敬。まず聞きたい事がそれですか。さすが歴史に名を残す麗しき御方だ。御自分の身の上より、赤の他人を先に心配なさるとはご立派な事です。」


「おぬし、ペラペラペラペラと………。あの後一体どうなったのじゃ!」


 貴族と名乗る男に苛立ちを覚えた。


「まず始めに、貴方が庇われた()()は全員死亡しました。」


「……なん、じゃ……と」


 男のその言葉に頭の中が真っ白になった。

 逆賊とは誰だ。全員死亡とは誰のことを言っているのか。

 何が何なのか分からなすぎて、言葉に出来ない言葉を何度も何度も口の中で咀嚼した。


「あの巨大な魔物、召喚獣は駆け付けた勇者殿によって討伐されました。

 そして、貴方様がここで生かされているのはあの王都を揺るがす()()の最重要参考人だからです。」


「何を訳の分からぬ事をいっておる!………!?」


 思うように動けず手首を見れば手には手錠が嵌められ、その鎖は奥の壁に縫い付けられていた。

 魔力を込めてみるがうまく行かず、魔力は霧散して消えた。


「貴方のためにこしらえさせた特別製の拘束具です。魔法に関しても、魔力関連の一切を遮断する結界を張っています。貴方様のような方にはこれくらいしないと逃げられちゃいますから。」


 ニコリと微笑んだヘルデヴァランの顔をキッと睨みつけた。作り笑いの裏側には底知れない悪意のような物を感じる。


「まさか、英雄と名高い貴方様のような方がこの国の転覆をなさろうとするとは思いませんでした。世の中、善人に見えて悪人という方は沢山いらっしゃるということですね。」


「……何が申したい」


「これ、何か分かりますか?」


 胸ポケットから取り出したそれにギョッと目を見張った。それは、深緑の宝石をあしらったネックレス。

 ついさっきまでポーアが身に着けていた神器〈(スクートゥム)〉であった。


「取り引きをしましょう。私はこれがどんな()()なのか知っています。この使い方を教えてくだされば、貴方をここから出してあげましょう。」


「貴様!それは、ポーアのじゃ!!!この悪魔め!!それは貴様のような輩が手にして良い物ではない!女神様が一族の安寧を願いそれぞれの一族に授けた寵愛の印じゃ!!!」


「異族が女神の寵愛とは、話にもなりません。女神の寵愛を受けたのは我々人族のみです。貴方方は魔物と同じです。理性を持たない獣。………しばらくそこで、頭を冷やすと良いでしょうではまた。」


 そう言い残し、男は地上へ繋がる階段を上がって行った。罵倒を叫ぶミレドの声は次第に慟哭へと変わっていった。

 またしても、大切な者を………。

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