試練
いつもより、早くできてしまったので、更新します。
今回は、ソフィアサイドの話を後半に差し込んでいます。
(あれ、………俺、いつの間に寝てたんだっけ?)
目を擦りながら上体をベッドから起き上がる。外には月が浮かび、外から入ってくる優しい光が照らす。
何時なのかを確認するために机の上の時計へ視線を向ける。時計の針は十二時ちょうどを指している。
だがそこで違和感を覚えた。
―――針が動いていない。それだけであれば、電池切れを起こしてるのかと思うがそれだけではない。
真っ暗な部屋の中、それほど机までの距離は無いものの月が照らしているとはいえ、時計の針を確認することは難しい。
だがその時計だけ、くっきりはっきりと見ることが出来る。
――――カチッ。
時計の針の短い針が一回………動いた。
(一体…………なんだ?この記憶は………?)
誰かの記憶が次々に頭の中に広がっていく。
―――透明の鍵、白と黒の龍、ドルイド、代償
次々に浮かぶ単語と映像にノイズの入ったシーンが時計の針が動くたびに頭の中に浮かんでは消えていく。
(この記憶は知らない。………知らない……はず…………)
時計の針が一周し、再び十二時まで到達する。
見覚えのある光景に見覚えのある場所。まるで、本の中の物語を読んでいるかのように繋がった。
―――ふむ、結びつきの深い単語に記憶が触発されましたか…………
聞き覚えの無い声が聞こえた―――気がした。
「誰だっ!!」
当然、誰もいない。
誰もいないが、確かに声が聞こえた。
月の光が部屋の中央へと、差し変わっていく。
「うっ…………眩しい。」
月の光が溢れ出し、急な眩しい光で視界が塞がる。
眩しい光の中、人影を見たような気がした。ふと、耳元で誰かが語り掛けてきた。
『君がこの美しい"偽り"の世界から抜け出せることを期待しているよ。………そして、もう一つの"真実"を知った時、君がどんな選択をするのか―――。』
溢れた光が闇の中に吸い込まれるように消え失せた頃、静寂と共に視界がゆっくりと戻ってきた。
だが、視界が戻ったことへの安堵より、先ほど突如、光と共に現れた言葉の方が気になった。
「試練って………何なんだ?」
『これは…………君と、彼女への試練なんだ―――。』
戸惑いが心の中で渦巻く中、ズキリと何かが突き刺さったような痛みを覚えた。
何か………、大事な何かを忘れているような、そんな気がする。
* * * * * * * * * * *
「くっ……………!!」
細い線が頬を掠めた後、赤い線からぽたぽたと赤い血が溢れ出た。
「ほらほら!!どうしました私?動きが鈍ってますよ?
そのままですと、すぐに仕留めちゃいますよ?アハハハ!!」
自分ながら、小馬鹿にするように煽ってくるその態度に腹を立たせながら迫ってくる魔法攻撃を回避した。
ネスクとの『繋がり』が絶たれているため魔力を練り上げて魔法を撃ち出す瞬間が限られてくる。
その上、技量がソフィアが元々持つ力に戻っているため更に分が悪い。
「【土壁】!!!」
「そんな壁で防げると、思っているのですか?【水槍】」
土壁を槍を模して生み出された水槍が容易く貫いた。
しかし、一瞬の隙を生み出すだけであれば、その手も有効である。
「【三又槍】!魔力付与【雷電】!!―――三重魔法【風鎖】!!!」
風から生み出した鎖が紫の瞳を持つ自分に巻き付き縛り付け固定した。そこに、三方向から迫りくる水の槍が『雷』を付与した状態で襲い掛かる。
どんな魔物でも当たれば黒焦げにしてしまう威力を持つ魔法だ。
たとえ神器であれど、ひと溜りも無い。
「三重魔法ですか……。アハハ、流石私の半身です。三魔法を同時展開できるのは、神器の中でも私たちだけでしょう。で・す・が……」
「!?」
雷付与を施した【三又槍】が樹から生み出された三つ首の龍に下から喰われた。
「よっと、キャンセリング!ふう、少し肝が冷えました。ですので、お返しします!」
【三又槍】を喰った樹の龍がそのまま襲い掛かってきた。咄嗟に動こうとしたが、体が動かない。
手元を見たソフィアは驚愕した。
―――体が風の鎖によって、固定されていたのだから。
迫りくる三つ首の龍。体は鎖で固定されている。
三方向から迫った樹の龍が大きく口を開けた。口の中から発せられる熱気と強大な魔力。
樹の龍の伸びた体が大きく膨れ上がり――――
ドン! ドン!!! ズドーーーーン!!!!!!!
――――三連の巨大な爆発がソフィアを襲った。




