ゴブリン殲滅戦 その3 ネスクサイド
更新します
遠くで爆発音がした後、地面が揺れた。
「こんの!!」
大量のゴブリンが一気に弾け飛んだ。
「ネス………無事?」
「ああ、けど……色んな物が付いて気持ち悪い」
上昇していたルリが降りてきた。投げる石がルリを避けて行く。以前、風除けに使った【風の領域】を使っているのだろう。
「………邪魔」
ルリが弦を引いてピロン!と音を鳴らす。
石を投げる動作をしているゴブリンが全て切り刻まれ肉塊に変わる。
「最初からその魔法使えば、上に行く必要なかったんじゃないか?」
「まだ……無理。……慣れないから」
空中に浮きながらのさらなる魔法行使は意外に難しい。先に発動している方を疎かにしていると、落ちる。
だからといって、そちらに集中しているともう一つの魔法が発動しない。
「ネスもその魔法……ずっと……発動していれば、
……ならなかったのに。」
「数が多過ぎる。流石に無理だから。」
ネスクの全身は、今ゴブリンの色んな物が付着している。流石に【聖雷】を纏っていても、数が多ければあまり意味がない。
『グギギ!』
「……しつこい!」
右手をぎゅっと握り込む。ゴブリンの頭が弾け飛んだ。
「ネス……それ、何?」
「ちょっとした玩具だ。意外に使えるなこれ………」
ネスクの右手には、先ほど持っていなかった鉄球が掴まれていた。
「流石に広範囲の魔法はまだ使えない、か。
生き残ってる奴がいるかもしれん。」
ゴブリンの数が多くて何ともいえないが、可能性が残っているかぎりは、探す方が良い。
ゴブリンは、凌辱した後も殺さない事がある。
―――子どもを作るためだ。
「ルリ、上から探せないか?できれば、救助も任せたい」
「……やってみる。」
再びルリが上昇してふわふわ飛んで行った。
【長距離・探知】も、ゴブリンの数が多過ぎて見つけられない。脳内マップが全て赤く染まってしまっているのだ。
こうなってしまっては、人間だけを探し出すのは自分の目に限られる。
「ソフィと連絡取れればな……ふっ!」
ソフィアの有り難みを実感しながら、鉄球を再び投げる。数体のゴブリンの体を貫通して飛んで行く。
ぎゅっと握った右手を開く。
鉄球が5つに分裂した。
「そ〜れ!こっちもだ!」
左手を開く。
2つ目の鉄球が5つに分裂して、合計十個の鉄球となる。
ネスクが使うこの鉄球は、魔結晶とメタートルの鉄を一度、粉状に砕いて高温の熱に加えて作り上げた球である。
魔結晶の性質を引き継いだこの球は、魔力に反応する。特定の魔力を加える事で液状になっていなくても、分裂する事が出来る。
指に魔力の糸で繋がれた鉄球をそれぞれ振り回す。
一個を操るよりかは扱いやすくなったが、威力が落ちる。そこは数で何とかする。
鉄球の曲線上に入ったゴブリンは、頭を横殴りで吹き飛ばされた後、色んなところに無数の穴が空いて絶命する。
ハンマー投げのようにネスクを中心に鉄球が回転する。徐々に動くため大量のゴブリンがその餌食になる。
早い話―――死のハリケーンである。
「………目が回る。なら、【反重力】」
鉄球が空中でピタッと止まった。糸を通じてネスクの魔法が発動する。
『グギギ!』
シャーマンが手下であるただのゴブリンに指示を出した。さっきのゴブリンの津波が再び押し寄せる。
(もう少し………もう少し………)
十個の球で空間認識して、タイミングを測る。
『グギ!』
嫌なニヤつき方をしたゴブリンが目の前で棍棒を振る。他のゴブリンより速度の速いそのゴブリンは、ホブゴブリンである。
「(いまだ!!)【雷伝糸】!!!」
『グギ?グギギギギギギギギギギ!!!』
両手を交差した瞬間、
範囲内いた全てのゴブリンが電気によって感電した。
それもその筈だ。ネスクの糸が全てのゴブリンにに触れたのだから。
【雷伝糸】
【聖雷】の応用の魔法である。高電圧の電流を魔力糸に伝わせる魔法。
魔力糸が使えなければ発動出来ない。更に相手が触れなければ攻撃にすらならない。
「………ふぅ、かなりキツい。」
焼け焦げた肉の臭いが立ち込める。
黒焦げになったゴブリンがネスクの周りに転がる。
「さて次はどいつが相手だ?」
両手をぎゅっと握ると、鉄球が戻って来た。
分裂した球が再び元に戻って両手合わせて二つになる。
さっきのゴブリンの波は使えないだろう。なんせ、先ほどの魔法でほとんど壊滅して集まろうにも、集まれない。
『グギギギギ!』
オークが十体、ホブが十匹。ネスクを囲むように出て来た。
「今度は量より"質"と来るか。まあ常套手段だわな!」
オークが一斉にネスク目掛けて、巨大な拳を振った。
上へ飛んで避けた。
「っ!」
顔スレスレで木製の槍が飛んできた。鉄球でガードしたが、危うく串刺しになる所であった。
空中で回転して包囲網外へと離脱した。
そこに襲いくるホブゴブリン。先ほどの槍に加え、棍棒も装備している。
棍棒を振り回して、距離を離せば槍で突いてくる。
『ウゴオオオオ!』
オークが背後から拳を振り上げる。
「なぬっ?!」
避けきれず拳を右手の鉄球でガードする。重い一撃が上から落ちてきた。骨がギシギシと音を立てる。
『ウギッ!!』
そこに槍を持つホブゴブリンが迫る。
あの槍で突くつもりなのだろう。
―――敵ながら、見事な連携である。




