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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
3章 勇者召喚編
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ゴブリン殲滅戦 その3 ポーアサイド

更新します


「ポーアそっちはどうじゃ?」


 ゴブリンの大群から離脱した場所。ゴブリンの大群が一望出来る所に着地した。三人を抱えて跳躍するのは流石のミレドでも一苦労。いつもの身軽さと異なり、バランスが取りづらかった。

 そのためいつもであれば、数分の所を十分ほど費やした。


「先に救助された方は既にクーシェ様達の元へと送りました!」


 魔法陣から魔力残滓がこぼれている。


「うむ、順調じゃな。……ポーアはこの娘(こ)を頼む」


 恐怖で顔が固まった少女を下ろす。

ポーアがその少女をぎゅっと抱き締める。


「大丈夫……大丈夫です。ミレド様に任せて下さい」


 絶望を目の当たりにした少女の体がポーアの言葉に反応した。その言葉は、少女の母親がずっと、自分を安心させようと呟いた言葉だからだ。


(さて…………)


 跳躍中に徐々に魔力を垂れ流して延命処置をしていた事も幸いし、多少は重傷が治っている。


 ミレドが魔力を母親へと流す。一気に流したことで母親の体が発光する。


 痛々しい擦り傷や青くなった打撲痕が治っていく。


「ふぅ………そこの娘、もう安心せい。母は無事じゃ、じきに目を覚ますじゃろう」


 ミレドが魔力を止めると発光が止まった。そして、立ち上がったミレドの側には息が安らかに和らいだ元の母親の姿があった。


「………うっ………ううう。」


 立ち上がって少女の側まで寄って覗き込む。そして、にこっと、優しげな顔でミレドの笑った。

 娘の目から大粒の涙が溢れ出す。


「さて、ネスらが気になるのう。」


「あの場には植物が生えておりませんので、私の『目』も通じません。」


「あの群れじゃ。仕方あるまい。」


 遠くで砂煙が上がる。その煙は、ゴブリンの行進が生み出した砂埃である。


「しかし、………あの量はお(・)か(・)し(・)い(・)のじゃ。」


 ただの発生にしては数が多い。

 既にミレドだけでも100を超えたゴブリンを葬った。それだけの数を葬ったというのに、一向に減った様子がみられない。


「―――来ています。こちらへ。」


 粒のように見えていたゴブリンが近づいてくる。


「すまぬ。気づかれたようじゃ。」


「いえ、大丈夫です。仕方ありません。ゴブリンは鼻が利きますから。」


 跳躍して戻って来たとはいえ、匂(・)い(・)ま(・)で(・)は(・)消(・)せ(・)な(・)い(・)。ゴブリンはある種の匂い、特に女性の臭いに敏感だ。数百m離れた所からでも嗅ぎ分ける。


 ミレドがもう一人に触れて同様に、治療を早々に終わらせる。


「………【鋭爪(クク)】!ここは妾が相手取る!

そのうちにポーアはそやつらと共に飛べ。おぬしなら、容易じゃろう?」


 【鋭爪(クク)】を発動させて、走り出そうとする。

―――が、ポーアに止める。


「いいえ、ここはわたくしが…。

神器〈盾(スクートゥム)〉起動します!」


 ポーアの胸元に隠した神器〈盾(スクートゥム)〉が緑光を放ち起動する。

蔓羽衣が発光し、黄金色へと変化した。


 変化した蔓羽衣が体全体を包み込んだ後、フォームチェンジを全体に施す。以前発動した通り、

―――森に住む魔女を彷彿させるロングスカートの上にローブを羽織った衣装。革靴はそのまま。

 若葉の瞳が深緑(ふかみどり)へと変化する。それに伴い、髪の色も同色へと変化。蔓羽衣の黄金に輝いていた光が収まると、小さな蕾が可愛らしい白い花を咲かせる。


「『螺旋状の盾《スクートゥム・スピランセス》』」


 フォームチェンジを終えたポーアが神器を掲げる。細長い形状へと変化する。錫杖化した神器〈盾(スクートゥム)〉に納まった深碧(しんぺき)の宝玉が淡く光る。


「ポーアおぬし……」


「皆様に負担を全てお掛けさせたくありません。ミレド様も今日だけでか(・)な(・)り(・)無理をなされていらっしゃいますよね?」


「………気付いておったか。

じゃが、人前で神器を使うという事は……じゃな」


「分かっております。ですが、戦闘面では頼りないわたくしでも、こういう盤面においては、わ(・)た(・)く(・)し(・)の(・)力(・)が役に立ちます!」


 杖を一回軽く打ち付ける。打ち付けた瞬間、光が巨大な魔法陣を生成する。先に描いていた【ЩЖЙ(エキザカム)】が巨大な魔法陣に掻き消される。


「ここをこうして………こう……」


「なぜ再び【ЩЖЙ(エキザカム)】を組み込んだのじゃ?」


 基本ドルイドの秘術は、難解な魔法である。だが、一度描いたことのある魔法が組み込まれている事にミレドは気づいた。


「少し試したい事がありましたのでこの際です!」


 ポーアが再度、地面を打つ。

 前方、迫り来るゴブリンとの丁度、中間辺りにいくつもの光が地面に輝く。ポーアが描いた魔法陣と同一の巨大な魔法陣が現れる。


「魔法転送【ЩЖЙ(エキザカム)】【茨の盾《ソーン・バインド・ウォール》】

新(・)秘(・)術(・)【⊄ωχτμ(フィサリス・アル・ケケンジス】」


 ポーアが最後にコンッ。と杖を打った。

 






 茨の蔓が魔法陣から溢れ出す。一つ一つの棘を付けた蔓が絡まり壁(・)のように、ゴブリン達が魔法陣に差し掛かる前に出来上がった。


『グギ!?』


 前方のゴブリン達は突如現れた茨の壁に驚き、ブレーキを駆けるが後方の数を考えるとそれは、無謀としかいえない。ブレーキを掛けた前方のゴブリンは、後方のゴブリンに踏み潰される。そして、勢いそのままの後方だったゴブリンは茨の壁に激突した。 

 幸い植(・)物(・)ということも相まって味方と壁に押しつぶされるという事はないが、全身に無数の棘が突き刺さる。


 茨に囚われたゴブリンはそのまま徐々に弱って息絶える。仮に抜けたとしても、突(・)き(・)刺(・)さ(・)っ(・)た(・)棘(・)の(・)毒(・)がすぐに体全体に周り動かなくなる。


 毒で息絶えたゴブリンの死骸は別の植物養分となって吸われていく。


 味方を犠牲にしながらゴブリン達が壁を一点集中でこじ開けようとする。


 壁の後ろに控えた植物が成長していく。

 しっかりと地に根を生やし、茎を伸ばす。

自然の植物とは成長速度が異常なくらい速い。それはポーアが与えた魔力とゴブリンの中にある魔力で成長しているのだ。


『グギギギギギギ!』


 抜けたゴブリン達がその植物へと迫る。


 五弁花の白い花が咲いた後、赤い袋状の実―――袋果(たいか)が膨れる。特徴的な大きな葉のギザギザした葉がその手を伸ばす。


 ゴブリンがその植物に突入した時、反応を起こす。


   爆発と共に、熱気と爆発音が鳴り響いた。

 

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