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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
3章 勇者召喚編
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雨は降り続ける

更新します


 雨がポタポタと降り続ける。そんな天気と同様に晴れ間の無い心模様の中、森を駆ける。そんな中、【探知】に魔力体が引っ掛かり足止めをくらう。

 尾が木の幹を巻き込んで薙ぎ倒す。舌がチロチロと出し入れされ細長い瞳孔に赤い二つの目が頭上から覗かせ隙を窺う。

 大型のヘビの魔物『エレファントスネイク』。

 その名の通り、ゾウのようにずっしりと重い巨大な体躯。しかしその割にヘビ独特の動きは失われておらず、パワーとスピード両方を兼ね備えた非常に危険な魔物が行く先に立ちはだかる。危険度でいえば、『A』。

 『S』の大蛇と呼ばれる魔物より見劣りするが、あちらと違い特殊な能力が無い分幾分かマシである。


「………邪魔だな。」


 別に急いでいるわけではない。むしろ、考える隙が無い方が今は楽だ。

 【構造具現化(クラフト)】と唱え、右手透明な剣を生み出す。頭の横辺りで剣を水平にして構える。


 エレファントスネイクが長い胴体を使いネスクを囲い込みながら、ぐるぐる回る。内側のネスクからすればその後の動きが読みづらい。

 そのまま逃げ場を無くしたまま、空間を絞ってそのまま一気に体を縛り上げ骨を砕いて来るのか、どこかのタイミングで二本の鋭い毒牙を武器に、喰らいつきに来るのか判断に悩む。


「――――ふぅぅ・・・」


 大きく肺から吐き出した。

 雨がぱらぱらと青葉を打つ音が聞こえる。

 ぐるぐると周りを回ってとぐろを巻きつつ隙を狙うエレファントスネイクに意識が徐々に絞られていく。

 集中すれば、する程"魔力の流れ"見えてくる。

 黄色に見える線はいつでも飛び出せるという印。これが、赤に変わると――――



―――――――シャアアア!


 低く吠えたエレファントスネイクの魔力色が変わった。変わった箇所は頭。ということは、『喰い付き』だ。


 背後から襲い掛かるエレファントスネイクの攻撃。大きく開かれた蛇の大口が横向きで襲いかかる。


 振り向き様に、横に薙ぐ。

 テウメッソに対しては効果的で合ったが、やはり鱗を持つ魔物に対してはそこまで有効的ではない。

 横へなぎ切った瞬間粉々に砕け散った。


 エレファントスネイクの攻撃を後ろへ後退。

 閉じられた口が攻撃に怯んで引いた。


  多少はダメージが入ったようで薙いだ箇所には痛々しい切り傷が出来上がっている。怯んではいるが、それほどのダメージではないようだ。


(今はこれで良い。後は………仕上げだ)


 包帯だらけの右手を突き出し、魔力を込める。


「【構造具現化(クラフト)】【剣よ、再起せよ(スイッチオブブレイド)】」


 ネスクがギュッと魔力を込め、翳した手を握り込んだ。

 エレファントスネイクの口から剣(・)が(・)出(・)て(・)く(・)る(・)。それは、一本どころでは無い。内から外へ貫いて行く剣が最後にはエレファントスネイクの命をも、―――刺し貫いた。

 雨によってエレファントスネイクの返り血が流れ落ちて行く。いつまでも降り続ける雨は、いったいいつになったら、止むのだろう。


 あれから数日、クーシェの行方は分かっていない。

 魔力の反応も感知できず、その上どこへ行ったのかも分からない。捜索は続けているが、一向にその片鱗も見つけられないまま、ネスクは無限に湧く危険な魔物を討伐している。






 人が一人入り切るほどの大きな葉を雨具側にして、ポーアはただ魔物狩りをするネスクを見ていた。

 何と声を掛ければ良いのか悩むが、その答えに答えてくれる人はいない。

 見ていてひやひやする気持ちと無事で安堵する気持ちが複雑に絡み合う。


「ポーア様そろそろ中へ入らなければ、お身体に触ります。」


 ポーアと同じように葉っぱを雨具代わりにしてやって来たカレンがそう答えた。ポーアは、「ですが……」と何か言いたいが、その先を言う前にカレンが首を横に振る。ポーアは、名残惜しげにもう一度ネスクに視線を置いた後、ミレドとポーアの二人で修理した家へと戻った。


* * * * * * *


 家の中ではミレドがエリュトロンと向かい合って座る。

 そのテーブルの上にはネスクが以前、教えた『将棋』の盤が置かれ、それぞれの役柄の書いた駒が並べられている。パチンッと、小綺麗の良い駒の音がなった。


「あの少年、あのままにして良いのですか?」


 こちらの文字で『騎士』と描かれた駒を動かし、エリュトロンがミレドに問う。ミレドは、「よいよい。若者(じゃくもの)はああやって、悩む方が成長に繋がるんじゃ!」と言って意に返さず、駒を進める。


 『竜』と書かれた駒(あちらでいう『飛車』)を敵陣地のエリュトロンの駒を一つ潰した後、ひっくり返し、『龍王』に進化させた。

 ミレドは、「どうじゃ!」と喜び無い胸を張る。

そんな様子のミレドにエリュトロンは少し驚く。


「………意外です我が主。あの者は私から見ても(人間の中では)特別視していらっしゃると、認識しておりましたが。」


「まぁそうじゃの。他と比べると、妾も否定はせぬ。じゃがな、今助言したとしよう。それで答えが出てはつ(・)ま(・)ら(・)ぬ(・)じ(・)ゃ(・)ろ(・)?」


「つまらない……ですか。」


「人の道は、ぬしや妾より短い。それこそ、『月と亀』のようじゃ。

 人はその道に悩んで躓(つまず)き、時には足踏みをする。そんなデコボコの道があってこそなのじゃ。

 奴は若い故、そんな経験をさせるのも、『人の道』を学ぶうえで、重要な機会。先立つ者がそ(・)こ(・)を奪ってはいかんじゃろ?」


「………ミレドグラル様の深い思慮。私、エリュトロン深く感動しました。」


 感動しつつも、ミレドが差した後、パチンッと駒を進め、「王手です。」と呟いた。「何じゃと!?」と声を荒らげた後、盤面を凝視してしばらくした後、ガーン。と落ち込んだ。

 落ち込むミレドとエリュトロンが対局していた盤の横にはクーシェの置き手紙が置かれていた。


『皆様へ


 こんな置き手紙のみを残していなくなる私をお許し下さい。………いなくなる理由は言えません。

 これは私自身の問題であり、私が乗り越えなければならない試練――――なのでしょう。

 決して、ネスク様、ポーア様、ミレドやルリちゃん達に嫌気が差したわけではありません。その事はご理解下さい。

 今のままでは、皆様にご迷惑を被る他たくさん傷つけてしまいます。取り返しの付かない事になってしまうことに耐えられません。

 いつの日か必ず帰ります。それまでの間………さよなら


                   クーシェ 』



(……全く人間とは理解できません。)


 書かれた手紙を横目で見た後、エリュトロンは溜息を一つ。ミレドの演説に感動したのは本当だ。だが、未だに"人間の感情"という物が分からない。

 他の竜、―――例えば、風竜の『グィンダル』と違ってそれほど人と関わった事が無いため理解しづらい。


 一緒にいたいと言いながら離れたクーシェの矛盾した心。

 その合理性を理解するには人と関わった経験があまり無かったためエリュトロンはミレドと違い、人の心を理解するにはまだ時間が必要である。

 

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