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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
3章 勇者召喚編
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竜の力〈ドラゴン・フォース〉

久しぶりに更新しました


「よっと、あぶね~」


 飛んで来る糸玉攻撃を避ける。代わりに風を圧縮した弾を放つ。図体に似合わない素早い動き。八本の脚の機動力で他の魔物とは一線を画した動きで放った何重にも張り巡らした弾を避ける。

 更に、ネスクに傷を付けた飛び攻撃の硬糸。―――からの、体当たり。


(こいつ……)


 "霧"を宿したせいか、この魔物……。下手な魔物より賢い。


「なら、これはどうかな?」


 両手に風を集める。魔力を注入し集めた風を大きくそして、圧縮する。

 集めている間も、糸玉。そして硬糸が飛んでくる。

 それらを避ける事は容易い。だが、徐々に魔物の技術が研磨されて行っている。速く仕留めなければ、今以上に労力を必要とする。

 場合によっては、ミレドグラル様が動かなくてはならなくなる。


(………よし、奴の位置は………)

 

 風の便りで既に魔物の位置は把握している。

 上空へ避けたタイミングで蜘蛛型の魔物の存在するいちへ、―――両手を重ね合わせた。

 二つの圧縮された風の刃が乱雑となって、森を斬り裂いた。


「ドルイド達には申し訳ないが……、今はこいつを優先させてもらお〜」


 ドルイドにこの事(惨状)を知られれば、殺され兼ねなくなるが、今は邪龍の力を宿すこの魔物の方が先決。

 砂煙が起こる中、蜘蛛型のその魔物がいる。先程の攻撃は避けられなかったようで、脚が数本なくなり、腹部も半ばから先。糸玉を発射する先がなくなり、どろどろと紫の体液を流す。

 まだギチギチと狭角が音を鳴らしているが、既に瀕死なのかその場から動かない。このままトドメだ……。


 空へ舞っている翼を動かし、魔物目がけて急滑空。

両手に緑の鱗が、そして爪を鋭く伸ばす。

 力は竜の中では非力。だが、瀕死の魔物程度の『核』を屠る事など容易い。


「闇へ……戻れ!」


 グィンダルのその爪は正確に魔力の源である核へ届いていた。そう、そのまま行けば――――、


「この莫迦!避けろ!!」


 エリュトロンの声でハッと気付き、避(・)け(・)よ(・)う(・)と(・)し(・)た(・)。


 シュッ


―――― 何かが薙ぐ音。その音が遠ざかると、激痛と共に血が溢れ空を舞った。


 * * * * *


(あれからどうなったのだろうか……)


 最後に見た光景が蘇る。霧を内包した蜘蛛型の魔物の攻撃をまともに喰らい木に叩き付けられた。その後、地に伏したタイミングで上から迫り来る蜘蛛の巨大な身体。

 あの後、死んだのだろうか。


(それより、………またここか)


 そこは見た事がある光景である。自分の背丈より、何十倍も高い巨大な石扉。ここはあの《禁扉》の前だ。前回と違うのは大きく彫刻された《ニ》という文字のみ。

 もう、この扉を使わないと決めている。

―――なのに何故またこの場にいるのだろう。


 ギィーという音と共に扉が開き出す。

 今回は触れてもいないのに、一体何故。


 扉が開くと共に内側から流れ出る風が強風となってネスクを襲う。必死に足を踏ん張り、飛ばされないようにする。


 その時、どくんと心臓が鳴った。

 扉が開くとガシッ!と二つの手が開いた扉から出て来た。そして、中から『人』、だろうと思われる何かが顔を出した。ぱちりと、開いた眼が自分を見てにやりと嗤った。

 金縛りに合ったように身体が動かない。体自体が石像になったようだ。


『■■■■■■。■■■■■■■■した。■■』


 まるで、言語が理解出来なかった。脳が拒絶したように聞き取れずそのまま飛び出した何かがとびついてきた。避ける事も、逃げることも出来ず、そのまま倒れ伏された。そして、人間とは思えないくらい開かれたその口が近づいてきて、―――意識が途切れた。


 * * * * *


「チッ!」


 ネスクを乱雑に放り投げる。ネスクの身より今はグィンダルの方が危険である。それに、ネスクの体の傷は彼の特殊な能力なのか既に完治している。


 地を蹴って魔物の一歩手前まで飛ぶ。そして拳を火竜の鱗に変化させて腹部へ拳を叩きつけた。

 火竜拳を叩き付けた蜘蛛型の魔物はふっ飛ぶ。


「はぁー!」


 体内エネルギーを口の中へ溜め込み、吐き出す。巨大なブ(・)レ(・)ス(・)が吹っ飛んだ魔物と、薙ぎ倒した木諸共呑み込んだ。


「おいグィン!しっかりしろ、グィン!」


――― 傷が深い。


 ギリギリグィンダル自身が体を捻ったおかげで致命傷には至っていないが、このままではまずい。

 右を穿たれたように貫通した傷口。そして、その傷は彼の左翼を完全に失(・)わ(・)せ(・)た(・)。


「う……えりゅ……さ、ま……もうしわけ……ゴホッゴボッ!」

「喋らないで下さい!!傷が開きます!」


 吐血したグィンダルを黙らせた後、腹部を圧迫する。ミレドとは異なり、自らの傷は重傷になれば治すことが出来ない。多少は治癒能力はあるが、他の種族よりある。というだけで致命傷や重傷を負えば死ぬ事もあるのだ。


「このまま押さえていて下さい」

「エリュ、……トロン様…」

「私がが仕留めます。……初めからこうしておけば………」


 ぎゅっと拳に力が入る。己の判断ミスへの後悔はあるが今は後回し。ギロッと後ろを睨む。

―――背後の気配には気づいている。破いた服で押さえた手をグィンダルにしっかり抑えさせる。

 離脱するにしても、この魔物を倒さない事には逃れられない。


 黒い霧が徐々に蜘蛛型の魔物の身体を修復している。邪龍ほど高い治癒能力はあちらも無いようで直りは浅い。完全に修復出来ていない今の内に、―――滅ぼす!

 再び口の中にエネルギー(魔力)を溜め込む。

 ミレドほど滅殺力が高いブレスが今の竜族―――長であるエリュトロンであっても、短時間では出来ない。

 完全修復される一歩手前になってしまうが。


「これで終焉の時!」


 練り込んだエネルギーを先程とは異なり細く、けれども威力は倍以上で口から吐き出す。速さと威力に特化したブレスが魔物へ迫る。


「何っ!」


 魔物が腹部の先から糸を吐き出した。グィンダルが戦っていた時のように糸玉。かと思ったが、それは空中で散開した。

 硬糸に加え、己の邪龍の霧が混ぜ込まれたその糸はブレスに込められた魔力を吸収した。

 燃やすエネルギーを無くしたブレスはそのまま消火された。そして、魔物の魔力が増幅する。


「こいつ、私のブレスを……!」


 ブレスの魔力をそのまま自らの糧とし、戦闘能力を上げた。周りの生命力を吸い上げ己の力にするその力はまるであの邪龍のようである。


「………これ以上は、仕方がありません。」


 全身の魔力回路に魔力を流す。

 全身に流れた魔力が身体を変化させる。拳のみであった鱗が肘まで浮かび、硬質な爪が伸びる。そして、靴であった足も鱗が生え三本爪へ変化した。

 竜の力(ドラゴン・フォース)。その力を開放すれば、本来の竜族の力を使える上。自身の力を通常より、何倍にも高める。

 その力を使えば、使い方によっては人姿のミレドに匹敵する力である。

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