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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
3章 勇者召喚編
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久方ぶりの『書庫』、ソフィアとの和解

久しぶりに更新します。


『――――【叡智の鍵(ソフリア・クレ)解錠(オープン)】』


――――認証を確認。入庫を許可します。お帰りなさいませ、我が主(マイマスター)。


 ソフィア、ではなく叡智の鍵(ソフリア・クレ)に紐付けされた"概念の声"が頭に響いた。

 今回は承諾されたという事は、ソフィアの許しが下りたということでもある。





 入って早々に目に入るのは自分の背よりも大きな本棚である。ここには世界中のありとあらゆる情報が存在する。そんな本達に囲まれた空間に少女が一人―――ソフィアだ。一方的な『拒否』の前と何ら変わらない姿。

 天使を彷彿とさせるような白い髪。その髪と合わせた白いドレスを身に纏う。


「お久しぶりです。マスター。もう一度お目にかかれる日が来て私もホッとしています。」


 読み耽っていた本を閉じて本棚へと返還すると、赤い瞳をこちらへと向ける。ラズベリーのように熟れた『赤』。あの時の、血の『山』がふと蘇った。


 意識が沈みながらもはっきりと見えた『赤』。


 頭(かぶり)を振って湧いた記憶を振り払う。そんなネスクの様子を見て小首を傾げる。ソフィアの頭の上にはハテナマークが浮かんでいる。


「ああ久しぶりだ。よくも拒否ってくれたな。聞きたい時に拒否られて散々苦労した。ああした!これで満足か?」


 ネスクの背後から黒いオーラが現れる。

 必要な時に連絡が付かない。その不自由さにこの数週間、とても悩まされた。それと同時にこの叡智の鍵(ソフリア・クレ)の便利さも改めて実感した。


 叡智の鍵(ソフリア・クレ)と同じような効果の魔法―――【鑑定】もあるにはあるが、利便性ではこちらの方が上。本人が知らない事は表示されない。


「拒否らなければネスク様、あのまま脳が腐っていったではありませんか。少々携帯が使えないくらいで何をそんなに怒っていらっしゃるのですか?」


「別に怒ってねえ。てか脳が腐るってなんだよ。別に日中頭を使ってないわけじゃねえんだぞ!あと携帯って、お前はスマホでググれるインターネットか!」


「その『いんたーねっと』と、私。何ら変わらないのではありませんか?調べるという意味では」



 自分をインターネットと揶揄するソフィア。


 うん、ある意味似てなくもない。


 だが、人格が存在する部分は全く別物である。


「お前な、自分を物みたいに例えるのやめろ。聞いてるこっちが胸くそ悪くなる。」


 ソフィアはソフィアだ。唯一無二の存在であり、大事な相棒(パートナー)。そう認識している。


「………かつて、ジル様も同じような事を仰っていました。自らを卑下するな、と。」


 ソフィアが目を逸らし、壁へと目を向ける。ステンドグラスが貼られる壁。そのステンドグラスは3つの絵を映し出す。真ん中が白い翼を羽ばたかせる龍。

 その左隣が剣を片手に魔物と思しき化け物と戦っている男性。さらにその反対、龍の右隣は、背丈ほどの長い杖を携えた女性である。


「あれは左からレイブ様、ミレド様、ジル様を表しています。皆の記憶から薄れつつあるお二方の功績を讃え、書庫の一部を私が改変しました。」


「……そうか。」


 

