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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
3章 勇者召喚編
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本当の事

更新します



「くっ……」


 拳に込めた魔力が吸い取られ消滅した。

 魔力は魔力で中和される。同格以上の魔力をぶつけられた時、強い方の魔力が弱い魔力を消滅させる事も可能である。

 決して弱く無い魔力を込めたつもりが、逆に取り込まれてしまった。更に体に重い拘束が強くなる。


「国で大事にされ、宝のように育って来たのでしょう?ねぇルリ?」


「ネアお前……何……言ってんだ」


 ルリに対する言葉の棘。ネアが見下ろすその瞳の奥は暗く光を通さない目が注がれる。


「あんたが知らないって事は話して無いんだぁ。ねえ、 エルフのお・ひ・め・さ・ま」


「そんなの……どうでも良い」

「あんたがよくても私にはあるのよ!」


 重圧(プレッシャー)の魔法を掛けられたように地面へと体が吸い付けられる。


「ネア、……………やめろ」


 いつになく低いトーンで圧を込めて叫ぶ。魔力を吸われたが動けなくなる程ではない。重圧もそうだ。力は強いが耐えられない事は無い。

 だが、ルリは違う。重圧でルリが苦痛な表情を浮かべる。ルリは体がまだ弱い。強すぎる力を加えられるとガラスのように砕けてしまう。



「何よこれくらいで怒鳴っちゃって……バッカみたい」


 ネアが声で脅したおかげか少し圧迫する力が弱まった。


「ネア、お前は何に怯えてるんだ……」


 周りに怒り散らすその姿は、幼子が駄々をこねる姿とどこか重なる。


「私が怯えてるですって?あんたの目は節穴ですか!?

どこをどう見たって怯えるわけないでしょ!」


「……ウソ……なら、どうしてそんなに……震(・)え(・)て(・)る(・)の(・)?」


「えっ?」


 ネアが驚いたように言葉を切って目を大きく見開いた。本人は隠しているように見(・)え(・)る(・)が僅かに手が震えている。(過去の事から)心だけが大人にならざるを得なかったためかネアは周りに怒り散らす事で怯えているように見える。純粋な感情がネア自身も知らずの内に歪んで周りに攻撃的になる事で怯えているのだ。


「ウソ……なんで……」


「ネアは……ウソが下手……だから……」


 よろよろしながらルリが立ち上がる。体が強張っている体を動かしながら、一歩、また一歩と近づいていく。

 こんな圧迫を受ければ歩く事もやっと。

 魔力を奪われ続け体力も消費する。今も奪われ続け出来ないいるせいで顔色が悪くなってきている。


「来るんじゃ―――――ないわよ!!!」


 両翼を広げる勢い良く飛び出す無数の羽に黒い影のような魔力が全てに絡まり、『黒い弾丸』のようにルリへと注がれる。以前受けた羽根だけの攻撃とはわけが違う。


「くぅ……」


「ルリ!」


 ルリが苦しげな声を上げる。彼女に刺さる羽根が彼女に当たる度に魔力をごっそりと削っている。

 ネスクも立ち上がり、ルリの元へ行こうとする所に羽根の雨が行く手から降る。咄嗟に顔だけはガードをする。

 激痛が体を駆け回る。体を針に貫かれるような鋭い痛みのあと、脱力感がやって来る。おそらく、魔力回路に負荷を与える効果の物だろう。直接痛覚にやって来る痛みで意識が遠のく。


「ネアの……言う通り……私は持っていた、のかもしれない………でも……」


 ルリの顔が白い魔力の少ないルリが魔力を座れながら、異常に身体の中の魔力を消耗させる。こんなコンボ技を受け続ければ直ぐに底を尽いてしまう。


「ただの…与えられるだけの………存在になるくらいなら………私、は、ネア……あなたのような『自由な鳥』に……なりたい!」


「皮肉ぅ?私のどこに『自由』なのよ!家族からは見放され!国から追い出された!今も!監視のある中のどこが『自由』なのよ!!!」


(そういうこと……か……なら……)


