闇の中の王
更新します。
前回のタイトルを『"裏"』に変更しました。
内容自体に変化はありませので、そのままお楽しみ下さい。
「お!早いな!」
約束した時間に広場へ戻ると、ポーア、パルメルス、フィアールが戻って来ていた。夕焼けとなった空。西へ傾いた太陽が沈みかけている。
「ネスク様!そちらの要件は終わったのですか?」
「ああ!あらかたな」
アイテムポーチには、予定通りのカルトッフェル(じゃがいも)の苗が入っている。その他にも日用品や、食材などなども購入して入れている。
「すまんが、明日もここに来る事になった」
「用事ですか?」
「まあな………」
「何かあればおっしゃって下さい。お力になりますので……」
「頼りにしてるさ!」
ポーアは何かに勘付いた様子。頭の回転が早いから問題の解決策を出してくれる。
ネアの様子を見ていると目で『何?』といったように鋭く睨んでくる。ネアのはいつも通りに戻ったようだ。
ルリはというと、服を買いに行ったパルメルスとフィアールの方に混ざっている。
今姿が見えないのは、マロン、フルール、ミレドだ。
ミレドの事だから約束には来るはずである。大ざっぱな性格をしているが細やかな部分はああ見えてしっかりしている。
「待たせたのじゃ!!」
人混みを突っ切ってミレドがやって来る。あの見た目から目立つため分かりやすい。後ろのマロンとフルールは遊び疲れたのかぐったりしている。
「お前にしては遅かったな何かあったのか?」
「ちょっと色々と喰ったのじゃ。まあ間におうたのじゃから良いじゃろう!」
「まあいいが、……そうだポーアこれ」
残った残金をポーアに渡す。ポーアから渡された大金をいつまでも持っているのは精神的疲労を伴うので、早めに返しておきたい。
「そんな!明日も来るのでしたら持っていて下さい!」
「うむ?明日も来るのか?ネスクよ」
「ああポーアには話したがちょっと野暮用でな」
「ならば明日はクーシェとカレンも連れて来よう!あの二人も一日休んだのであれば大丈夫じゃろうからのう!」
二人を置いて来たのは重傷の後だからというのが主な理由である。ミレドが治したとはいえ、クーシェの炎は焼かれれば、その治りが通常より遅く身体への負荷が掛かってしまっていたからだ。
「そうしましょうネスク様!わたくしも明日は洋服をクーシェ様やカレンと選びたいですし……!
カレンったらああ見えて私服が少ないんですよ?」
「おなごが鎧だけというのは、世間体であれば致命的じゃのう。」
「二人の体調によるが、まあ病は気からっていうしな。帰ったら二人に聞いてみよう」
「はい!」
全員集合したためひと通りが少ない建物の裏へ足を運ぶ。魔力反応を確認して、壁に空間魔法【水面鏡】を発動させて、聖域とこの空間を繋げて固定する。年少組がぽかーん、としている様子であるが、早くしないと人も来る可能性もある為急いで向こうの空間へ移動してもらう。
「相変わらずじゃのう。おぬしの力は………」
「空間魔法で距離を捻じ曲げたのですね。流石です。」
「それじゃ、閉じるぞ?全員渡ったな?」
最後にネスクが入ると同時に魔力供給を遮断する。ゲートが閉じていき、最後には何もなかったように穴が閉じた。
* * * * * *
「ったく、ヤったと思ってたのに、あいつ、生きてやがったか」
空間が閉じた向こう側で建物裏の影から一人の人影が浮び上がる。残念そうに独り言を呟く一方でフード下の口は歪んだ笑みを浮かべている。
「おい、出てこいよ!そんな空気に化けていても気配が殺せてねぇぞ。」
誰もいない空間で呟く。…………返答は無い。
するっとフードの袖から投げナイフを投げる。
一直線に飛んでいくナイフの軌道がズレた。
『驚きました。人間の中にも私に気づく者がいらっしゃるとは……』
空気が揺れる。そこにまた一人姿を現す。
先に現れた方の背丈より少し低めの白いフードを被った少女。腰に刺す鞘に青い刀身の剣をしまい直す。
「お前本当に隠す気あったか?バレバレだ!バレバレ!……それで?俺に何かようか?要件次第じゃ、お前を………殺す。」
『殺す』という言葉に濃密な蜜を絡めたように粘くとろける殺気が込められている。フードの置くの赤い瞳に鋭い光が灯り、これまた口が三日月のように裂けそうなほど釣り上がる。
「あなたには用事はありません。昔の知り合いがいたので、そのお方の見送りをしていただけです。しかし、あなたがその気ならば致し方ありません。
―――私も忙しいのです。数秒で方を付けます。」
「………そうか。じゃ、一発だぁ!」
足を一歩踏み鳴らした。影が白いフードの少女を目がけて伸びて行く。くねくね動き回る影はその軌道を全く予想出来ない。少女の前まで伸びた影は三つに分かれる。一つはまっすぐ、2つは左右の建物を上りながら。
槍のように尖った先端が壁、地面から飛び出す。
「『影叉』ですか。あなた……」
影が貫いて影の中へそのまま引きずり込む。
「達者な物言いをしてた割には、ザコだったな。」
『人をあまり舐めていますと、痛い目しますよ|?』
影を操るフードの男が咄嗟に左壁を蹴って宙へと逃れた。冷気が流れる。先程フードの男がいた所に氷柱が出来上がっていた。その氷柱の上に軽やかに無傷の少女が着地した。
「チッ………グラキエ」
「そういうあなたは『カラス』ですか。なぜ味方の私に攻撃を?」
「あんなクソみたいな奴らと一緒にすんじゃねぇ!!」
憎しみに染まったその眼はフードに隠されていても憎悪が滲み出るくらい暗く黒く染まっている。その眼を少女は知っている。
「先程の技も『影渡り』ですね。あなたの種が判明した事ですし、危害を与えた貴方にはペルメスの法に則り処理します」
少女の手には冷気が集束していく。腰の剣とは別に氷で出来た剣が何もない所から出来上がった。
「最後にお名前を聞いておきます。報告の際に名前がなければ困りますから。」
「ペルメスの犬が……。俺に指図すんじゃねえ!
―――俺はこの世全ての闇を背負う者。闇の『王』クロ様だ!!!」
ドロドロと流れ出した影が人一人の影の面積ではありえないくらい大きく膨張し形を変えた。その姿は悪霊を彷彿とし、畏怖を与えるおぞましい姿をしていた。




