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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
3章 勇者召喚編
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ゴブリン殲滅戦 その2

更新します


「大丈夫……大丈夫だから。」


 そう呟く母親に抱きしめられる子どもがいる。子どもを安心させる為に優しく声を掛けるが、その母親も恐怖で体が震えている。


『グギギギ?』


『『『『『グギギギギギギギ!!』』』』』


  緑の化け物の声が響く。

 先ほど一緒にいた若い女性が引き摺られた後、緑の化け物で埋め尽くされ姿が消えた。

 少女の耳には母親が手で塞ぎ何も聞こえない。

 だが目の前に現れた光景で戦慄した。

 化け物の足元から事切れたかのように動かない片手だけが化け物達の隙間から見えた。


「……………ぃ………。」



 恐怖を覚え、声にならない声が口の中から勝手に出て来た。異臭が鼻を突く。何人いるか分からない化け物が一斉にこちらを見た。

 歯並びの悪い口からダラダラとヨダレを垂らす。舌なめずりをしたその化け物達が徐々に迫って来てさらなる恐怖を感じる。


『ウゴォ!!』


 化け物達の一角が見る間に吹き飛んだ。

  血が飛び散り頭の上から落ちてくる。


「ひぃ……」


 母親が抱き締める力が更に強まった。

 地ならしと共に巨大な壁が現れる。

 見上げると、巨大な体躯。長い歯牙が二本口からはみ出る。


 土手っ腹を持ち上げ揺らすその化け物が足元に転がる母娘(おやこ)を見下げる。


 ニヤリと笑ったその怪物は、安々と少女を母親から引き離してつまみ上げる。


「いやあ!やめて!その子だけは!その子だけはやめて!!」


 悲痛な母の声が下から聞こえる。


そして、次の瞬間、


「………あ………」


 怪物の足元へと食い下がって来た母の体が宙を舞った。少女はその瞬間の、数秒の出来事を何時間も見ているかのように長く感じ取った。

 地面へと叩き付けられた母親が口から血を流して動かなくなった。

 虫の息にも等しい呼吸が聞こえる。


 少女はショックのあまり声を出して助けを求めることも、涙を出す事も出来ないくらい

―――真っ暗な恐怖へと意識が支配されていく。


 完全に恐怖で動かなくなった少女を片手に化け物が少女を持ち上げた後、離した。

 その下には大きく開かれた口(・)が開かれていた。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 ネスクが大きくジャンプした。指に繋がれた魔力の糸を引っ張る。


「ミレド!!」「任せるのじゃ!」


 ミレドが少女をダイビングキャッチして抱え込んだ。

  オークが少女がいなくなった空間を一噛みした。

纏った雷を『弓矢』に变化させて引く。

  ソフィアと連絡不能のため照準を自分でしなければいけないが、充分間に合う。


「【鳴雷(ナルイカズチ)・雷鳴矢(ケラヴノス)】」


 雷鳴の音と共に最(・)速(・)の雷の矢がネスクから放たれた。

 オークの額を捉えた矢はオークの体ごと地面へと威力の余韻を流す。撃ち抜いた後の事を考え放たれた矢はその軌道通り、大量のゴブリンだ(・)け(・)を下敷きにした。


「ルリ?」


「………りょ。」


 母親へと群がったゴブリンが一気に風の刃で斬り刻まれた。


「よっと……あよっと!」


 ミレドが一気に二(・)人(・)を回収する。一人は、重傷。もう一人も生きてはいるが、ボロボロの服に加え、あまりにも見るに堪えない状態である。


「ミレドはポーアの所まで下がれ!」


「前衛を任せて良いのか?」


「お前がいなきゃ治せねぇだろ!急げ!!」


 着地した際に棍棒を振り回して襲い来るゴブリンを手刀で首を狩る。雷を操れば、ゴブリンの首を一つや二つは余裕で切れる。


「ルリ、ネス!すまぬが、暫し任せた!くれぐれも無茶はするでないぞ!!」


「あいよ!」

「………問題無い」


 空(・)中(・)のルリとネスクに任せてミレドが跳躍して離脱をする。


「どうだ?ルリ、行けそうか?」

「……余裕」

「そりゃ良かった……。」


 ぽふっ。と余裕を見せて、胸を張るルリ。様子からしても無理を全然感じさせない。


 プカプカ浮かぶルリにゴブリンが小石を投げて攻撃を加えようと躍起になっているが、まるで意味をなさない。

 逆に反撃されて細かく切り刻まれている。

 ルリに渡した弓は、『ミネバリカンバー』と呼ばれる木から作った弓である。

 この木の特性は、『吸収と反発』。

 周囲の魔素を蓄えて魔力の貯蓄をする他に、自身へと加えられた衝撃を跳ね返す。


 例えば、風の魔法で攻撃すれば、その攻撃を吸収した後に風魔法を衝撃波にして相手に返す。


 ルリはこの性質を利用して、空中で自在に動いているのだ。元々魔力量が少ないルリと相性は良い。


「あらら、相手も本気を出して来たな。」


 ネスクの視線の先に他とは異なるゴブリンがいる。そのゴブリンは杖を持つ。

 どうやら呪魔法子鬼(シャーマンゴブリン)それからホブゴブリンもいる。ゴブリンの上位種であり、知性をかなり備えたホブゴブリンは一匹だけで、猿並の知性がある。―――それが、十匹。


『グワギッ!!!』


 呪魔法子鬼《シャーマンゴブリン》が雄叫びのような声を上げる。全方位からゴブリンより大きな姿


―――オークだ。


 オークが足元のゴブリンなどお構い無しにやって来る。ホブに、オーク、更にシャーマン。


 二人を相手取るには過剰戦力過ぎるというか……。

 豪華すぎる量が集まって来た。いうなれば、天丼特盛りの上に更に唐揚げをくっつけたみたいな。


「こりゃ大変だ――」


「………ネス楽しそ。」


 棒読みをするネスクにルリが指摘する。

  ネスクが懐の魔法の袋(アイテム・ポーチ)から何か取り出す。


『グギ!』


 やれ、といわんばかりシャーマン(ゴブリン)が鳴き声を出すと一斉に襲い掛かる。


 空中のルリには相変わらずの石つぶてが飛来する。さすがに全方位から一斉に投げられると避け切れないため更に上空へと昇る。

 ネスクも上空へ行こうと思えば行けなくもないが、行かない。そこに群がるゴブリンの大群が押し寄せる。津波にも似たゴブリンの群れが一斉に押しかける。


 ネスクの姿が一瞬でゴブリンの津波の中に埋もれて見えなくなってしまった。

 

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