 激痛が走り集中が切れそうになるが今、ネアが発動している魔法、のような物を見た事で発動出来る。

 加わる圧、吸い上げられ束縛した影、降る黒い散弾を全身に浴びながら、ルリの前へ躍り出る。閉じた目を研ぎ澄まし、魔法のような物体の本質を"視る"。


「【無効の眼(キャンセリング・アイ)】」


 ネスクの黒い瞳の瞳孔が光る。その瞬間、

瞬きの一瞬すら分からない刹那の時にネスクの瞳の中の色が全て消えた。


 吸い取られ続けていた魔力は止まり、激痛を与え続ける黒い弾丸もただの羽根へと元に戻った。加えられる圧も全て"無"に帰る。


「な、なんで?急にまた……?」


 魔力の操作が出来なくなったネアが慌てる。それもそうだ。先程まで使えていた魔法、もとい、『魔力』に関わる現象が一切起こせなくなってしまったのだから。

 ソフィアと連絡出来ないため、事細かな事は省いて一切結界外からの干(・)渉(・)する事の出来ない結界を作り出す。


「さてと、話してもらうぞ。お前が施された物全てを!」


 * * * * *


「……すみませんでした。」


 地面に正座になって座らされたネアが全然反省していない様子で謝る。


「もう一発、イットく?(笑)」


 笑っているようで笑っていないネスクが右手でデコピンの構えを取ると、青褪めたネアが涙目になりながら、額を両手で隠す。


 たかが二発与えただけだというのに大げさである。


「ネア……痛い?」


「痛いに決まってるでしょ!!!何アレ、本当にデコピン!?脳が飛び出るかと思ったわよ!!」


「おっ、元気そうだな、ならもう一発……!」


「イ〜〜〜〜〜ヤ〜〜〜〜〜!!!!!」


 ムンクの叫びのように縦長の顔になり、更に青くするネア。もう、青すぎて、緑の肌にでもなってしまいそうである。


「というのは冗談で。………辛かったな、ネア」


 頭を片手で撫でてやる。ネアが急な変わり身でクエスチョンマークを頭の上に出している。

 一通りの事情は聞いた。今、この時計塔には誰の魔法も無効にする『魔法』を施している。さすがにこの状況で『視る』ことはいかなる魔法であろうとも存在しない。

 ネアの話を聞く限り、ヤツには『盗聴』のような魔法は使えないようだ。おそらく口の動きで読み取れるくらいは出来るだろうが、『魔法の視覚』を封じているためそれも不可能である。


「良い子……良い子」


「ちょっと!ルリも私の頭を軽々しく撫でないでよ!私はそんな、……軽い女じゃ………」


 冷静になったネアかなが物申す途中で下を向く。ルリは絶讃、怪我マミレ。軽傷ではあるが、無数に黒い羽根が突き刺さり痛々しい。


「ちょっと待てよ………二重魔法(ダブルキャスティング)【月の雫(ムーン・ドロップ)】」


 対魔法効果を付与した【月の雫(ムーン・ドロップ)】を発動させる。自身が既に回復を不要とする身体であるため、しばらく出番がなかったが、【月の雫(ムーン・ドロップ)】は、一日に一回という制(・)限(・)を設けているため、他人の傷を癒やすのに最適である。(最も、欠損した手足や致命傷は同行できないが。)


「体はどうだ?」


「………ん、治った」


 刺さって痛い羽根は消えてなくなり、傷口には新しい皮膚が出来上がり完全に元通りになった。


「あんたもう、何でもありね。」


「いやそれほどでも〜」


「褒めてないわよ!!」


 呆れた後にプンスカ怒り出すネア。表情が暗い顔から百面相するネアはやっぱりこっちの方が良い。


「ネアも元通りになった事だし、そろそろ食べよう。今度は無駄にすんなよ!作ってくれたおばちゃんに失礼だからな!ほれ!」


 小さなアイテムポーチから茶色の袋を取り出して中のタイヤーキを手渡す。今度は叩かず、きちんと受け取る。


「……どう、食べるのよ。」


「そのまま齧り付け!こんなふうに」


 タイヤーキの頭側から一口。口の中にモチモチした生地の感触とほど良い甘さのアンコの味が広がる。その味は紛れもなく懐かしい味である。


(昔はよく、小夜と夏祭りに行った時に食べたな……)


 着物を着てはしゃぐ小夜と一緒に近所の神社で開かれる花火の祭りによく屋台荒らしにいった物である。


「あま〜♪」


 リスのように小さく食すルリの姿に思わず右手が自動で吸い寄せられる所を自制する。


「………ごめんなさい」


 ポタポタと地面に大粒の涙が落ちる。

 タイヤーキを一口食べた後俯いて涙を流すネアがボソリと呟いた。彼女の事だ。後から怒り出すに決まっているから、知らぬフリをして聞き流す。


「………まあ、明日は任せろ」


 今は彼女がたくさん笑える楽しい時間を作ってあげよう。そして、悲しい事をさせた者達にはそれ相応の"対価"を支払ってもらう。例え、それが彼女の肉親であろうとも。

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