 ステンドグラスのその輝きは、とても綺麗である。

 赤、黄、緑と配色が虹色に彩られたステンドグラスを眺めていると、突然の拒否で怒っていた頭が冷えてきた。

「大朏(オオヅキ)様、何も告げずに入庫拒否して申し訳ありませんでした。」


 視線を下へ戻すとキレイな姿勢でソフィアが頭を下げていた。


「俺も……悪かった。最近、お前に負担ばっかり掛けた。お前の言いたかった事も何となく、分かった。」


 ミレドが行った今回の遠征の目的に加え、王都でのネアとの一件。色んな物を見て、聞いて、知った。


「回答を伺ってもよろしいですか?」


「大切な奴の事くらいちゃんと考えろ―――だろ?」


「まあ、合格点としましょう。……今更ですが」


 呆れたように言うソフィア。てっきり辛口で罵られるかと思った。









「やっぱ、カレーは旨いな!」


 一息つきながら以前ソフィアが使っていた書庫でしか味わえない前世の"味"を堪能する。

 少しピリッとする辛味に白飯がとても合う。人参、じゃがいも、程良いサイズの肉。それぞれが協調しあい煮込まれたこの味は記憶の中の味である。

「こちらで食事を取られてもあちらでは空腹は満たされていませんよ?」


 紅茶を口の中に一口注ぎ入れ飲み込んだ後、ソフィアがそう告げる。仲直りが出来た事で上機嫌なのか頭の上の触手(癖毛)がゆらゆらと揺れる。

 どういう原理かは不明だが、クーシェのみみや尻尾と同じで彼女の心の揺れ具合が表れている。


「いいの、いいの!腹は満たされんが、心は満たされたからそれで良いんだよ」


「………そうですか。マスターがよろしいのなら、それで良いのでしょう。ですが、早めにお戻りになられた方がよろしいと思われます」


「……?何か外であったのか?」


 ネスクはカレーを掬っていた手を止めた。向かい合わせで座るソフィアがカップをテーブルに置く。

 少し腰を上げて、手を伸ばす。


「!」


 思わず心臓が跳ねたがその手はネスクの方へと伸ばされた後、一粒のごはん粒を摘み取った。一瞬、キスをするのかと思ってしまった。

 何故そのように考えてしまったかは、自分自身でも分からない。



「早くお戻りにならなければ、『嵐』を呼ぶ虎と竜が『王』へと挨拶に来てしまいますから。お早めを……」


 * * * * *



「クーシェ様ぼーっとされてどうかなさいましたか?」


 洗濯物を物干し竿に吊していると、一緒に吊していたポーアに話を掛けられた。


「いえ……何でもありません。ただ、ここ数日寝付きが悪いせいで寝不足みたいです。」


「まぁ、それは大変です。健康面で寝不足は病の『元』と言いますし、昼食の後はお休みしましょう。今日はいい天気ですので、外でお昼寝は気持ち良いですよ?

ネス様もこんな日によく昼寝していますから」


 ミレドは只今フルール、フィアール、マロンと勉強中。カレンは、パルメルスとネアを引き連れて魚釣り。ネスクはルリと共に新しく出来上がった村の様子を見に出かけている。

 そろそろ昼時のため全員家の一階スペースの大部屋に集まる。全員集合しての昼食はこの家で暮らし始めてからの日課になりつつある。


「昼食を取りながら考えておきます……ポーア様はドルイド族に誇りを感じていますか?」


 ポーアが目を丸くして驚いている。


「急にどうされたのですか?」


「一度、聞いてみたいと思っていました。その、一族についてどう感じておられるのかこれまで聞いた事が無かったので、」


「そうですね。国の中枢を担っておりますし、お父様やお兄様、お祖父様もそのまたお祖父様も―――ドルイドが今にまで繁栄して来たのはご先祖様が汗水垂らして頑張ってきたからですから。『誇り』に感じております。」


 前を見て真っ直ぐとしたその言葉や言動に心惹かれる物がある。これがカリスマ性という物だろう。


「人の上に立つ者の、素晴らしい考えですね。」


「いえ、そんな……!そう思うのも最近です。昔はそうでもありませんでした。昔は色眼鏡で見られる事が嫌で自分で言うのも何ですが、ヤンチャをしてました。」


 恥ずかしがりながらそう話すポーアの暴露話を聞いて今度はクーシェが目を丸くする。


「そう何ですか?」


「はい!実を言いますと、良く護衛の者達にいたずらをしたり、追いかけっこも良くしました。泥まみれになって戻るとよく師匠に怒られた物です。………お恥ずかしいです」


 ポーアの昔で思い浮かべる印象は、本を読んだり、花と戯れたりと『女の子』らしい物を思い浮かべた。

 今の印象とは正反対の印象で驚いてしまった。

 顔を見られるのが恥ずかしくして手で覆ってかくしている今のポーアからは全然想像が付かない。


「今からは想像つきません。」


「はい……最近はよくその事を宴の席でお兄様が昔の事をネタで披露されてしまいます。といっても、身内の方が多かったので殆どが皆に知られている事が多いですね。ふぅ。」


 遠い目をするポーア。何とかければいいか分からないが、そんな話を宴の席で毎回されていては本人からすれば顔から火が吹くレベルである。自分であれば、恥ずかしさのあまりそのまま本物の火を出して抑えられる自身がない。


「大変でしたね。お気持ちお察しします」

「ありがとうございます。クーシェ様はどんな幼少期でしたか?」

「私は……」


 耳が遠くの微かな音に反応する。―――話し声だ。

 ネスクとルリが新しく発足した村へ行くと言っていたためその事が頭をよぎった。だが、魔力の反応に気付く。

 こちらへ近づく反応が一つ。これはネスクの物だ。だが、少し前から動きが止まった。何かあったのであろうか。

 その後方200メートル地点に多数の反応、こちらは村人の者と、一際輝く魔力が一つ。これはルリの物である。


 そこから500メートルくらい離れた所から無数の知らない反応が近づいてくる。魔物の反応もするが、知らない反応に接触すると、途端に消滅している。

――――その一つの反応。周りを取り囲む中で一番強い魔力を感じる。


「クーシェ様?どうなさいましたか!?」


 急に体が震え出したクーシェの様子を見てポーアは心配する。


「………獅子が来ます」

「どういう意味ですか?」


 魔力に充てられて感じる感覚は、野生の動物が格上の存在に遭遇した際に感じる感覚と等しい。


 今(・)のクーシェでは間違いなく戦えば負ける。

次回はなるべく早めに作る予定ですが、日付は未定ですので気長にお待ち下さい。

 楽しんで読んで頂いている読者様にはご迷惑をお掛けして申し訳ありません。(._.)

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