ミレドと竜達 六
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輝き出した魔方陣から嫌な魔力が纏わり付くように体の中に入り込んでくる。真っ黒に染まったその魔力はまるでヘドロのように粘つく悪意の塊その物である。
「く………ああああ…………!!」
聖の魔力と流れ込んでくる魔力が反発しあい、激痛が体を襲う。呼吸が上手くいかず、魔方陣から送り込まれてくる異物を上手く吐き出せない。
「ミレド様っ!!」
「く……る………で、ないっ!!」
自分の身を顧みず魔方陣に飛び込んで来ようとするエリュトロンに威圧を掛けて止めた。
頑丈な自分だからなんとかこの程度で済んでいる。自分より弱いエリュトロンがこの異物に触れればどうなるかなど、容易に想像できる。
「あはははっ 頑張りますね~ミレドグラル!ですが、それも時間の問題です。貴方にそれは効果てき面ですから!あははははっ」
高らかに笑うグリモア。一体、この魔方陣にはどのような効果が………
「そ…れはどういう……じゃ」
「それはあなたにとって大事な一部。それを跳ね除けるという事はあなた自身を否定するような物です。あなたがそれに触れた瞬間、最後には…………クスッ。」
嫌な笑みを浮かべるグリモア。その察するところはミレドにとって最悪のシナリオだという事だ。
鋭爪で地面に書かれた魔方陣を大きく切り裂いた。
「あはっ!それを消した所であなたの中に入った因子は消えませんよ~?あなたの未来は確定したのです。大人しく寝ててください!!」
「掻き消え、なかろうと………今の状態が………維持できさえすれば…………何とでも…………なるわい!!!」
そう豪語するミレドは鋭爪を構えた。魔力をさらに込めようとするも、グリモアのいう『因子』という物に阻害されてうまく集まらない。
そうこうしていると、鼻から鼻血が出てきた。
「貴様っ!!!!!ミレド様に一体何をしたか!!!!」
怒り狂うエリュトロンが巨大な火球を連続で撃ち放つ。
「知りたいですか~?なら、特別に教えて差し上げますよ。ミレドグラルに差し上げたのは、――――ミレドグラル、あなたが本来、授かる筈であった『力の因子』。その欠片で~す!…………驚きました?クスクス」
「ぬしは…………一体、何を…………言っておる…………」
クルッ、とその場で回って避けたグリモアがその紫の瞳で見る。
その目にはとても楽しそうな色が浮かんでいるが、彼女が何を言っているのか全く要領を得ない。
エリュトロンが続けて火球弾を打つが、グリモアには通じていないようで易々と躱される。
「ミレドグラル、貴方も奈落の底がどういう場所なのかご存じのはず。ここでは不安定な魔力場が様々な不可能な事象を発生させる場所。特に今、この場所は『あり得た世界へ干渉』する可能性を秘めた場所で~す。ここまで言っちゃえば、もうお分かりでしょう?」
火球を刀で真っ二つに切り裂いたグリモアが悪魔のような笑みを浮かべて目をギラギラと光らせる。
「っ!」
心臓が大きく跳ねた後、脈打つ度にどうしようもない衝動に駆られる。
どうする事も出来ない悲しみ、後悔。
―――――― 壊したい 壊したい 壊したい 全てを…………破壊する!!
意識が朦朧として、夢と現実の区別が付かない状態の時、体は破壊衝動に従うように動いていた。
―――ああ、この感情は、あの時『諦めた』末の、結末だったのか…………
* * * * * * * * * * * * * * *
横から跳んできた衝動を諸に受けてしまった。
何本もの木を薙ぎとした末、停止した。
一体何が起きたのかいまだに理解できていない。
「――――――代表っ!!!!!!」
グィンダルの声で現実へと引き戻された。
体を起こした所に鋭い三本の鉤爪が襲い掛かる。
「ミレド様!!!一体どうなされたのですか!!!!」
左右から襲い掛かる鉤爪。素早い連続攻撃には戦闘能力の高さを感じさせられる。自らの『主』に怪我を負わせるのは抵抗…………いや、そんなこと出来る筈がないが、彼女の真意ではない。
彼女の表情は虚ろだ。間違いなく正気ではない。そうと分かれば、例え主に対してはイエスマンでも話が変わってくる。
竜鱗を発現させて、両手の爪に炎を纏わせた。
「グィンダル!!!数秒稼ぎなさい!」
「全く人使いが荒いです事………………任せますよ!……風よ、 荒れ 妨げよ【風矢の旋風】」
エリュトロンが後方へ距離を開けようとすると、当然ミレドが攻めて来る。そして突如、エリュトロンとミレドの間に竜巻が割って入った。
口では何だかんだ言いつつも、お互いの戦闘を理解しているがためのアシストである。
それでも、稼げてほんの一瞬、それぐらい異常な者と相手取っているからだ。だが、そのほんの一瞬がエリュトロンには必要であった。
グィンダルの魔法を切り裂いたミレドの視界からエリュトロンが消えた。
虚ろなミレドでも一瞬動揺する。
「【|炎壊《フレイム•クラッシャー》】」
飛び上がっていたエリュトロンの爪に宿った炎が放たれる。
当然避けられないミレドは、鋭爪でガードする。だが、この魔法の真意は彼女が使っている武器である。
武器に触れるとともに、放たれた炎が爆ぜた。
聖の光が飛び散った後、爆発に巻き込まれた完全に砕け散った。
「必ず、貴方様をお救いして見せます!!」




