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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
3章 勇者召喚編
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拒絶

更新します


「あれ?あいつどこ行った……」


 目を話したすきにネアが跡形も無く消えていた。

 人が行き交う中ではぐれると探すのは一苦労である。


「どうする?」


 はぐれた場合は焦らずにその場で待機するか、近場の駐屯所まで行くのが一般的である。


「まだ不安定だから使いたくないんだが、……はぁ仕方ない」


 指定を広範囲にして【探知(サーチ)】を発動する。

見慣れた魔力を無数の動き回る魔力の点から探り出す。離れてから少ししか経っていないため近くにいる筈だ。


「………見つけた。行くぞルリこっちだ」


「ん。」


 ルリとはぐれて再び振り出しに戻るのも行けないためタイヤーキの入った紙袋とは反対の手でしっかりと握り歩いて行く。








「ネアこんな所にいたのか」


 【探知(サーチ)】を使い、ネアの魔力を調べた結果、人が行き交う大通りの脇道にいた。薄暗い建物同士に囲まれた細道。ネアは無言でネスクとルリを見る。影の中でネアの赤い瞳が美しく輝く。


「まだ怒ってるのか?あの時は悪かった。そろそろ機嫌を直してくれないか?」


「……」


 ネアに謝罪した。だが、そっぽを向いたまま無視される。額にはその時の傷跡は無い。

 元々傷付ける物ではないため傷跡は残らない。だけど、(一応)味方に攻撃された事が機嫌を悪くし、彼女の成り立ち状で警戒心を強めているのであろう。


「詫びの印に……これ」


 袋の中からタイヤーキを取り出す。タイヤーキをそっぽのままちらりと横目で見た。

 パシッと叩かれてタイヤーキが地面に落ちた。


「そんな物で懐柔しようなんて思いがらないで!」


 拒絶の声と共に魔力が荒ぶる。

 地面に落ちたタイヤーキは落ちた際の衝撃で中のあんが飛び出た。

 憎い者へ向けるような鋭い目が心を凍り付かせた。

 魔物が発する殺気とは比べ物にもならないが、何より拒絶された事で時が止まったように身体が固まってしまった。


「少し一緒にいたくらいで仲良くなれたとでも思ったわけ!?あんたは『人』、私はあんたら人間が蔑む『亜人』!所詮は分かりあえるわけないじゃない!!」


 ネアの否定の言葉が心に突き刺さる。

 数ヶ月いただけで、到底縮まる距離ではないのだろう。


「……何かあった?」


「あんたには関係ない」


 ルリがネアへ問い掛ける。ネアは背後を向いたままその言葉を残し羽を広げて空へと飛び立っていった。


「……ネア……」


「……追い掛ける?」


 ルリがネアの事を追いかけないのか、と問うが首を横に振る。


「……いや、やめておこう。お互いそっちの方がいい。のかもしれん………このまま……ずっと……」


 もしかしたらこのまま別れて干渉しない方がいいのかもしれない。

 表情の変化が見られない澄んだルリの瞳がジッとネスクを見つめる。小さな白い手が伸びる。その歳にしては小さい手はぎゅっと軽くネスクの頬を摘んだ。


「ふぁにふんあ!(何すんだ!)」


 摘まれた事で少々は痛みが伝わるが『激痛』と呼ばれるような物はない。少々くすぐったいぐらいである。

 摘むとすぐに離し正面で向き合う。


「そんなはず、無い。ネアはネスといると、イキイキしているから……。」


「ルリからはそう見えてるのか………。

所詮はただのふざけ合いだろ。内心はどう思ってのか。」


「でも、楽しそうだった。ネアも、心の底から……。」


「けど……」


 ネアとはぶつかりあってばかりである。事あるごとに意見が食い違いぶつかる。その度に軽い小競り合いをよくする。今回のように拒絶する言葉は初めてである。


「ネス……今逃げて、後(・)悔(・)し(・)な(・)い(・)?」


 建物同士の間を抜けるように風が風が吹く。

金色の絹のようなルリの髪がなびく。建物の影から日差しへと射し変わる。

 数日前のソフィアとの言葉と重なる。狐につままれたような錯覚。


「ネス………追いかけるべき………手伝うから」


 再び小さなルリの両手が開いたネスクの手の中へと重ねられる。少しひんやりとしているが柔らかいその感触がある。昨日の事といい最近はルリに支えられる事が多い気がする。


 年下の守るべき対象ばかりに支えられるのはカッコ悪い。


「……カッコ悪(ワリ)ィな。俺。……分かった。後悔しない為にルリ。力を貸してくれないか?」


「ん、受けた恩は返す!」


 ルリの『風』の力を借りつつ、大きく地面を踏み締める。そしてそのまま足のバネを使い空へ舞い上がる。

 既にネアがどこにいるかは理解している。


 目的は、この国に一つだけある時計塔である。

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