小夜のいないパーティー
更新します。
騒がしい人声がホール全体に響き楽器が音を奏でる。
穏やかな音色のクラシックがホール全体を包み込み、王家主催のパーティーが開かれていた。
異世界からの召喚者達は、厳しい訓練課程を全て終えた。そして今後、魔族領への『侵攻』に向けての決起の集いでもある。
続々とやって来る色とりどりのドレスやタキシードに身を包んだ貴族婦人や貴族達。彼らは現王夫妻に挨拶をした後、あちらこちらで他家の貴族達と挨拶を交す。
この場は王国の貴族が殆ど。その他にも親睦を深める口実で他国からの来賓の人もいる。
その中には、異世界からやって来た者達の姿もある。
「ふぅ〜、流石。これだけの貴族礼譲達と挨拶すれば疲れるね〜」
「お前、いつもだろ?」
好太郎はよく訓練を見学に来た貴族礼譲をナンパ。もとい声を掛けては囲まれる姿を日頃からよく見た。
「好太郎……ハメ外し過ぎんなよ……?」
「わかってるって〜の!」
未成年ということもあり、ブドウジュースをシャンパングラスに入れて、着慣れない礼服を身にまとっている。そんな少年少女の中には、好太郎や孝希のほかにも―――恵、真理亜の姿もあった。
その他にも、召喚者の殆どがここにいる。
召喚者達が主役のこのパーティーのため、基本強制である。
ここに居ないのは訓練に苦戦をしていた者達。聖域へ出征している十数名だけだ。
「お、あっちの飯見たことないな。食って見ようぜ。」
「コウキは、レディより食い気、か。」
「うっせ!いいだろ、別に!」
男二人はタキシード姿。初めて着るはずなのだが、どこかタキシードとよく似合っている。
その上、どちらも顔が良い分。あちらこちらから視線を集めている。
「メグミは何か食べるか?取ってきてやるよ。」
「私は良いよ。二人で楽しんで来て」
「そっか。おう、分かったぜ。」
「ちょっと待った……」
「うげっ。」
孝希は好太郎に首根っこを掴まれ、カエルが踏まれたような声を出した。
「何すんだ!?」
「こーんな、キレイなレディ二人を置いていったら、変な虫が付くぞ〜。いいのか〜?」
孝希が恵をチラッとみる。
恵は、水色のドレスを身にまとう。漆黒の美しい髪が横に流され、キレイなウェーブを出している。
その容姿美の美しさはドレスパーティーに参加している貴族。特に男性から視線の的になっている。
真理亜は、金よりの茶髪に合わせてフリルをあしらった黄色のドレスを身にまとう。
「大丈夫だろ?」
「お前なぁ……。はぁ、そういう所。直した方がモテるぞ?」
「そういう所って、どういう所だ?」
女性の気遣いについて指摘したのだが孝希は全く理解していない。再び好太郎はため息をついた後、孝希を見送り自分はその場に残った。
―――ただでさえ目立っているのだ。この場で女性だけというのはマズイ。
(見ろよ、例のワイバーンを討伐した………)
(ああ、あれが!)
こそこそとこちらをチラチラ見てはさえずるその声があちこちから聞こえる。
ワイバーンを倒した日からその話は貴族間で広まり、ちょっとした有名人になっている。
ワイバーンを倒すのはこちらでは実力を示すのと同義。『C』級とはいえ、竜の亜種に分類されるワイバーンである。
並の兵士では手も足も出ない。
(『無能』少女は見当たらないようだが。)
(恥晒しがやっと自分の身分を弁えたのだろう)
話声が聞こえないようにボリュームを抑えているようだが、全然抑えられておらず、全部筒抜けである。
ワイバーンを退治したあの日以降、小夜は『無能少女』と呼ばれている。噂をさえずる鳥、いや花に群がる虫のような者達の耳障りな噂話がノイズのように耳に痛い。
せっかくの晴れ姿であるが、真理亜の顔は晴れない。
「………サヨ………」
親友とも呼べる小夜が傍にいないだけで不安で不安で仕方が無い。
"聖域"と呼ばれるあの場所は奥に進めば進むだけ危険度が上がる。
それはあの場所には魔力が満ちている。弱肉強食のあの森はそういう強い者だけが生き残るため奥に近づけば近付くほど命の保証が薄くなる。
真理亜の手の平を恵がそっと握った。
「きっと、大丈夫よ。あの団長さんがついているのだから。」
見送りで見た団長さんの姿。それは、太陽を見上げたように眩しい光の魔力を宿していた。
「第一王子殿下!第二王子殿下!第一王女殿下のご入場!!」
先程まで視線の的にしていた者達が一斉に開かれた扉へと視線を注いだ。豪華な衣装に身を包んだ男性二人に女性一人。侍従を従えて入場して来た。
三人共金髪碧眼でよく似た整った顔立ちをしている。
この国には、王位継承権を持つ王、オルゴ・ラス・フォー・ルーレンスの子が三人いる。
第一王子のアルフォンス。王位継承第一位である。ストレートの金地の髪に柔らかな笑顔が印象的な好青年である。
そして、第二王女ルーエンス。アルフォンスの腹違いの弟であり王位継承第二位。
兄のアルフォンスとは真逆で、ツンツンと逆立った髪に目尻が上に上がったちょっと怖い目つきだ。
そして、第一王女であるアナスタシア。王位継承第三で唯一の女性継承者。二人と同じく金色の髪。いつもは下へ流している髪を上で括り、その頭の上にきらきら輝くティアラを載せている。いつもほがらかな笑顔をしていて、誰に対しても平等に接するキレイな女性である。




