歓迎の宴
大分時間が空きましたが、久しぶりに更新します。
――― さてさて、どうしたものか……
家の二階部分へ視線を向けると、そこにはあるはずの屋根部分がキレイに全て吹き飛んでいた。
幸い、人的被害は、(ミレドが年少六人を守ったため)ない。
ボキッ――――
砕けた木材が落下した。一瞬にして、寝床が無くなったため、現在考え中である。
(俺らもテントを貼るか?)
訓練兵士は全員、テントを張って夜を過ごしている。
その連中に見習いテントで一夜を過ごすのが最も得策である。何せ、もう日が暮れかけている。
だが、もう一つの問題があるため実行には移せない。
「どうですか?ミレド様……」
クーシェが心配な表情でミレドへと問う。
ミレドは真剣な表情で先程、襲って来た少女を見ている。
少女は捕縛した後高熱を出して倒れた。苦しげな呼吸をしながら寝込む少女。全身を冷やしたにしてはおかしい高熱だ。何かしらの持病の可能性がある。
診た後すぐに少女の額に触れて魔力を流し込む。ミレドが人を癒やす時に使う動作である。
少女の全身へ光が流れる。流れる黄金の粒が全て、ミレドが流し込んでいる『聖』の魔力。
その光景を目の当たりにしている誰もがその美しい光景に釘付けになっている。
――――しばらくして光が収まった。
光が収束して消え、元の状態へ戻った。
「……これで大丈夫じゃろう。」
緊張した糸が弾けたようにクーシェの気が緩み胸を撫で下ろしている。
未だに起き上がる様子は無いが、ミレドが言うのだから大丈夫なのだろう。
「エリュトロンおるか?」
「―――ここに。」
赤毛の竜族の男の名を呼んだ次の瞬間、ミレドと少女を挟んだ数メートル先に音も無く片膝を着いて現れた。
「すまぬが今宵は寝床の準備ができておらぬゆえ、ぬしの元へ預かってくれぬか?」
「この少女を……ですか?」
「無理にとはいわぬ。可能であれば……」
「承知しました。」
エリュトロンは二つ返事で了承した。
ぐだぐだと悩まれるよりは良いが、それにしては速い決断即決であった。
「うぬ……くれぐれも丁重にのう。なに病人なのじゃからな。」
エリュトロンは深々と頭を下げた後少女を連れて姿を消した。速すぎて、何も見えなかった。
「さて、日も暮れたようじゃし。今宵は宴じゃ!」
いつにも増して聖域内が騒々しく騒いでいる。
「あれ、何杯目だよ………」
「確か………十杯は過ぎたかと」
「ポーア様、………十五杯目です。」
ポーアとカレンと並んで騒々としている中心を見る。
豪酒だと言っていた兵士の男が顔を真っ赤にして倒れ伏している。ブドウの実を使った酒だ。
何かの役に立つかと思い、一月ほど前から作っていたのだが、まさかその酒がこんな『歓迎の宴』で飲まれるとは思いもしなかった。
「ぷっは〜!もう一杯じゃ〜!!」
木を削って作ったジョッキを片手に揚々としている。ミレドは酒に強いようだ。アルコール度数でいえば、凄い強い筈なのだが。何せ、ブドウの皮の時点で人が倒れて動けなくなってしまうくらいなのだから。
「カレンさんは良いのか?」
「私はこちらの方が好みですから。」
そう言って持つ器の中には絞ったオレンジジュースが入っている。
ポーアもそうだが、ドルイドの口には甘酸っぱくすっきりとした味付けの方が合うようだ。
串に刺した肉を摘む。程良いタレの味わいと滴るほど大量の肉汁が口の中に広がって美味しい。
「そういえば、あの子らはどうしたのですか?」
あの子らとは、ルリたち年少組の事である。
「夜も深くなっていますので、テントで休ませています。………付き添いにクーシェ様も」
どうも王国から帰ってきてからおかしい気がするクーシェをカレンも気にしてくれているようだ。
「……俺って……そんなに頼りないか……?」
あの日、クーシェが暴走した日から"クーシェの炎"を見ていない。その事と何か関係あるのだろうか。
何かあるようであれば、相談してくればいいのにと思ってしまう。
「………ネスク様?どうかなさいましたか?」
つい、本音が口に出してしまっていたようだ。不思議そうにポーアが覗き込んでくる。
「あ……、いや。何でもねえ!さあそれより食べよう!ポーアは飲まないのか?」
暗い話は無礼講に持込厳禁である。
―――そういうのは後回しにしよう。
「そうですね。今年で十六ですし、一杯くらいなら……」
「ポーア様は飲んではいけません!絶・対・に!」
酌をしようとしたら鬼のような形相のカレンに止められた。こちらでは十六で成人のため飲める筈なのだが、………一体、何故?




