ゴブリン殲滅戦 その4
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(仕方が………ない!)
迫るホブの凶刃を前に―――決意する。
魔力が膨張する。それに伴い、
【聖雷】の雷が更に増す。
空いた左手で鉄球を構える。少し、体に負荷が掛かるが、
―――あれこれ考える時間がない。
槍の軌道を予測する。
(心臓は鉄球があるから狙えない。頭も守る事が可能のため、なし………残る箇所で唯一攻撃の反応が鈍い場所…………それは………)
槍の軌道を予測するのはかなり至難を極めるり
槍自体が突きを繰り出す毎にしなるからだ。
(足………)
左手の鉄球をホブが槍を突きを繰り出すタイミングで手を離す。重力に従って鉄球が落ちる。
予想通りの軌道、槍の尖った先が太もも辺りへ。
足を負傷させ、そのままオークの馬鹿力ですり潰すつもりなのだろう。
「【雷伝糸】!!」
五本に分散していた雷が一本の細い糸へと流れ込む。
鉄球に槍先が触れた瞬間、
槍が雷の威力によって、粉々に砕けた。あまりの威力で、槍のみならず空間へと走る電流が使い手であるホブを焼く。
『グギ!グギィ―――!!!!!』
炎に焼かれるホブゴブリンの苦痛の叫びが上がる。
「うらぁ!!」
苦しむホブゴブリンの様子には目もくれずに、左手に垂れ下げた鉄球を片手で抑えるオークへと振るい投げる。
『ウゴ!!!』
鈍い音の後、オークが横に吹っ飛ぶ。
横腹に鉄球の痛々しい打撲痕を残して数百メートルも地面に引きずられふっ飛んだ後、停止した。
既にオークは息をしておらず、血を吐いた後絶命した。肺に骨でも刺さったのだろう。
「はあ、はあ……………次ハ……誰だ!」
視界の端が妙に赤い。両手の包帯が雷に当てられて解ける。下からは鱗の肌が浮き彫りになる。
通常(ドルイドの件の後から)の数十倍に近い魔力がネスクから溢れる。それは、代償を与えられる以前のネスクの魔力に近い量である。
その魔力に当てられて、鱗が腕のみならず、足、首筋、更には額にまで浮かぶ。
『グギギ!』
両サイドからホブ、背後からオークが同時に襲い掛かる。左の指に繋がれた魔力糸を引っ張る。
左手のホブの後頭部に直撃した後、手元へと引き戻って来た。ぎゅっ、と右手の手に力を込める。
大きな鉄球が沢山の小さな鉄球へと変わる。
オークがそれを振る。大きなオーク用の棍棒―――丸太といっても過言ではないくらい大きな棍棒を上から殴り付けた。
右サイドのゴブリンの棍棒を避けて、そのままその背中を足蹴に上空へとジャンプ。
ホブはそのまま、オークの棍棒を受けて圧死した。
視界がぐるりと逆さまになる。
頭が地面に向いているため上下逆さまになるが、真下にオークがいる事は視認出来る。
右手に作り上げた大量の鉄球を力一杯に投げる。
雷が付与された散弾の雨がオークに降り注いだ。
風穴が空いたオークが地面に転がり伏す。
真下に血溜まりが広がる。
「うっ。」
腹部に痛みが走る。血がシミとなって、服を染める。
槍が腹部を貫いていた。
体はうまく着地出来ずに転がり滑る。
上空にいる間に確認した数は、残り―――オークが八。
ホブが七。そして、シャーマンが一匹。更に向こうがら砂煙が上がっていた。
それは、ゴブリンの群れによる物だという事はすぐに理解出来る。
「う……ぐ……あああああ!!」
獣の雄叫びのように腹の底から声を出して刺さった槍を引き抜く。ドバドバと腹部から血が流れ出る。
その槍をホブ目掛けて投げ返す。
先ほど自分同様にホブゴブリンの腹部へと突き刺さった。だが、先ほどの自分と違う部分がある。
腹部の傷口、滑空による擦り傷から白い炎が溢れ全身を包み込んでくる。みるみる内にぽっかり空いた穴が塞がり、擦り傷も完全に塞がった。
『ウ、ギッ!?ウギィィィィ!!』
槍が刺さったホブから白い炎が上がる。
苦しみ藻掻くホブを包み込む白い炎。―――それは、『聖』属性を濃く宿した炎。元が精霊とはいえ、ゴブリンは魔素を吸い過ぎた影響で魔物よりになっている。
ゴブリンやオークにとっては有害その物である。
しばらく苦しんだ後、炎に包まれて消えて無くなった。その炎を見たホブゴブリンとオークに動揺の色が見える。
一歩、また一歩と後退りをする。
「逃がス………カ!」
更に雷が増す。白く輝く雷。そのあまりの眩しさにゴブリン達の目が潰れた。
目が潰れたゴブリン達は当てずっぽうに棍棒や槍を振るう。オークは暴れ回り、生き残っているゴブリンを薙ぎ倒す。
『グギアッ!』
シャーマンゴブリンが炎を飛ばす。その名の通り、魔物の中では珍しく、魔法を使う。
シャーマンのみが唯一距離が合ったため雷による目眩ましを逃れたのだ。
初級魔法『炎』がネスクに向かう。
雷の線が空中に走った。
シャーマンの魔法『炎』が二分される。
『ッ!?』
シャーマンが雷に焼かれる。
『ッ!!!!?!?!?』
シャーマンが倒れる。幸運な事に距離が離れていた事で威力は落ちた。だが、その雷は喉を焼いた。
声を出そうとするが声が出ず、魔法も発動しない。
『魔法………媒介ハ声カ。人トサシテカワラナイ』
焼かれた痛みにのたまうシャーマンの目にはそれが写る。それは、白い鱗に雷を纏った獣であった。




