ネスクとソフィアの過去 -歪みの始まり-
いつもより遅れてしまい申し訳ありません。
更新します。
また、場面がぐにゃっと切り替わった。何度味わっても慣れない感覚で胸の辺りで上げて来る物がある。
夜の景色が一変、昼の景色に変わった。
花畑に囲まれたこの場所、まるでポーアが隠れ家にしていたあの花畑のようである。様々な色の花がひしめきあい、色鮮やかである。
先ほどの場面の光景を思い出すと、その雲泥の差に脱力感が込み上げる。
「君は彼女の『能力』について聞かないのかい?」
「聞いてどうなる。聞いた所でソフィアのこの過去が変わるわけじゃないだろ。あんな…………」
魔物を屠る彼女の姿を思い出すと、胸がキュッと締め付けられた。
リザードフレアを葬った後も魔物の波は留まる所を知らずに押し寄せた。それを何度も何度も倒していくソフィアは、正に、その身を削るようであった。
見ているこっちが辛くなった。
「君はさっき、彼女を知らなければいけないと言った。けど実際にこの記憶を見て怖気づいたのかね。彼女の壮絶な過去を知って。」
「俺は確かに言った。けどな、他人のあんたにソフィア自身の事を聞きたいとは思ってない」
「…………ふっ、それは今更に聞こえなくはないが、…………君はやはり面白い。まあ、確かに私から彼女の事を話すべきじゃないというのは一理ある。
最も、その事も時期に分かるとも。」
ジルが目線を向けた先には、小さなソフィアと親友のフィナが花冠を作って遊んでいる。その場面だけを見れば、可愛い幼い天使達が無邪気に遊んでいる場面だろう。
だが、これは過去を映像化した記憶の中である。この場面にも、何か意味が存在するのだろう。
「この場面を君はしかと記憶に刻み込むといい。彼女が歪んだきっかけ、なのだからね。」
「あれは……………………」
黒いモヤが集まっていくとどんどん形あるものへと変わって行く。花畑に大きな影が差す。
「ギガ、ントだと、…………ここは、魔力の吹き溜まりなのか!!」
「ご名答。」
二コリと薄く笑ったジルから視線をソフィア達に戻した時、彼女達めがけて、魔物•ギガントがその大きな足で踏み抜こうとしている所であった。
がくがくと震えるフィナをソフィアが必死になって、庇うところで砂煙でその姿が掻き消された。
「ソフィア、フィナ―――!!!」
記憶の中だと頭の中では分かっていても、叫ばずにはいられなかった。
砂煙が収まった時、ソフィアとフィナの姿は近くの雑木林の中にあった。二人とも、先ほどの衝撃の影響で気を失っているようだ。
二人の姿に安堵する反面、十階建てのビルほどの大きさを持つギガントに嫌な汗が噴き出る。
ギガント程の大きさを持つ魔物は滅多に生まれることはない。
高濃度の魔力が長い年月をかけて吹き溜まりに溜まる事で発生する魔物である。聖域でもこのサイズの魔物は生まれることは殆どない。
このクラスの魔物は体が頑丈なだけでなく、非常にタフでなかなか倒すことが出来ない。当のネスクも、このクラスの魔物と相対するときは、策を弄す必要がある。
「あの村はこの魔物によって滅ぼされた。その時のトラウマでソフィアは記憶を無くした。ジル、そうだろ?」
「その解答に行き着くとは、早計が過ぎるよ?ネスク君」
クックックと何とも愉快そうに笑いだすジル。そして、掛けていた片眼鏡ををくいっと上げて眼鏡を光らせた。
「あの村はあの魔物によって滅びていない。…………断言しよう。どちらにせよこの記憶の最後には分かることだからね。あの村は他でも無い彼女によって、滅びたのさ―――そう、君が信頼してやまないソフィアによってね。」
心臓がバクバクと鳴るジルの言葉で停止していると、ソフィア達が倒れている辺りが一瞬だけ光った。
擦り傷だらけのソフィアの体の傷が一瞬に直っていく。目を覚ましたソフィアの目は『紫』に染まっていた。
ネスクは変化したソフィアに気を取られていて、気づいていなかったが、ソフィアの目が一瞬だけ、ネスクとジル。二人を一瞬だけ視界に映していた。
次回、ミレドサイドを挟みたいと思います。




