ミレドと竜
更新します。誤字報告ありがとうございます(._.)
竜族達の間に変な間が広がっている。それもそうだろう。
邪龍のために生み出された彼らにしてみれば、その使命が無くなったのだ。二つ返事で言える程そう簡単ではない筈だ。
『畏まりました。聖龍様が『不要』とおっしゃるのであれば、我らは従いましょう。そして、それに伴い我らの持つ『力』を聖龍様へとお返しします。』
周りが驚いている中、一番始めに開口したのは代表として出た赤い竜である。
ずっしりと肝の座った口調。『代表』ということは、竜族の長なのだろう。
「これ、返すではない!その力はそなたら竜族の物。妾が手塩にかけて生み出したそなたら"だけ"の力じゃ。
そなたらの身に危険が降り注いだ時、その力で己を守るために与えた力じゃ。それは、既にそなたらの一部になっておる。大切に使ってくれぬか?」
ミレドの優しく温かい魔力が赤竜へ降り注ぐ。先ほどの重い圧のような空気が打って変わり雲のように重さを感じさせない。
『御意。聖龍様より戴いたこの力、大切にしとうございます。』
「うむ、これからの事は皆と相談するが良い!」
『御意。……聖龍様。厚かましいと存じておりますが、ぜひ、幼竜に『名』を頂ければそれほどの幸はございません。』
「……そうか……幼竜が、子々孫々繁栄しておるか?」
『今年度で、既に五匹生まれましたこと、ここに報告致します。』
「うむ、首が据えたならば母共々連れて来るが良い。その時、『名』を授けよう」
「ありがとうございます」
ミレドは赤竜の前から背を向けて、王国側の方へと向かう。その後ろでは赤竜がずっと頭を下げているのであった。
「そちらの用件は理解しておる。どうせ、そこの異界の者らの指導、じゃろ?」
ミレドが王国の団長―――アルゲルトの前へと進み出た。
* * * * * * *
未だ衝撃が抜け切らないでいる。
「あの団長の一撃を………あんなガキが………?」
「あのボウズの持ってる奴、どう見てもあれ訓練用だろ?」
「意味分かんねぇ……」
「あの少女って、まさか………」
「聖龍様?あんな幼い子どもが……?」
困惑する兵士の呟きが聞こえる。兵士の誰もが衝撃を受けている。自分達、ましてや日頃鍛えている兵士の皆でも苦戦した魔物を一瞬で仕留めてしまった団長と呼ばれるあの人の攻撃をいとも容易く防いだ。しかもなぜか木刀で。
自分と同じ黒髪黒目の少年。幼さの残るあどけない顔立ち(恐らく歳下)である。もちろん召喚された人の中にはいなかった。
そもそも召喚された人は、ほぼ全員(自分&母、真理亜以外)が孝希、好太郎、恵のクラスメートか、同学年の人達であった。
心臓が圧迫されたようにバクバクと音を鳴らす。
白い美しい少女の怒気。その怒気に圧倒され空気が重く感じる。白いストレートの髪に細長い角、そして尻尾が元の世界とは異なる事を表している。
金に光る猫のような瞳孔が縦長の瞳がじっくりと全員の顔を確認した。
――――風が巻き起こった。
次の瞬間には団長の剣を受けた後下ろした少年が消えた。まるで、映画のフィルムのコマが一つ抜けたような動き。………全く見えなかった。
いつの間にか綺麗な少女の前で司祭と呼ばれる人の腕を掴んでいた。少年へ向いている司祭の顔色が悪い。
一体何があったのだろうか。
次は空から竜が降ってきて少女の前で首を地面に着けている。次々に起こる事に頭が追い付かない。
竜との話が終わったようで団長の前へと少女がやって来た。何か話している。
まあ、話はどうあれ自分達は、『戦外通告』を下されたためあまりわがままを言える立場は変わらない。
今、この場に他のパーティーメンバー(恵、孝希、好太郎、真理亜)はいない。自分一人だけである。
護衛も『最低限』である。戦力にならない者達に割く労力も無い。――― そう言われた。
「異界の客をこのように扱うのか!」
物思いに耽っていると怒気のこもった声で現実に引き戻された。あまりの怒気に体がビクッと震えた。
「私共も、それはどうかと提案しましたが、貴族派連中が騒ぎを起こしそうなので……」
「それをどうにかするのがぬしらじゃろう?その頭は何の為の頭じゃ!召喚したからには責任を持て!責任を!!」
大臣が傍から見ても分かるくらい凄い汗をしている。あの人、頭上が薄いのにこれ以上薄くなりそうで心配である。
「………はあ、仕方ないのう。今は魔物活性化により、安全な場などあまり無いが……引き受けよう」
「ミレドグラル様、ありがとうございます。」
団長がそう言うと頭を下げた。大臣もそれに従い頭を下げる。だが、次の瞬間の爆弾発現で王国側の団長、大臣、護衛の騎士団は青ざめた。
「ただし、そちらの国には二度と正式には行かぬ。と公言したゆえ国王にその旨伝えよ」
「ミレドグラル様!あなた様が『遣い』を送ったというのは」
いつもは冷静な団長が焦った様子で顔を上げる。その瞳には困惑と焦燥の色がある。
『―――― 事実じゃ。』
ミレドがぴしゃりとばっさり切り捨てた。絶対零度の眼差しが団長と大臣に降り注ぐ。
「妾はその事をまだ許しておらぬ。貴様らの国なんぞ滅ぼしてやりたいとも思うが、我が遣いの"優しい"心遣いで今もこの場に顔を出しておる。ありがたく思うが良い」
「ありがとうございます。ありがとうございます!」
土下座に近いくらい頭を地面につけようとする大臣を見るからに何かまずい事をしてしまったのだろう。
「分かればそちらは隊を率いて早急に立ち去れ。ネスクの言う通り妾も暇ではない。」




