そこにいるのは・・・・・
更新します。少しホラー寄りにしていますので、心臓が弱い方はお気をつけ下さい。
「それじゃあソフィ、戻るよ。」
カレーを綺麗に残さず食べ終えた。すると、器が跡形も無くどこかへと消えていった。想像の具現化なので消し去ることも容易いようだ。
「はい、その解答が最適解です。そしてもう来ないでください」
・・・・・・・・・・
「冗談、だよな?」
「…………はい 冗談です」
幾分か間があった「はい」に思わず頬が引きつったような苦笑になる。当のソフィ本人が真顔なので冗談なのか理解に苦しむ。
「冗談ですよ。ほんの悪戯心です。次お会い出来る日を楽しみにしています。―――これは私の本心です。
大朏様はどう思っていますか?」
ネスクはスフィアのその言葉で胸を撫で下ろした
「ああ、俺もソフィと会うのは苦じゃない。」
「………それ暗に楽しくも無いと言ってません?」
「んなわけないだろ!一緒にいて楽しいに決まってんだろ!!
………あっ。」
失言、もとい告白紛いのような言葉になった事を後から気付いたためネスクが固まった。
こっちの世界で「一緒にいて楽しい」は、ずっと一緒にいたい。つまり、結婚したいという捉え方をされる事がよくある。
現によく付き合っている男女間でのプロポーズに使われる事が多々。
固まったネスクを見たソフィアが真顔から少し砕け、控えめにクスクス笑う。
空気を変えるためにあえてわざと、ゴホンと席を一つする。
「とにかく、ソフィに会うことにイヤイヤじゃない。それだけだ!」
「そうですか。分かりました。そういう事にしておきます……」
ネスクが「叡智の鍵」と唱え、鍵を取り出す。
「と、忘れる所だった。ソフィ、ゴブリン退治のの時、俺に一度会ったか?」
「………?謎掛けですか?」
「いや、何でもない。それじゃ!」
鍵を反時計回りに回しながら、本よ、閉じろ と唱える。光が溢れネスクの姿を呑み込み消えた。静寂が降りると共にソフィアだけがその空間内に取り残された。
『―――― 俺に一度会ったか?』
ついぞ先程聞かれた事が頭の中でぐるぐると回る。首を捻って謎掛けを考えるも、答えが浮かぶわけでもない。
あれから数週間過ぎたが、ネスクと再会したのは今日が始めて。恐らく、ネスクの勘違いだろう。
「さて、情報整理に戻りましょう。」
休憩がてらネスクの相手をしていたが、山のように処理すべき『情報』が本となって書庫の中には、存在する。左手の中指と親指でパチン!と鳴らす。
山となって混在する本が積まれている。ソフィアの主な管理はこの分別である。
まずは、分類事に情報を整理する。そして、古くなった物は『処分』し、真新しい物はそれと入れ替える。
その数は、国情勢から個人の情勢まで数多。それに全て目を通し、記憶してしまい込む。情報は日々変化する。
「………?」
何か声が聞こえた。
だが、周りには誰もいない。
再び本へと視線を戻した。
瞠目した。床から伸びた白い手がソフィアの頬を撫でる。冷たく冷え切った指がガッと両頬を撫でて視線を外させない。
――――― 自分の顔がそこに浮かぶ。
紫の瞳がじっと自分を見つめる。その瞳の中に真っ赤な目の自分が映る。
にっこりと三日月のように裂けた笑みを浮かべる。
『やっと気づいたね、私の半身。あなたが『禁忌』と呼ばれる理由………思い出した?』
甘い声で意識が揺れる。目の前の『自分』が何を言っているのか全く分からない。
何も答えない。でいると、耳元で囁く。
『■■■■■■■■■■■』
心臓が激しくなり目の前が真っ白に。
警告音のサイレンが鳴る。だがその音はソフィアの耳には届かない。時間にすれば、瞬きするくらいほんの一瞬だけ意識が飛んだ。
―――再起動。
意識が復活すると真っ先に地面を下へ向けるも、何もいなくなっている。辺りを見渡す。
―――何も存在しなかった。
始めからそこに何もなかったようにサイレンも止んでいる。静寂が広がる中、まだあの死人のように冷たく細い指の感覚が残っていた。
* * * * * *
現実へと意識が戻ってきた。戻ってくると真っ先に【長距離探知】を発動させて確認する。―――確かに見慣れない反応が西と南そして、来たから徐々に近づいてきている。
近くの草むらから葉を一枚もぎ取って、口に手の共に添える。
ピ―――――――――――ッ!!!!
甲高い音色が一つ空に響く。ルリの耳であれば聞き取れる筈だ。その意味は、『警告』である。
草笛を教えてくれたルリならば気付いてくれる筈だ。
「さて、さっさと戻るか!」
魔力を足に付与して突き進む。数分もあれば家に辿り着ける。足を踏み出してネスクは駆け足で戻る。一番の懸念は残るが何もせずにはいられない。




